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15 ブバルディア:交流 前編

 転校を来週に控えたある日、手紙が届いた。

 家族からかと喜んだら以前教えられた他の『花生み』からだった。


 外の温室で「『花生み』女子会」を開くから参加しないか?という内容で、特に用意する物はないそうだ。


「参加は、どうされますか?」

「同じ『花生み』とお話、してみたいです。お返事、お願いして良いですか?」

「かしこまりました。お任せください」


 瀧本は私が東条晃に襲われてから、とても甘くなった。

 はじめはそっけなく、「最低限の事しかしません」って雰囲気だったのに、今は何をするにも過保護で、私の意向を確認してくる。


 今更だけど、『温室』に来てからの衣食住は全てこちらで用意された物だ。


 住は軟禁されてはいるものの、住みやすく整えられ、広々としている。

 家具も一目で高級とわかるくらい、オシャレで可愛い物ばかり。

 ベッドなど、広くてふかふかで、良い匂いもして最高である。

 空調管理も完璧にされていて、暑くも寒くもなく、快適で、人としてダメになりそう。


 食は言わずもがな。

 三食毎にいろんな種類がある大量のお料理と、午前・午後のお茶の時間。

 食べ過ぎな気もするけど、むしろ体重は減っている。

 頻繁に『花』を咲かせているから仕方ない事だと瀧本は言うし、もっと食べろ、と夜食まで持ってくる事まである。


 最後に衣。

 着替えの度に瀧本が用意してくれた服を着ているのだけれど、どれもこれも可愛いのだけれど高そうで、恐れ多くなる。

 クローゼットをこっそり覗いてみたら、今まで袖を通した事もない様なブランドの服がズラリと並んでいた。


 正直言って、時折目眩がするくらい、金銭感覚が違いすぎる。

 他の二人はこの生活をどう思っているのだろう?

 どうやって『花』を咲かせて、あの 恐怖()を乗り越えているのだろう?

 そもそも『花生み』って何なのだろう?

 東条晃は何者なのか?


 知りたいことが多すぎる。


 瀧本に促されるままに支度をして外の温室に向かう。

 『花』の特性上襟首の大きく開いたワンピースを着て、メモ用の手帳とペンを入れたミニトートを持って歩く。


 いつもは専用の車椅子で通る渡り廊下を歩くのは新鮮だ。

 陽の光が燦々と降り注ぎ、蔓薔薇を模した金属細工の影を作る。


 温かくて、心地よく、美しい。

 そんな通路を抜けると温室の硝子戸が開かれた。

 護衛の人が開けてくれたのだ。


 私は外に出るまでの扉には一切触れない。

 扉に触れると健康管理のスマートウォッチから電流が流れる仕組みになっているらしい。

 電流と言っても、ちょっと手が痺れる程度で、健康に被害はないらしい。

 代わりに管理室と呼ばれる施設でアラートが鳴る。

 そうするとすぐに捕まって、軟禁から監禁に変更されてしまうと瀧本に聞いた。


 明るい温室内には、「お茶会」の準備が整えられていた。

 優雅な白い丸テーブルに可愛い刺繍の入ったクロスが掛けられ、真ん中には美しい薔薇が生けられている。

 椅子が三つ並んでいて、既に二人はそこに掛けていた。


「いらっしゃい、新しい『花生み』さん」

「いらっしゃーい」


 美しい所作で私を迎えてくれる背の高い色白の女性。

 全体的にがっしりして色素が薄くハリウッド女優みたいな迫力のある美人だ。

 もう一人は小柄で、黒髪ツインテールに一房ずつピンクと黄色のメッシュが入っている。

 人懐っこい笑顔がとても親しみやすい。


「はじめまして、日野涼菜です。今日はお招き、ありがとうございます」


 挨拶するとすぐに席を勧められた。

 優しそうな人達で一安心だ。


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