第6話 はいー、お前すぐやらかすー!
【前回のあらすじ】クックにして欲しいこと、募集中。
「……タマキに、タマキに汚されたぁ! 散らされちゃったよぉ……!」
「おい、まだ何もやってねぇだろうが! お前それ前話でもやったろ」
俺たちはまだ食事の最中。したがって、時は全然進んでいない。ったく、反省しろよ…….。
クックへの罰は帰ってからじっくり考えるとしよう。
「おいそれよりクック、次のオイシメジに火ィつけてくれ」
「……はい、ご主人様」……ボッ!
クックは俺の機嫌を取ろうと必死になっている。初期設定はどこへやら……。
……キノコの焼ける音だけが空間に響いている。そういう意味では、洞窟っぽいと呼んでも差し障りはないかもしれない。
ご主人様って呼ばれるのも、魔法を身近でホイホイ見れるのも悪くはないが……ま――。
「ありがとう。でも、わかりやすくへりくだっても罪が軽くなったりなんてしないぞ」
「チッ」
――――どうせこいつのことだから、一過性の行為だってことは見え見えなんだよ。
「それにしても……オイシメジうますぎ、一生食べてられるよ。……お、そろそろかなっと――」
「……」
「――これも美味い!」
「……ねぇ、何でさっきから大当たりばっか引いてるの? 確率バグってんの?」
確かにこいつの言っている通り、俺はひたすら美味すぎるキノコばかりを貪っている。
「それは、日頃の行いじゃないか? 俺はいつも自分を律して、ストイックな日々を送ってるからな……お前と違って」
「わ、私だってちゃんとやってるもん! 自分を律して、ストイックな生活してるもん!」
……よく言い切れたな。どっからどう見たら、お前が自分を律してストイックに生きてるように見えるってんだよ。
ここ最近一緒に過ごしてきたけど、自由奔放・気まぐれ・自堕落に生きてるようにしか見えなかったぞ。
「そうか……そういうことなら、試してみたらいいんじゃないか?」
「……試す?」
「うん。自分用にオイシメジを焼いてみろよ。お前が自分を律してストイックな生活とやらを送ってるなら……きっと大当たりを出せるよな?」
「……やってやるよ。さっきから調子に乗りやがって……ご主人様だぁ? 童貞のクセして特殊性癖ぶっ放してんじゃねぇよ」
「お前が勝手に呼び始めたんだろうが。そんな注文、出した覚えはないんだよ」
「うるさい。この私を辱めたこと、絶対後悔させてやる」
「何でそんな怒ってんだよ。つか、『この私』ってどの私だよ。そんな高尚な身分でもあるまいし」
「……見てろよ、痛い目見せてやるから」
いや、自分でキノコ炙って自分で食うだけなんだから、俺が痛い目を見る危険性は万に一つもないんだけど。
……ボッ!
……ジュー、ジュー……。
「ふふーん、そろそろかなぁ。……いっただっきまーす」
クックが勢いよくオイシメジ(炙)を口へと放り込んだ。気持ち悪いくらい笑顔で咀嚼している……が、だんだんと勢い廃れ、満面の笑顔も次第に曇っていき――。
「……ちょっと、あっちで吐いてきます」
「おう、行って来い」
クックは、俺から若干距離を取って背を向けると、本当に内臓まで吐き出してるんじゃないかと思うくらい……お前は本当にヒロインなのかと疑いたくなるほど……大きく立派な嘔吐き音を聞かせてくれた。
―――――
内容物を吐けるだけ吐き出してスッキリするかと思いきや――。
「ひっぅぐ……えっぐっ……もうお嫁に行けないよぉ……」
と叫びながら、次は休むことなく泣き喚いている。つくづくうるさい女だ。
つかお前、結婚するつもりなんかよ。『縛られるのは嫌い、私は一人で強く生きるんだ』とかほざいてそうだったから、意外だなと思った。
ま、その性格じゃ貰い手ないだろうな多分……いや絶対。
クックがあまりにしんどそうだったので、俺も途中から背中をさすってやってあげてたんだけど……流石にこの場面がずっと続くのも申し訳ないから――。
「おい、いい加減泣き止めって、別に俺は変に思ったりしないから」
