表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
14/71

13 二輪目のマリーゴールド:絶望

 スラリと伸びた身長は百七十後半。

 もしかしたら百八十センチあるかも知れない。


 小さな顔に切長の目。

 なのに甘やかな作りをしていて、顔色はあまり良くない。


 さらりと揺れる髪は、烏の濡れ羽色。

 パリッとノリの効いたシャツに、爽やかなサマーセーターの合わせが品良く、育ちの良さを表している。


 東条晃。


 私が、『 温室(ここ)』に来ることになった原因。


 そんな彼が、今、苛立ちを隠そうともせずに目の前に立っている。


「ねぇ、なんとか言ってよ。新しい『花生み』さん」


 こてり、と幼児の様に首を傾げる。

 ただそれだけなのに、何故か身がすくむ。


 無表情から無邪気な表情に変わるのだけれど、それがより一層恐怖をあおる。

 手がブルブル震えて、逃げたいのに足が動かない。


「『強いストレス』で咲くんだっけ?ねぇ、どうやったら、君は、ストレス、感じるのかな?」


 ゆったりとした歩調で距離を詰めてくる。


「晃様、本日はタッピングだけだとお約束しましたよね?」

「勿論『水やり』はするさ。その前に一輪くらい貰っても良いだろう?笑えるくらいに回復したんだから」


 なんとか止めようとしてくれる瀧本に、一度も視線を向けず、ギラギラと凶悪な光を宿して近寄ってくる。


「オレだって乱暴したい訳じゃないんだ。ただ、君は『強いストレス』じゃないと『花』を咲かせてくれないんだろ?仕方ないじゃないか」


 ゆっくりと白く筋張った長い指が私の首に掛かる。


「このまま、締めていったら、咲かせてくれる?」


 優しく、蕩けるように甘く、美しい笑顔で、容赦なく首を絞め始めた。


「かヒュ……ッ?!」


 息が詰まって胸が苦しい。

 こめかみが破裂しそうな内圧を感じる。

 苦しい!苦しい!


 首に掛かる指をなんとか外そうと試みるけどちっとも外れない。

 苦しい。

 怖い。

 恐い。


 痛い。


温室(ここ)』に来てから何度も走った痛みが、首から背中に走る。

 痛みと、息ができない苦しさとで喉の奥が鳴る。


「ぅ……ぁかはっ……っぐ」

「そう、そうだよ。頑張って。早く『(ソレ)』を咲かせてよ」


 酸素を求めて、大きく開いた私の口を舐めつつ、首を絞める指は緩む事はない。

 痛くて、苦しくて、怖くて、悲しい。


 『花』は彼の望み通り大きく膨らみ花開く。

 私の苦痛と反比例する様に、開花の香りを振り撒いた。


「良い子だね。そのまま食べたら痛いんだよね」

「かはっげほっげほげほっ」


 首を絞めた指を解くと、咳き込んで苦しむ私の頭を撫でる。

 優しく涙を指先で拭い取ると、抱きしめて……


ーーー 一息に『花』をむしり取った。


「いやあぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