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16 黄梅:期待 後編

「水上さんは妹さんがいるんですか?」

「ああ、双子なんだ。それより“水上さん”だなんて他人行儀じゃないか。麗って呼んでくれよ。それに敬語も要らない」


 私の唇に人差し指を当ててパチン、とウインクする水上。

 すごい、ほんとにこんな事する人、いるんだ。

 いや、似合う、似合うけどね?

 ちょっと、いや、かなり恥ずかしいよね?これ。


「え、えっと……じゃあ……麗さん?」

「レ・イ」

「れ、麗……」

「そう。よく出来ました」


 華が咲く様な艶やかな笑顔で頭を撫でられる。

 え?私、今何されてるの?

 女子校ってこういうの普通なの?!

 混乱してきた。


「あはは、涼菜は可愛いな」

「〜〜っ!」


 これは揶揄われているのだろうか?

 いまだに頭を撫で続ける麗の手を軽く振り払う。


「ごめんごめん。ついね、可愛い子を見ると甘やかしたくなるんだよ」


 くすくすと笑う姿まで様になっていて、なんだか変な気分だ。

 今日初めて会った人なのに、昔から知っているみたいに接してくる麗にどうしていいかわからなくなる。


「それで、妹の事だったよね」


 麗は爽やかに笑いながら脚を組み、話し出した。


 彼女の妹は 花蓮(かれん)という名前で、身体が弱く、家の外に出られないのだとか。

 なのに物凄くよく食べて、いつでもお腹が空いているらしい。


「私と違って女の子らしくて、儚げで、とても可愛いんだよ」


 姉妹仲はすごく良いんだ、と、とろける様な笑顔で話す麗は綺麗だった。

 見ているこちらが赤くなるくらいに幸せそうで、花蓮の事が本当に大好きなんだな、と自然に思った。


「いつかうちに遊びにきてよ!」

「え、ええ。いつか行けたら、遊びに行きたいな」


 行けるかはわからないけど。

 チラリと後藤を見ると小さく横に首を振っていた。

 やっぱりダメだよね。

 知ってた。


 チャイムが鳴って昼休みが終わり、午後の授業を受ける。

 勉強の内容はそんなに難しく無く、元々通っていた高校と似た様なものだった。


 想定外だったのは、お腹いっぱい食べた後で、強烈な睡魔が襲ってきて、内容が全く頭に入らなかったことだ。

 船を漕ぎながら取ったノートは見事にヨレヨレだった。

 こんな事は人生で初めての体験で、明日はお弁当の量をもう少し減らしてもらおうと心に誓った。

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