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第5話 さーて採りますか、そしていざ実食

【前回のあらすじ】キノコなんて~怖くない!

「さぁ! 本も頭に入ってるだろうし……準備は万端だね」


「あのな、話数をまたいだからって勝手に俺が本に目を通した設定にするんじゃない」


「残念だよ……君の脳みそ」


「おい、本当に帰るぞ俺!」



 俺だって一瞬で覚えられるならぜひ欲しかったよ。……まだ、設定間に合う?


 つか、冗談抜きで帰りたくなってきた。



「君の『帰る』は聞き飽きたよ……。君、カエルなの?」


「面白くない」


「そっけないなぁ。……ともかく、帰るのはキノコ採ってからね」


「はぁ、もうお前一人で行って来たらいいんじゃねぇの?」


「それは寂しい、それにここまで来たんだから覚悟はできてるでしょ?」



 超気軽な気持ちで来ちゃったんですけど。何の覚悟をしてきたらいいんだよ。



「……普通に不安しかないんだが」


「君の不安を取り除く時間は残念ながらないし、不安を取り除く手段を知らない。それに、そもそも君が不安に思っていても関係なく連れて行くし」



 ……はぁ、話にならねぇ。



「じゃあ……ついていくだけな。俺はキノコ狩らねぇから」


「好きにしなよ……チキンくん。じゃあ、私についてきてね」



 クックは低く身体を屈めると、四つん這いで隙間に滑り込んで進んでいく。



「タマキ、入り口は狭いからゆっくり来たらいいからね」



 クックの姿は瞬く間に見えなくなってしまった。穴自体はそれほど長くは続いていないのだろうか。


 俺もえいやとその入り口に突入したが……本当に狭い、肩がめっちゃつっかえる。


 スーパーマ●オがマメ●リオの土管に無理矢理入ろうとしてるようなもんだ。ところてんの気持ちがわかる気がする……例えが正しいのかわからないけど。


 ま、他の入り口を知らない以上、ここを抜けないといけない。


 こーゆー時、思い切って帰れないのが俺の悪いところだよなー。


 そんなこんなで苦労して隙間を抜けると――。



「うわっ、すげぇ……」



 俺の口から、思わずそうこぼれた。


 視界の先には一面キノコキノコキノコ、キノコでいっぱいだったから――マリ●も喜ぶぞ、これは。


 洞窟の中は入り口の狭さからは想像もつかないほど広い。観戦で一度訪れたことのある某東京のドームくらいは余裕でありそうだ。


 よく見てみると、漏れ出ていた輝きの正体は光るキノコだった。これがこの空間いっぱいに無限に光を供給し続けているようだ。


 これだけで、ここがどれだけお伽話みたいにファンタジーめいた場所かわかってもらえると思う。


 地球のどんな絶景より美しく、どんなパワースポットより力強さを感じる。


 俺は四つん這いから立ち上がることも忘れて、ただその壮大さに圧倒されていた。



「……ほら、いつまでも寝っ転がってないの。みっともないよ」


「……悪い。見惚れてたわ、キノコに」


「君が言うと、もう卑猥な意味にしか聞こえないなぁ……」



 お前、せっかく作った空気をぶち壊すなよ。



「そうやってわざわざそっち路線に持って行かなくていいから。……ちなみに俺は他人のキノコなど興味ない」


「そこまで聞いてないよ。自分で話広げてるじゃん。……さ、じゃあ仕事始めようか」


「始めようか、って勝手に始めればいいだろ」


「まぁまぁ、突っ立ってるだけでいいから一応聞いて。ここに入るだけでも最低限のルールってのはあるからね、社会に出ても同じだよタマニートくん」


「タマニート言うな! 俺がニートの象徴みたいになってるから!」



 それにさ、ニートにニート呼ばわりされる筋合いはないんだが。お前、社会に出たことないだろ。



「どうでもいいけど、よく聞いてるんだよ。まず、キノコはくれぐれも大事に扱うように。踏んじゃったらだめだからね、痛んじゃうし怒っちゃうから」



 ……痛んじゃうはまだしも、怒っちゃうとは?


