食パン
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たまにこのような時間になることもありますが……。決まった時間の更新ができず申し訳ありませんm(_ _)m
早朝──。ブルーアワーの時間帯にはまだ早い時刻。
石畳が広がる五番街の一角にあるとんがり屋根のパン屋の扉にはクローズの札がさがっており、それが今日オープンになることはない。けれど、その窓からはロウソクの明かりがボンヤリと漏れている。
石窯に薪を入れるため、わたしは裏口から外へと出る。屋根がついたところにある薪棚へ薪をとりに行くと、ちょうど出勤してきたマクマクさんが「おはよう」と声をかけてくる。
薪を持ったまま、わたしは「おはようございます」と頭を下げた。わっ、薪が落ちる。
「持つよ」
落ちそうな薪をヒョイと掬いあげ、マクマクさんは微笑んだ。
裏口から入ったマクマクさんが上着を脱ぐと、昨日買った制服を着ていた。リュックからギャルソンエプロンを取り出して、腰でしばる。
エプロン縛るところとか、ホント絵になるな。
「どうしたの?」
ついマクマクさんの立ち姿をじっと見ていたことに気づいて、ブブブと首を振った。
窯の脇にいつもより多めに薪を積み、窯の中で薪を組み立てる。使う木材は広葉樹だ。
ちなみに着火は針葉樹の粗朶を使う。それから針葉樹の中割を少し入れて火力を出してから広葉樹の中割、さらに大きな大割に火を移していく。そして大割で熾火を作ってからやっとパンが焼けるんだけど、その大割が燃えて炭化するまでがとにかく時間がかかるのよ。
オーブン機能つき電子レンジがいかに有り難い調理器具であるかを実感する。
温度をあげている間に、パン生地を作っていく。
昨夜マクマクさんも参加したからか、要領がいいし、丁寧ではやい。入ってまだ数日なのに、もはやキッチンを任せられるレベルだ。
「ミハルちゃん、ボールパンの大きさと形大丈夫かな?」
確認も何も、完璧です。わたしはコクコク頷く。
そういえば。
パンを作る作業で隣に誰かいるのって、お母さん以来かもしれない。この慣れたような手付きを見ると、なんだか重なってしまって、そのときの風景を思い出してしまう。
「マクマクさんは、どうしてこんなに作るのが上手なんですか?」
思い出すとスルリと言葉が出てしまい、心が大慌てしてしまったが今更だ。
マクマクさんは、パンを丸めながらそれを丁寧にオーブン皿に並べる。
「家だとけっこう僕が食事担当とかになるから、いつの間にか、ね」
わたしと同じだ。
両親が離婚して、母がフルタイムで働かないといけなくなって、そうしたら自然とわたしが食事を作っていた。
ただ毎朝の主食の食パンだけは、前日に母が仕込みをして翌朝焼いてくれた。
よくお袋の味は煮物とか、味噌汁とかいうけれど、わたしの場合は食パンだった。
母が疲れて遅く帰ってきても、必ず朝は食パンがあった。忙しいのに無理をして……。
それがどうしようもなく苦しくて、ありがたくて、切なくて、感謝しかなくて。学校へ行く道中泣いていた。
最後まで読んで下さりありがとうございましたm(_ _)m
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