「……ひぐっ、どういうこと?」
「ゲロ吐くヒロインなんていくらでもいるってことだよ」
「いないよ! 何、慰めのつもり?」
今の台詞のどこを慰めかと思ったのかはわからんがな。
「違う違う。お前の奇行を見てきた俺からしたら、ゲロ吐いたって今更驚かねぇよってこと」
「今更って……まるで私が変人みたいに言ってくれんじゃん」
変人である自覚がないとは……もはや、救いようがないな。
「ま、落ち着け落ち着け。ほら、お前の食べかけのキノコでも食って落ち着け」
「落ち着けるか! それ不味いやつでしょ、わざわざ拾ってこないでよ!」
「いや、俺の足元に落ちてたから……。あ、食べ物を粗末にしちゃダメだぞ」
「ド正論だけど! その通りだけども、勘弁して! ……それにさ、それはもう食べ物とは呼べないと思うんだよね」
「……食ってたじゃん。嬉しそうに」
「急にツッコミが鋭くなった気が……とにかく、それはもう捨てちゃってよ!」
「……ま、食えないなら取っておいても仕方ないか」ポイっ。
……後でこっそり拾って、すり潰して……飲み物にでも混入してやろう。
「さて、お腹もいっぱいになったところで次の展開に行くか。……パンパカパーン、キノコ狩り後半戦でーす」
「私、全部吐き出しちゃったからお腹の中空っぽなんだけど……。まぁ、今日はツイてなさそうだからいっか……」
今まではクックの近くで採ってたけど、キノコの区別も結構つくようになってきたし……そろそろ、奥の方に手を伸ばしてみるか。
「俺、あっちの方で採ってくるけどいいか?」
「いいけど、気を付けてね? 奥の方に行けば行くほど危険なキノコが多いから」
「了解、じゃあ行ってくる!」
「……ついさっきまでビビって採らないとか言ってたのになぁ」
―――――
「クック、次のカゴくれ。もういっぱいになっちった」
採取スピードが飛躍的に上がったことにより、後半戦は早くも二つのカゴをいっぱいにした。この調子でガンガンやってくぜ!
「ちょっとタマキ、ペースが早いよ。強引に採って傷でもついたら、それこそ意味ないんだからね」
「わかってるって」
「わかってないよ。採ったら採った分だけ、自分で持って帰らないといけないんだよ?」
「あ、そっか」
「やっぱりわかってないじゃん! ……この際はっきり言っておくけどね、君は素人だよ」
……はっきり言わなくてもわかってるけど。
「ただ闇雲に採るってだけじゃ甘いんだよ。ちゃんといいものを選別して採らないと」
「……はいはい」
「ちょっと! 真面目に聞いてないと、取り返しのつかないことになるんだからね」
テンプレ学級長か、お前は。
「大丈夫だよ。俺は慎重だから……お前と違って」
「また私を引き合いに出さなくていいから!」
「お、何だこれ? ……光ってる」
「もう、心配だなぁ……」
俺の足元には、いかにもお高くつきそうなキノコが値を張って……ごめん訂正、根を張っていた。
「んっ……と、これ抜けねぇ」
この感覚……きっと大物上物に違いない。
ちょっと気合い入れるか――。
「よ、い、しょ!!!」
ブチィッ!
「っ! 何、すごい音したけど」
「ふぅー、厳しい戦いだった……。クック、喜べ。すごいのが取れt――」
パタッ…………。
……えっ、暗くなって――。
キノコの光も消えて、暗闇が俺の視界を遮った……と、多分背後から大きな声が――。
「タマキ! 君、早速何かやったでしょ!」
何だクックか、無事でよかった。顔はあんまり見えないけど――。
「いや、特に何もしてない。光ってるキノコ採ったら――」
「それってまさか……100%それが原因だよ! ……やばい、早くここから脱出しないと――」
「……脱出しないと? ……って、えっ?」
……気付いた時には、妙な浮遊感が全身を襲っていた。
その理由は不思議と理解できて……俺たちは、現在進行形で地面へと落下しているからだ。
……あー死んだな、こりゃ。
【ありがとうございました】