第25話 二者対談
【前回のあらすじ】クックまたも敗北……。
「……さて、お待たせいたしました。つまらないものではありますが……お茶と茶菓子をご用意させていただきました」
「……」
テーブルにいかにも高そうな茶菓子が並んでいた……美味そう。
「どうぞお召し上がりください。……粗茶ですが」
「……うっす」
……さっきから思ってたんだけど、ツッコんだ方がいいかな? ……まぁ、ここはお茶で流すとするか。
つーか何、このお茶……めちゃ美味い。絶対粗茶じゃないよ、これ。
どのくらい美味かというと、こんなお茶飲んだことないくらいの強烈なやつだ。
……ほっ、落ち着く。
ポークさんは俺のそんな様子を観察していたのか、本当に絶妙にほっこりしたタイミングで話しかけてきた。
「……本題に入る前に一つよろしいですか?」
……妙に神妙な面持ちだな……強面だし普通に怖い。
「あ……何ですか?」
「あなたはどこから来たのでしょうか? お見かけしたところ、この町の人間には見えなかったので」
いきなり結構鋭い質問だな……。
さて、本当のことを言うべきか難しいところではある。
ま、隠し事は通用しそうにないので、あまり考えずに素直に話すかな。……信じてはもらえないだろうけど。
「え~と……日本です」
「にほん……聞いたことがないですね。
知らないか……。
「世界は広いのですな。私もまだまだ勉強不足ですね」
俺の見立てでは社会に疎いようにも見えないし、むしろ勤勉そうだし……異世界転異って妄想もあながち的外れじゃないのではないだろうか。
「それと……ククルス様とはどういった経緯でお知り合いに?」
ま、そこは確かに気になるよな。
「クックとは……山で出会った……そんな感じですかね」
「山……またあの忌まわしい山に行っていたのですか。あの子は……」
忌まわしい……?
「……あの山がどうかしたんですか?」
「はい、あそこに逃げられると私たちには手出しができないのですよ。見つからないわけですよ」
「……どういうこと?」
「あの山は町が保有する山なのですが、どうやら強い呪いがかかっているそうで……負の遺産として代々町長家によって受け継がれているのですよ」
「……呪い、ね」
胡散臭い……。
「そうです、あの山は人を選ぶのです。ククルス様はあの山に選ばれ、町の中でただ一人入山ができる方なのです」
あの馬鹿を選ぶなんて……ずいぶんと奇特な山だ。というより馬鹿だから選ばれたのかな。
「へぇ……じゃあ、……選ばれてない人が山に入ったらどうなるんですか?」
「それは私たちにもわかりません。選ばれてない者は帰ってきませんから」
うわ、おっかねぇ!
「ククルス様は本当に困ったお方です。選ばれたことをいいことに、あの山を遊び場として私物化していますから。この前なんて、家出用の別荘を建てたとか……」
……あぁ、あの犬小屋な。
「あの……大変なんすね」
「えぇ、本来ならククルス様は次期町長になるお方なのですが……先が思いやられますよ」
うーん、こう真剣に落ち込まれるとどう反応していいのか困るな……。
「あ……えっと、そんな山はどうにかしたら……燃やしたりとか?」
「もちろん試しましたよ。しかし、次の日になるとすっかり元通りに……」
……うーん……ま、俺程度の考えぐらいやっててもおかしくないわな。
「そういうわけで、我々もククルス様の家出を止められないのでございます」
はぁ、つくづく同情するよ……。
「それはそうと……どうして俺は山から出られたんだろう。もしかして俺も選ばれしものなのかな?」
「……そういうことでしょうね。……タマキ殿がよろしければ、あの山の中について教えてはいただけないでしょうか? どんな些細なことでも構いませんから」
いや……お願いされても、大したことは教えられないんだけどな……。
今日はぎりぎりだったぜ……。





