僕と弟の妻に
わたしはうっすら積もる雪がある街へとくりだした。
天気が良いからか、いつもよりも出歩く人たちが多い。
早朝の薪をとりにいくときは、寒さで吐く息の白さもなかなか消えてくれなかったけれど、今はその白さも見えない。冬なのに、頬をジリジリ焼く太陽に雪が反射して、わたしは眩しくて目を細めた。
通常、店はアパートの一階を借りたり、わたしのように、住居と店舗が一体化していたりする建物がほとんどだ。
けれど、こうして晴天のときには露店も出ているから、冬といえども大通りは本当に賑やかになる。
冬は野菜の収穫が難しい。だから、干物や乾物など、保存のきくものが露店や軒下に多く並ぶ。
露店は、天気に左右されやすくて流動的だから、やっぱり置いてもらうとしたら、建物をしっかりかまえているところがいいと思うのよね。
うまくいけば、継続的な注文も頂けるかもしれないし。
色々考えているわたしだけれど、やっぱり少しは気になるのよね。
そう。この人々のわたしに注がれる視線の数々を。
「護衛もつけないで大丈夫なのか?」
「あれは右騎士様の紋章……」
「え。右騎士様だって?」
口々に心配してくれる言葉に混ざる右騎士様。うん、師匠だ。きっとわたし、今までもこんなふうに見られていたんだろうな。危なっかしくてもなんにも起こらなかったのは、右騎士様……師匠の羽織物での牽制によるものなんだな。そう思うと、心の中で師匠に何度も頭をさげた。
師匠にも胸をはって経営状況を報告できるように、今は頑張らないとね。
手袋ごしに手の甲をさすり、はぁと温める。
そんなときだ。
「女の子ひとりで出歩いちゃあ危ないだろ」
後ろから声をかけられ振り返ると、そこには見慣れぬ男性がいた。
「用事はなんだ? 出来ることなら協力するよ」
物腰の柔らかい優しそうな男性が、わたしの隣にくる。
この国の男性は、みんなをはじめ、優しいひとたちばかりだな。
「ええと」
わたしは、パンの取引相手を探していることを説明した。すると男性は「なんだ、そんなこと」と笑った。
「僕の家は、あの青い屋根の食料品店なんだ。キミさえよければいくらでもパンを置いてくれよ」
突如もたらされた提案に、わたしの表情も明るくなる。
「本当に!?」
「ああ。もちろん」
ああ。こんなにも早く取引先が見つかるなんて。幸運なことだわ。
「善は急げだ。さっと契約書作って、はやく帰ったほうがいいよ」
「はい。そうします」
男は通り二つ越したところにある青い家に向かって歩く。
「ああ。この路地から行くと近道なんだ。少し狭いけど大丈夫?」
わたしは頷いて、先に入った男の後ろをついていく。
少し、薄暗いな。
進んでいた足が重くなり、やがては止まる。
「あ、あの。やっぱり表通りから行きませんか?」
そう言うと、足を止めた男性はくつくつと笑う。
何かが変だ。
とっさに踵を返して表通りを目指そうとするも、屈強な別の男性がそこにいて、道を塞いで通れない。
「あなたは……」
わたしの言葉を聞かずに、屈強な男性が突然、わたしを俵担ぎしたものだから、驚いてノドがヒュッと鳴る。心臓が耳に焼き付いているように煩い。
「兄さん、やっと手に入ったな」
「手にって……どういうこと?」
「ああ。キミは、僕と弟の妻になるんだ」
な……っ!
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