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マクマクさんと外出

いつも読んで下さりありがとうございます!

更新はだいたい20〜22時時前後になるかとおもいます。

「あれ? もう窯の火を落としちゃうの?」

 わたしが窯のところで布を床に広げて、灰とりバケツを窯の近くに用意すると、レジを終えたマクマクさんがキッチンに入ってきた。

「あっ、落とすというか小さくするというか。今日はお昼で終わりなんです。午後、少し出かけるので」

 石窯を開けると、ムワリと高熱の空気がわたしの頬にぶつかる。一瞬で眼球の水分が蒸発しそうだ。あちち。

「夜、お鍋を温める程度の薪だけ残して、あとは取り出そうかと。用が済んだら明日のパン生地作りを少しするんですけど、焼かないから窯はいらないし」

 わたしが灰かき棒で薪を引き寄せようとすると、「代わって」とマクマクさんが灰かき棒をわたしの手から掬いとって窯の中の薪を引き寄せる。

「ミハルちゃんが火傷したら大変だから、僕がやるよ。もうここのスタッフだし、ね」

 真綿のような微笑みに、わたしの心臓がトクンと跳ねたような気がした。

 マクマクさんは、灰をバケツに落として、まだ火がこもる大きめの薪も窯より取り出しバケツに移して蓋をする。

 少し屈んでいたマクマクさんが背筋を正す。

「ミハルちゃんは、午後出かけるんだよね?」

「は、はい」

 マクマクさんが、床に広げていた布を灰がこぼれないように丁寧に畳みながら、「それなら僕も行くよ」と言った。

 ふおっ!?

 外出? 二人で!?

「あ、いえ。時間外なので申し訳ないです」

 わたしの慌てた言葉に、マクマクさんは目尻を緩めて優しい口元を少しだけあげる。

「従業員としてじゃなくて、僕個人で行きたいんだけど」

 マクマクさんのふわりとした苦笑を見てしまうと、断りづらい。

 まぁ、用事はマクマクさんにも関係があるものだし、男性はまだ不安で怖い気持ちはあるけれど、マクマクさんが行ってくれればすぐに終わる用事だし。雇う側として、従業員は大切にしなくちゃだし……マクマクさんの好みだってあると思うし。

 悩んだ末に、わたしはマクマクさんと外出することにした。












 



 

 

 明日のボールパン用の材料をひと通り確認して、頭の中で今日やることと、明日の段取りを考えていると、「ミハルちゃん、行ける?」とマクマクさんが店の出入り口から呼ぶ。

 待たせてはいけないと急いでマクマクさんのところへ行って、羽織物がないことに気づいて再び奥の居住区へ戻り、椅子にかけてある羽織物を肩にかける。

 外出する際は、この羽織物を必ず身に着けるよう宿の男主より言われていた。

「おまたせしました」

「ミハルちゃん」

「はい?」

 扉を開けて行こうとしたところを呼び止められると、マクマクさんの指先がわたしの髪に伸びて、一束掬われる。もちろんわたしは「ぎゃっ」という悲鳴を忘れない。

「ごめんね。羽織物の編み目に絡まってたから」

 チョコレートブラウンの瞳に、更に砂糖を溶かしたような微笑みは、まるでテレビドラマのワンシーンのようだ。けれど、もちろんそれ以上の発展はないし、わたしは期待すらしない。

「ありがとうございます」とお礼だけはちゃんと言って、先に外へ出る。続いて彼も出たところで、鍵をかけた。

 ズルリと羽織物が肩から落ちそうになったところをマクマクさんが手で押さえてくれる。

 こういうことを自然にするマクマクさん、紳士みたいだな。剣とかあれば、うん、騎士様みたいだ。

 男性の手が肩に置かれるのは少し怖い。

 けれどマクマクさんは、わたしが思っているような怖い行動をとる人じゃないことは、なんとなくわかる。

 信じられなくなったものに対して、もう一度それを信じるという行為には、かなりの勇気が伴う。

 わたしには、その一歩を踏み出す勇気は、まだない。マクマクさんを見ていると、それがちょっぴり心苦しい。


 ああ、もう。マクマクさんの負担にならないように、経営者としてしっかりしなくちゃ。

 わたしは自身に喝と気合いをいれた。



ここまで読んで下さりありがとうございましたm(_ _)m

こまめに更新しますので、また読んで頂けたら幸いです!

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