嫌な思い出
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女の子来ない発言にわたしは呆然とした。
言ってる意味がよく理解できない。
石窯がパンを焼ける状態になって、パン生地を載せたオーブン皿を入れて少し経つ。
もうまもなくオープンになる。
どうしてバイト募集で女の子が来ないのかを考えながら、第二便用のパンをこねる。
隣で同じくこねているマクマクさんが、手は休めず訊いてきた。
「この三ヶ月間、ミハルちゃんが心配で、何か力になれないかなってずっと考えてた。訊いてもいいか迷ったんだけど……その……ミハルちゃんの両親は?」
そうだよね。齢十八の女が一人で店経営とかって、わたしの世界でも変だよね。マクマクさんは弟さんやお母さんもいるわけだし。
わたしは生地をこねながら口を開く。
「両親はわたしが幼い頃に離婚して、母親はニ年前に亡くなったんです」
はっ、と驚いて息を吐いたような音がした。
「……大変だったね。男性が苦手になったのは両親の……そういうこと?」
濁してはいるけれど、離婚が原因ということだよね。
父は、子供に対して愛情を示さない人だった。逆に母は子供が大好きで、わたしに沢山の愛情をくれたのだけれど、その分父は面白くなかったのだと思う。
母に隠れてよく叩かれていた。それを母が見つけてからは、母も巻き添えを喰らうようになった。
精神的に幼い父親だったのだろう。
わたしは父親の愛情を知らない。わたしが知っていることは、男の人は大きな身体で暴力を振るうということだけだ。
「まぁ、そんなところですかね……」
わたしは苦笑いをした。そんなわたしを見て、マクマクさんは切なそうな面持ちでわたしの名前を言った。
しんみりは嫌だ。そもそも自分のことを他人に曝け出すこと自体が嫌だ。それが男となれば尚更だ。
わたしは、過去を考えなくてもいいくらい、パンに触れる感触に集中した。
「こんな辛気臭い話は置いておいて。パンを作りましょう、パンを」
わざと強がって笑う。笑ってないと嫌な過去がわたしの頭を占領する。笑わないと涙がこぼれそうになる。
辛いことを思い出すのは嫌だ。
そのとき、タイミングよくパンが焼き終わる時刻になり、急いで石窯へ取り出しに行く。
窯を開ければ熱さで涙も蒸発する。そうしたらいつもどおりの自分に戻れる。
わたしが窯の蓋を開けようとしたときだ。
わたしの手にマクマクさんの大きな手がそっと被さる。
「窯からパンを取り出す役目は僕がするよ」
「い、いえ。熱いのでそんな危ない作業はわたしが──」
うん、というマクマクさんの優しい声音。
「だからするんだよ。女の子を火傷させちゃうのはイヤだから」
あまりに透き通った笑顔に、わたしの目からポロリと涙が一つこぼれ落ちた。
──女の子……。ワタシがオンナの、コ……?
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