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第2話 解け合う

【前回のあらすじ】猫娘をオトしました。

 悪魔的に優しい俺は、ちょろ猫女と遊んでやることになった。あくまで、遊んでやる……だからな!



「ふんふふふふふん、ふんふん、ふん、ふふふふふん、ふんふん~」



 クックは俺がここに残ったからなのか、機嫌よく鼻歌を鳴らしながら、猫じゃらしを弄っている。……あのさ、それで満足なら一人でもよくない? 俺が残った意味そんななくないか?


 大会も近いのに……一刻も早く帰りたいのだけれど。


 つってもなぁ、ここがどこかわからない以上、どこに向かっていけばいいかもわからないわけで。


 …………この何とも気まずい雰囲気(多分そう感じてるのは俺だけなんだけど……)にしびれを切らすのに、そう時間はかからず――



「……あの、何して遊ぶんですか?」



 俺をあれだけ必死に引き留めたということは、それなりの理由が――。



「逆に何かしたいことはあるかい?」



 …………いや、そこは考えとけや。本当にどうして引き留めたんだ? 馬鹿の考えることは理解不能だな……。


 つか、じゃらし弄るのそろそろやめろや。相手と話すときは面と向かってだな――。


 ……そっちがその気なら、こっちだって礼儀をこなすこともないよな。



「……ないので帰ってもいいですか?」


「それはダメ!」



 何でだよ。



「何でですか」



 俺の心と言動が完全に一致した。そのくらい俺にはここに残る理由がなく、どうして残されているのかという懐疑の思いだけが募っていく。



「寂しいから」



 寂しいから、だと……?



「……帰ってもいいですか?」



 たったそれだけの理由で……俺はそんな暇じゃねぇんだ。まったく、馬鹿馬鹿しいにも程があるぜ、この女ふざけやがって。


 ちょっと顔立ちがよくって、俺の癖にどストライクだからって、そう何でもかんでも自分の思い通りに事が進むと思うなよ。


 そんな俺の思いなんていざ知らず、この馬鹿は楽しそうに笑いながら――。



「ふふふ、甘いね……」



 ……ん?



「何が?」


「私の分析によると、どうやら君は帰ろうにも帰り道がわからないみたいじゃないか」



 そんなことは最初の方でとっくに言及してるよ。


 あと分析って言うな、真面目に分析をしている方々に失礼だから。



「つまり、君が家に帰れるかどうかは私次第ということさ! ふんっ!」



 そんな自信と鼻息満々に言われてもなぁ……。


 ん? ちょっと待てよ、こいつ……。



「あの……ってことは、帰り方を知ってるんですか?」


「知らないよ」



 何なんだマジでこいつ。普通に●したいんだが。



「まず君がどこのどいつか知らないのに、わかるわけないじゃん」



 ……ま、まぁ、それもそうだよな。こいつを少しでもあてにしようとした俺が馬鹿だった。


 山とか森とか言ってたけど……それだけじゃどこかまではわからないし、詰んでないか、これ。


 おいおい、冗談じゃねぇぞ。山で暮らさにゃならんとか、シャレにならんぞ。


 それこそ、小学生の時行ったキャンプくらいしかまともな経験がないんだぞ。とっくに当時の記憶なんてないし……実質未経験と言っても大げさじゃない。


 山が厳しいことなんて周知の事実だしなぁ……生き抜いていける気はしない。


 とは言っても……この馬鹿に命を預けるのは論外だ。


 ……………………やるだけやってみるしかないか。人間の進化の可能性を信じてみよう。



「……はぁ、じゃあもういいです」


「よくない! 遊んで!」



 何なんだよ……早く解放してくれよ! 何がしたいんだよ、こいつは!



「私ね、君に会えてさ……とっても嬉しかったんだよ? 森には全然人が来ないからさ」



 ……急にどうした?



「はぁ……」


「だから、感謝だけは伝えておこうと思って……ありがとう」



 ……どうして俺は感謝の言葉をもらわなければならんのだ? 話が全然見えないのだが。


 何でこういう流れになったのか掴めないが――――悪い気はしない。


 …………あぁ、もうわかったよ!



「……俺も一緒に遊びますよ。改めて、何するんですか?」



 俺よりはこの山だか森だかについて詳しいみたいだし、しばらくここで情報を集めるのもいいだろう。……情報が集まるまでの付き合いになるだろうがな。



「じゃあ……昼寝ごっこしようよ!」



 ……昼寝ごっこ?



