22 レンゲソウ:心が和らぐ
この話の後半はほぼ説明回です。
ガーデンバースをご存知の方は読み飛ばされても問題はございません。
目が覚めてから一週間。
基本的に食べて、栄養剤を飲んで、陽に当たって、寝るの繰り返しだ。
朝、日が昇ると温室に出て、たくさんの朝食を取ってから栄養剤を摂り、ゆったりとしたクラシックを聴きながら微睡む。
目が覚めるとお茶や昼食が用意されていて、それを全て平らげ、栄養剤を飲み、また微睡む。
陽が落ちて、暗くなると『温室』に戻り夕食を摂る。
お風呂に入って、栄養剤を飲んだらベッドで就寝。
普通に考えたら眠れないと思うのだけど、食事を終えると耐えられない程の睡魔が襲ってくるのだ。
瀧本は「身体が休息を求めているのです。抗わずにお休み下さい」と寝かしつけに掛かる。
最近は怖い夢を見る事もなく、幸せな夢を見ている様だ。
内容は思い出せないけれど、目が覚めた時に満ち足りた気分になる。
そんな生活を続けている為か、大分回復してきた。
まだ歩く事は出来ないが、長時間起きていられる様になった。
あやのと小毬も何度かお見舞いにきてくれた。
何度目かのお見舞いで、これだけ回復したのであれば、また『花生み女子会』に参加しないか?と打診された。
次回は研究者を呼んで、『花生み』の生態について説明してもらおう、私も詳しく知っておいた方が良いと言われ、参加する事にした。
優しい二人に癒される。
胸の奥がじんわりと温かくなって嬉しさが溢れた。
そうして迎えた『花生み』女子会。
私は車椅子での参加だ。
温室に出ると、いつものお茶会セットに、ホワイトボードと、白衣を着た男性が立っていた。
そこで私は初めて『花生み』と『花食み』の詳しい話を聞く事ができた。
『花生み』は私達のことだとわかるが、『花食み』は初耳だった。
白衣の男性は斉藤と名乗り、ホワイトボードに書き付けながら、アレコレ説明してくれた。
『花生み』とはその名の通り、花を生み出す者の事だ。
髪の毛先に咲く者もいれば、涙が『花』に変じる者、肌から咲く者など、『花』の生み方はそれぞれ個々人で違う。
あやのさんは毛先で、私と小毬さんは肌からだし、咲く場所もこめかみと首筋で、少し違う。
『花』を生み出すタイミングは完全にコントロールはできず、生み出す際には苦痛を感じる人もいる。
斉藤にいくつか質問され、素直に答えた所、私は苦痛が多い方なのだそう。
それに何より強いストレスがトリガーだということがかなり珍しいケースなのだそう。
『花生み』によっては、この体質のせいで体が弱い者もいるのだとか。
私は丈夫さには自信あったんだけど、最近はその自信も萎み気味だ。
そして、『花生み』にとっての一番の栄養は『花食み』の体液であるのだそう。
体液って血とか?えぇー……やだなぁ……。
『花生み』と『花食み』の関係性で一つ重要なのが、ブートニエールと呼ばれる関係だ。
恋人、夫婦関係に相当するのだけれど、これは同性でも起こりうる関係だという。
話を戻すが、ブートニエールである『花食み』の体液であれば、『花生み』にとって更なる活力をもたらすとか、愛されているという自覚があるほど、生み出す際の苦痛を軽減する効果を持つとか、言われたけどちっとも理解出来ない。
そして今回初めてその存在を知った『花食み』。
前の説明でも出てきた様に、『花生み』と対を為す存在の様だ。
その名の通り、『花』を食う者。
『花生み』の生み出す『花』を食し、自身の糧とする。
『花食み』は何らかの能力に秀でている者が多いが、その反面、性格面・精神面に不安定なものを抱えている人が多いのだとか。
普通の人間の食事も可能ではあるが、『花生み』が生み出した『花』は『花食み』にとって栄養価が高く、『花』を食するという行為は『花食み』にとって非常に有益な効果をもたらすらしい。
『花生み』が生み出す『花』であればどんな『花』でも食せるが、相性のいい相手、特にブートニエールの関係になった『花生み』の生み出す『花』や体液は、『花食み』に最も美味しいと感じさせ、得られる効果も高まる。
この為、ブートニエールの関係に至った『花生み』への愛情は特別深く、依存度・独占欲が強い傾向にある。
そこまで聞いてやっと納得ができた。
東条は『花食み』だったのか。
だから私はこんな扱いを受けているのか。
まともに説明されず、連れてこられて閉じ込められていた涼菜が『花食み』の存在を知り、やっと何をされていたか理解しました。
また、学校が終わるとすぐにお家に帰ってお手伝いしていた涼菜は、男女間の知識は小学生程度のものしかありません。
恋愛物の漫画なども読んだりしますが、り●んとかち●おとかの恋してきゅん程度です。




