エンディング
あれから数日後──。
わたしが窯から取りだしたものは、朝食用の食パンだ。
それを潰さないよう慎重に切って籠に入れて、テーブルの真ん中に置く。
三人の旦那様が、出来立ての湯気がたつふわふわの食パンを、作業をしながらも見てくれる。
「あっ。なんか今日のパン、すごくいい感じなんじゃない?」
昼にむけてのパンをこねこねしていたマクマクさんが、見てすぐに感想を言ってくれた。
「うん。ちょっと色々考えてやってみたの」
ヒントは、リフさんがくれた塩パンだった。
シンプルな味つけなのに、親しみのある、温かみのある優しい味。それは、わたしが作ろうとしている食パンに通ずるものがあるのではと思った。
お母さんだったらどうしたかな、と考えて、アパートにある調味料なんかも思い出して。
おいしかったお母さんのパンの食感も思い出して。
自分らしく生きていたお母さんを思い浮かべて作っていると、増えていっていた隠し味なんかは、自然と消去されていった。
「あー、腹減った」
「お茶淹れますね」
作業を中断したリフさんがお腹をおさえて椅子に座ると、その姿を温かい微笑みでシルスさんが見て、ポットからカップに紅茶をコポコポ注ぐ。
「じゃあこれ、目玉焼き」
わたしのパンを見たあと、マクマクさんが目玉焼きにとりかかってくれていたようで、艶々な半熟の目玉焼きがコトリとテーブルに置かれる。
ふわふわパン、湯気があがる温かい紅茶、艶々な目玉焼き。もう幸せな朝食だ。
皆、食卓につき、ふわふわ食パンに手をのばす。もちろんわたしも。
結論。感動爆発である。
「これ! この味!」
興奮気味に言うわたしに、リフさんが「どうどう」と宥める。
「うん、たしかに今までで一番おいしいよ」
「柔らかいけど、しっとりしていて、優しい味ですね」
マクマクさんもシルスさんもふわふわ食パンに満足しているようす。
もちろんわたしも、やっとお母さんの味が出せて嬉しい。
あったかい、陽だまりのような食パン。
それをみんなでこうして食べられることが、とても幸せ。
「結局、隠し味は何にしたの?」
パンを美味しそうに頬張るマクマクさんが訊いてきた。
わたしは食パンを見つめながら相好を崩した。
「シンプルにはちみつだけ」
お砂糖にちょっとのお塩等の基本材料に、そこに隠し味で少しのはちみつ。
それが全てで、それが優しかったお母さんの味。
この味を、この家庭でずっと作っていきたいな。
こうして優しい旦那様たちのおかげで、ゆるやかに自分らしくいることができたわたしは、この男性だらけの不思議な国で、仲睦まじくパン屋を長く営むことになるのでした。
楽しく幸せに生きてね、実春。
お母さんより。
【おしまい】
最後まで読んで下さりありがとうございました!
読んで下さる皆様がいてくれたので、7ヶ月間、走り抜けてここまで頑張ることができました。
いつも「いいね」をつけて下さったり、ブクマを外さず継続して下さったり、忙しい中評価をして下さったり、誤字脱字を教えて下さったり。
本当にありがとうございました(◡ω◡)
次回作も異世界と恋愛でいきたいな……なんて思っております。
「面白かった」「続編希望」「新作希望」等ありましたら、是非ブクマやいいね、↓の☆☆☆☆☆から評価を頂けましたらありがたいですm(_ _)m
感想などありましたらぜひ教えていただければと思います。
本当に7ヶ月間ありがとうございました!
読んでくれた皆様に沢山の幸せがありますように……。
神谷蒼




