16 黄梅:期待 前編
とうとう転校初日だ。
通うのは東条グループ系列の私立女子校だそうだ。
体育の授業は医療班がドクターストップを掛けてくれるからやらなくて良いらしい。
『花』がバレるリスクを軽減してくれるんだとか。
中途半端な時期の転校なので、新しい友達が出来るか心配だけど、期待もある。
新しい制服に袖を通し、鏡の前に立つ。
そこには見慣れない私がいた。
バイカラーのブレザーに膝丈のプリーツスカート。
胸には大きめの白のリボン。
黒のハイソックスに、真新しいローファー。
革のスクールバッグ。
全体的に素材のお値段が高そうで、いくら掛かったのか考えたくもない。
「ご用意は整いましたか?」
「はい」
護衛の後藤に返事をすると、『温室』を出る。
大きな温室を通り抜け、案内されるままにお屋敷の中を歩くと、大きな玄関に出た。
初日に通ったのは裏口だったらしい。
広く美しい庭を臨むレンガ道。
正面には黒塗りの高そうな車が停まっている。
(あの車の前に付いてる金ピカの天使みたいな飾りってもしかして……)
高そう、ではなく本気でお高い車だったみたいだ。
「涼菜様、お乗り下さい」
「……やっぱり?」
見た瞬間嫌な予感がしたけれど、やはりこの車に乗って登校するらしい。
悪目立ちしそうで本当に嫌だ。
こんなんじゃ友達なんてできっこない。
とはいえ、今の私に拒否権は無い。
大人しく後部座席に入ると後藤さんがドアを閉めてくれる。
お嬢様扱いは落ち着かない。
お尻がむずむずしてしまう。
無言のまま十五分程の移動の後、車は大きな建物に着いた。
車から降りると一斉に視線が集まった。
校門に校長先生と思しき男性が立っていて、すぐに駆け寄って来た。
「此処からは私がご案内致します」
男性に案内され、後ろに 後藤を引き連れる私は明らかに“近寄るな危険”な存在だろう。
職員室を通り抜け、校長室に案内された。
案の定、案内してくれた男性が校長だった。
東条家から話は聞いていて、護衛を連れたまま学校生活を送って良いとの事だ。
(ボッチ確定だわ……)
なかなかに辛い学生生活になりそうだ。