「……それって何ですか?」


「昼寝ごっこは昼寝ごっこだよ。一緒に昼寝するの」


「それって、もう昼寝じゃないですか……。ごっこも俺もいらなくないですか?」


「寝ちゃえば一緒だよ。あと、1人で寝るのと2人で寝るのって全然違うからね?」



 いやだから、それはもう昼寝でいいでしょって。


 全然違うって、意味合いがな。



「それが遊びになるんなら……別にいいですけど」



 さっきまで眠っていたので、あんまり眠たくないけど……。


 ……はぁ、訂正。ちょろいのは俺だ。



 ―――――



 二人、ベッドの上にて――。



「ねぇ、一ついいかな……?」


「はぁ、何ですか?」


「さっきから思ってたんだけど、君さー……固すぎない?」


「それなりに自信はありますけど……ってなんでわかるんですか。もしかして俺が寝てる間に夜這い的なことを……」


「馬鹿じゃないの……するわけないよ!」


「ならどういう意味……何のことを言っているのか……?」


「真剣に悩まないでよ! 私が言ったのは君の言葉遣いのこと! 敬語はなんかむずむずするからさー、もっと砕いて喋ってほしいなって……」


「それは詳しく説明してもらわないとわかんないですよ」


「君がどんな人間なのか未だに掴めないよ……」


「うーん、じゃあ……こんな感じでいいか? ……クック」


「……うん、それがいい! なんだかスッキリしたよ」



 ……俺はこいつの思わせぶりな言葉選びも大概悪いと思うぞ。



 ―――――



「クックはさ、ここに暮らしてんの?」


「基本的にはそうだね」



 ……基本的に? ……まぁ細かいことはいいか。



「こんなところで何やってんだ?」


「そうだねぇ、いつもゴロゴロして……じゃなくて、山の警備員をしてるよ」


「つまり、ニートってことだな。わかった」


「ニートじゃないし! ちゃんと仕事してるし! 毎日忙しいし!」



 ニートの見分け方其の壱【ひたすら中身のない忙しいアピール】



「あぁ、そうですか。……ニート」


「あ? ……ふ~ん、そういう君もその変な格好からしてとても仕事をしているようには見えないけど? あははっ」



 ニートの見分け方其の弐【自分の言い訳に苦しくなると、途端に他人の粗を探し出す】


 あと、あっさりニート認めたな、こいつ。



「うるせぇ、こっちはまだ働く必要のある年齢に達してねぇんだよ。それにただのユニフォームだろ……最近のニートは大衆文化にも疎いのか?」


「はぁ? ほんとむかつく! ニートニートってやかましいんだよ!」



 ニートの見分け方其の参【急に狂暴になったり、情緒不安定】



「てか、ゆにふぉーむ……って何だよ! でたらめなこと言ってごまかそうとしたって、その服がダサい事実はごまかせないからね!」



 野球のユニフォームってそんな知名度ないのな……。



「ごまかしてねぇし、ダサくねぇ」


「いや、ダサいね。そんなダサい服着て町に行きなんかした日には、町中の笑いものだよ!」



 いや、どんな奇特な町だよ!



「ていうかさ、どんな教育受けたらほとんど初対面の人間に対してそんな態度取れるの?」


「砕けていいって言ったのはお前だろ?」


「そうだけど……さっきのむっつり好青年ぶりはどこに行ったのさ」


「むっつり呼ばわりはやめろよ、ビッチ」


「あ、ごめん。童貞青年タマキくん!」


「くたばれクソ猫」


「あ? お前じゃクソガキ」


「クソガキじゃねぇ。俺はもう大人だ」


「……っていうのが口癖のクソガキでしょ。いっぱい見てきたからわかるんだよね」


「だとしたらお前の目は節穴だな」


「……死ね」


「お前が死ね」


「きぃ~、ムカつくムカつくムカつく!」


「それはこっちの台詞じゃボケ」


「いーやこっちの台詞だね。私が最初に言ったんだから」


「はぁ~、そんなことでムキになるとか……お前の方がクソガキじゃねぇか」


「またクソガキの言いそうなことを……相手にしてられないよ」


「相手にしてもらってるのはお前だからな? 勘違いするなよ」


「私が相手してやってんだよ!」


「ま、そう思っときゃいいんじゃね。お前の相手、さすがに飽きたわ」


「素直に語彙が尽きたって言えばいいのにねー」


「まぁ、返す言葉もないのは本当だな……お前が馬鹿すぎて」


「この……睾丸野郎!」


「あー、それは我慢ならねぇわ。覚悟しろや」




「「……」」


「……君って、面白いね。私の見立て通りだよ」


「……そうか?」


「うん、拾ってきて……本当によかったよ」


「その言い方はやめて欲しいけど……ま、俺を助けてくれてありがとな」


「……」


「おい、何も返ってこないのは恥ずいだろ……って、もう寝たのか」



 つくづく思い通りにならないというか、ストレスたまるけど……たまにはこんな感じも悪くない、かもな。……俺も寝よ。

【ありがとうございました】

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