 しかも、これだけ足下にもキノコがびっしりだと、踏まないのって結構難しいと思うんだが。



「それと、これはさっきもちょろっと口にした気もするけど……採っちゃいけないキノコは絶対に採っちゃダメだからね。最悪触れただけで死ぬかもしれないから」



 ねぇ、ここまで連れてきておいて再三脅さないでくれないかなぁ?



「だから、キノコ採らねぇって言ってんだろ……」


「わかってるから。……それで最後に、採りすぎ注意だからね。生態系の維持が何とやらだよ」



 聞いちゃいねぇじゃねえか……。



「……採らないなんて言わないで、君にも手伝って欲しいな。きっと楽しいから、さ」



 ……楽しい、ねぇ。



「そうだ、タマキが採った分は全部自分の取り分にしていいってことならどうだい? てか、私の分ける気なんて最初からないからね」


「……結局やらないといけねぇじゃねぇか!」



 ―――――



「クック、このキノコどういう名前のキノコだ?」


「それは……ハズカシメジ、だね。それを食べると、ほぼ100%服が破けるよ」


「物騒だな……。じゃあさ、これは?」


「オイシメジだね。60%の確率で普通においしいキノコだよ」



 ……俺はキノコ狩りをこれでもかと満喫していた。つーかこれ、めっちゃ楽しいから!


 ここはまさに、キノコの楽園、と呼んでも過言ではないだろう。


 俺はキノコを採ってはクックに質問を浴びせることを繰り返すことで、無限に湧き出てくる探求心を満たしていた。



「なぁクック、ここのキノコって生で食えるのか?」


「炙った方がおいしくはなるけど、生で食べた方がキノコの効果は強いよ」



 へぇ、キノコの道も奥が深いんだな。



「じゃあさ、オイシメジの場合はどうなるんだ? これの効果は普通においしい、だろ?」


「うん、つまりは効果を得る確率が変動するんだよ。炙ったら、効果の発動確率は大体半分くらいになっちゃうんだ」


「なるほどなー……じゃあこのキノコは?」


「それはドクドクシイタケだね。食べると20%の確率で毒舌になっちゃうんだ」


「毒ってそっちかよ……」


「採っておくといいよ。そのキノコ、町で行われてる謎の研究で重宝されてるから、町に持っていけば高値で売れるんだー」



 ……謎の研究? 何それ、めっちゃ気になるんだけど。



「そっかー。……てか、お腹空かない?」


「うーん、そうだね。じゃあ、お昼にしよっかー。結構採ったしね」


「よっしゃ!」



 ……唐突だけど、昼食パート突入です。



 ―――――



「突然だけど、私……魔法使えるんだ」


「本当に突然だな」



 ここはやはり地球ではなく、魔法がある世界のようだ。



「んじゃ、見せてみ?」


「うん、行くよ、メr……」


「待て、嫌な予感がする。その魔法、他に呼び方ないのか?」


「別に無言でも使えるよ。……それっ!」



 ボッ!!!



