0話 子供の頃の夢
ルビナは前世の記憶を持っている。
それはずっと生まれた時から持っていたが、だからといって大人らしい子供だった訳では無い。
子供時代はそれなりに子供時代を楽しんだ。
前世とは違って上流階級に産まれたからか、家族がよかったのか、
ルビナの子供時代はとても健やかなものだった。
ルビナには9歳年の離れた兄がいた。
二人は仲良しだったので、兄には前世の記憶のことを話していた。
「ルビナ、ナイフ投げ教えて」
兄にそう言われると、ルビナはいつも素直に教えていた。
子供の手、しかも筋肉の無い手でコントロールをつけるのはなかなか難しかったので、2人で一生懸命練習した。
「ルビナは大人になったらサーカスのナイフ投げになるのか?」
8歳の時、17歳で将来の事を真剣に考えだした兄にそう聞かれてルビナは笑った。
「ならないよ。だって男爵家の娘だもん」
ルビナが答えるとそうだよな、と二人で笑った。
「じゃあルビナは大きくなったら何がしたい?」
ルビナは考えたことがなかったので、うーんと言って首をひねった。
空の青を見て、1つ思いついた。
「もし今度、王子さまを助ける機会があったら、今度はちゃんと助ける、かな」
兄は笑った。
「凄いな。正義のヒーローじゃないか」
ルビナは首を振った。
「別に正義じゃなくてもいいの。ちゃんと助けられたらそれでいい」
そう言って空を眺めた。