なんでさ!
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夜会から数日が経った頃の早朝──。
わたしは薪をとりに、まだ暗い外へと行く。
だいぶ寒くなってきたな。
外套も何も身に着けずに出たわたしは、背筋を駆け上がる冷気にぶるりと身体を震わせた。
急がないとあっという間に体温を奪われそうだ。
はぁ、と手に息を吐きかけて薪棚へ行こうとすると、出勤してきたマクマクさんが丁度薪を抱いてこちらへ来た。
「おはよう、ミハルちゃん」
「お、おはようございます。あの、薪……持ちます」
「大丈夫。冷えるから中に入ろう」
温かい笑顔のマクマクさん……冷たさで鼻先がほんのり赤い。
そうだよね。マクマクさん、歩いてここまで来るもの。寒いよね。
わたしは頷いて、裏口から中へと入る。マクマクさんが入ったのを確認してから扉を閉めた。
キッチンもまだ寒いけれど、外よりはマシだ。
「マクマクさんは薪を置いたらちょっとそのままで待ってて下さい。外套脱いじゃうと寒いから、わっ」
マクマクさんのほうを振り返ると、わたしの手をマクマクさんがきゅうっと握ってきた。
「僕の心配ばっかりしてるけど、ミハルちゃんのほうがずっと冷えてるよ。わかってる?」
悲鳴よりも胸のざわめきのほうが先に反応した。
夜会の帰り道で起きた出来事がきっかけで、マクマクさんが少し接近してきても悲鳴をあげなくなった。
なんというか、言葉に裏がないことがわかったから。心配、と言った言葉の裏に迷惑という言葉は彼にはない。笑顔の裏に暴力はない。
それで男性嫌悪がなくなったわけじゃないけれど。
レジのときは、あいかわらず男性を見ると下を向いて、パン入れに集中する。沢山の男性が店に押し寄せた際は、混乱と不安で指先が冷えたようになると、マクマクさんがキッチンへ引っ込めて助けてくれる。そういうときに手首を掴まれたりしても、悲鳴はあげなくなった。
だいぶマシになったんだ。
でも、接近耐久時間にはまだ難がある。
握られている手が、隙をみて逃げようと筋肉が緊張すると、マクマクさんが気づいてパッと放してくれた。あははと苦笑する。
「ミハルちゃんが風邪でも引かないかと心配でつい……」
でも、と続く。
「女の子は、手をこうやって温めると喜ぶって書いてあったから、柄でもないことをやってみたんだけど……でも、なんかごめんね」
はい! なんかすっごい発言でたよ!
「マクマクさん。どこかに書いてあったとはいえ、それ、なんか遊び人の人が言うセリフみたいですよ」
とまぁ一般的な発言をしたのだけど、彼はキョトンとした。
「えっ?」
ですよねー。
彼のことだ。おそらく雑誌や本を参考に、純粋に女の子を喜ばせたい気持ちでやった行動なんだろう。手を握ることは勉強をして得たスキルだけれど、心配してくれたのは本心なんだろうな。雑誌や本なんか参考にしないで、いつものマクマクさんでいてほしいと思うけど。
しかし、どこの女の子の話を参考にしているのですかな? 参考にした雑誌や本を紹介してほしい。
「前にも言ったと思うけど、昔からわたしはこういうのが……ええと、男性がちょっと苦手でして。バイト募集も、本当は女の子が来ないかなと思ってたんですけど」
まぁ、来たのは熱気と男圧力のメンズばかりだったけど。最終的にマクマクさんが来てくれたのは喜ばしいが。即戦ありがたい。
うーん、とマクマクさんは苦笑して「バイト募集じゃあ女の子は来ないよ」と、申し訳ないように言った。
「?」
……なんでさ!
ここまで読んで下さりありがとうございました!
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