 ……すげぇ、クックの指先に小さな炎の玉が乗ってる。これが魔法……。そして詠唱止めといて正解だったわ。



「……めっちゃきれい」


「それほどでも……ここら辺では屈指の美人だろうけど」


「お前のことじゃないよ、その火のことだ」



 つーか、ここら辺って森しかないだろ。比較対象皆無じゃないか。



「このメ……火だって、私の一部なんだけどね」


「……どうやって出してんだ、それ」


「うーん、気合かな。あとは、持って生まれた才能?」


「才能か……俺にも使えないかなぁ、魔法」


「今度教えてあげよっか……君の採ったキノコの半分で手を打とうじゃないか」


「本当か⁉ ……後半戦は採りまくるぞー」


「ちょっと、採りすぎはダメなこと忘れないでよー」


「わかってるって! ……それより、その火でキノコ炙って食べようぜー」


「お、わかってるねぇ! 私もそうしようと思ってたんだよ」


「……ほい、最初は無難にオイシメジだろ」


「よし来た! キノコちゃんと持っててねー」



 ……ジュージュー、ジュー……。


 ……焼ける音がたまんねぇな。それに香ばしい匂い……もう美味い、やばいなこりゃ。



「……いいねぇ、風流だねぇ」


「これが風流ってやつなのか……。てかさ、ここのキノコって何というか……ずっしりしてるよな。身がしっかり詰まってて、鉄球みたいだ」


「食べられる鉄球なんて最高だよねぇ。市販のキノコとはわけが違うよ。……そろそろいいと思う」


「……ん? 先にもらっちゃっていいのか?」


「もちろん、タマキが先に食べて!」


「……本当にいいの? いつもみたいに文句言わないの?」


「……言わない言わない! むしろ先に食べて欲しいな……タマキに!」


「……? 珍しいこともあるもんだ、明日は雨かな……? ま、お言葉に甘えて」


「余計なセリフがくっついてるけど……まぁ、冷めないうちに早く早く!」


「いただきまーす……はむっ」



 ……これは!



「う……うまい。 これやばいぞクック!」


「お、よかった! 大当たりかな?」



 おそらく、炙ったことによって普通にうまくなったのと、オイシメジの効果の普通においしい(炙ったことでおいしくなる確率は落ちているが)の相乗効果でめちゃめちゃおいしくなったのだろう。



「……俺が食べてきたキノコの中で一番うまいわ、これ……かなりダントツで」


「そうなんだ、そんなにおいしかったなら私にも一口ちょうだい!」


「おう、もちろんいいy……」



 ん? おいしかった“なら”……? それに、こいつにしてはやけにおとなしかった気が――。



「……どうしたのタマキ、急に固まってさ。早くそのおいしいのちょうだいよ」


「なぁ、もしかしてだけど…………俺に毒味させた?」


「……そ、そそ、そ、そそ、そ、そ、そ、そん、っそん、そん、そんな、そんな、そんな、そんなk、そんなこ、そんなこ、そんなこt、そんんあこ、そんなことしてないし!」



 ……長い! そして図星だ!



「お前さ、食ったことあるんだろ? ……ハズレのキノコ」


「……はい」


「それはどんな味だ?」


「……クッソまずいです」


「どのくらいまずい?」


「この世界の嫌なことや苦しみをまるごと凝縮したような、吐くときに内臓まで一緒に吐き出したくなるくらいまずいです」


「……お前、罰としてこれからそのこの世界の嫌なことや苦しみをまるごと凝縮したような、吐くときに内臓まで一緒に吐き出したくなるくらいまずいのに当たるまでひたすらキノコ炙って食べ続けろ」


「ちょま……それだけは勘弁してください! お願いだから! い、一生のお願い!」



 そんなに嫌なら……何で俺にそんなリスクを負わせた! ……まずいの食べてないのにムカついてくるわ!



「……じゃあお前、代わりに何ができるって言うんだよ」


「……何でもやります! それ以外のことなら……何っでも!」



 そんなに嫌なのかよ。



「ふーん、じゃあ考えとくわ。覚悟しとけよ」


「……でもさ、タマキに一番においしいのを食べてもらいたいって気持ちもあったんだよ! ……どう、情状酌量の余地があると思わない?」


「それをお前が自分で言うのが間違ってんだよ! ……残念だけど、情状酌量の余地はこれでなくなったな」


「ふぇ~ん! どうかご慈悲を……タマキ! いや、タマキ様!! ……いや、睾丸様ァ!!!


「お前もう、絶対許さねえ! とんでもない罰与えてやっから! 死んだ方がよっぽどましだと思わせてやる!」

【ありがとうございました】

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