12 キョウチクトウ:危険
今日は月曜日だ。
学校はどうするのだろうか?
制服などは持ってきていない。
名月に不要だと言われてしまった為だ。
もしかしたら学校に通わせてもらえないかもしれない。
でも、初日に「学校には護衛が付く」と聞いた。
起こしにきた瀧本に確認すると、一週間程は転校、転出、転入などの雑多な手続きがあり、学校には行けないらしい。
各種手続きが済み次第新しい学校に通えるようだ。
身だしなみを整えて、新しい制服の為の採寸を行うと、今日の予定は無いとのことだ。
昨日に引き続き大ボリュームの朝食を摂ると、早速採寸してもらう。
でもこのペースで食べ続けたら太ってしまうかもしれない。
「本日は休養日となっております。如何なさいますか?」
如何なさいますか、と聞かれても。
今までは、学校に行って勉強するか、バイトするか、家事をするくらいしかしてないから、手空きの時間に何をすればいいのかわからない。
学校の休み時間は図書室本を読んでいたけど、此処には本など当たり前だけど無い。
お願いしたらあのシリーズの本を全巻買ってくれたりしないものだろうか?
「何か、本はありませんか?昨日のサンルームで読書したいのですが」
ダメ元で瀧本に聞いてみると、他の『花生み』が読んだ本があるらしく、いくつか種類を用意してくれた。
全部、恋愛物で引き攣った笑いが出たけど、読みやすそうな本を借りた。
車椅子が用意されていて、いらないと言ったけど許してもらえなかった。
仕方なく座ると、満足そうな瀧本に押されて移動した。
一日中サンルームで本を読みながらのんびり過ごす。
ポカポカの陽だまりの中、瀧本と何が好きか、どんな事が楽しいか等ポツリ、ポツリと会話していく。
その内、他の『花生み』達とお茶する時間も取れると思う、など少しずつ此処のことも教えてもらえた。
私と同じ体質の人などはじめて会う。
ちょっとだけ、楽しみだ。
どんな人達なのだろう?
瀧本とは、なんとなくお互いに歩み寄れた気がする。
あくまで気がするだけだけど。
真顔で冗談を言われた時は、何を言ったのかと固まってしまったけど、恥ずかしそうに耳を赤くしているのを見て笑ってしまったりもした。
ーーーこんこん
ノックの音が響き、東条晃が現れた。
はじめて見た時と変わらず、無表情だが甘く整った美しい顔で、以前見た夢の事もあり、心臓の音が大きくなる。
うっかり挨拶もせずに見つめているとパチリと目が合った。
「今笑ってたよな?」
真顔で問われる。
「いえ、貴方を笑った訳では……っ!」
雇い主の一族に嫌われては困る。
慌てて弁明しようとすると東条は眉をきつく寄せ、瀧本を睨み付けた。
「浩二と瀧本が死んでしまうと何度も何度も言ったからオレは我慢したんだ。まだまだ全然足りないのに、『摘み』にも来なかったし、『水やり』だってした。今日もダメだと言われたから我慢した。なのに笑うくらい元気じゃないか」
暗く、静かな声が逆に怒りを露わにしている。
その声に血の気が引く音がした。
「もう、『花』を咲かせられるんだろう?」
綺麗に笑う「坊ちゃん」に私は身を固くした。
とうとう、坊ちゃん=晃が発覚しました。




