第24話 こいつらの掛け合い好きだ
【前回のあらすじ】クックがひたすらに無下にされてるお話だったよ。
「こちらへどうぞお座りください。それではあの愚か者にお茶を入れて参りますので……」
……ねぇ、そんな呼び方していいの?
「少しの間ではありますがおくつろぎください。タマキ殿にも持ってきますね……粗茶ですが」
……案内された部屋は、至ってシンプルだった。
内装は一面白塗りで、だだっ広いという言葉がぴったりかもしれない。
調度品と呼べるようなものはほとんどなく、殺風景にも感じる。
腰くらいの高さのテーブルと、そこに隣接するようにソファがどしっと構えている。どっちも部屋の雰囲気に溶け込むような茶色である。
ポークさんのお言葉に甘えるようごく自然にくつろごうと決めた俺は、ソファに腰を下ろす。
……!
うわー、ふかふかだ。一瞬壊れたのかと思ってびっくりしたよ……。
……それにしても、くつろぐって結局何すればいいんだろうって考えがふと脳裏をよぎる。
こんな落ち着いた雰囲気って結構久しぶりな気がした。
クックと出会ってからというもの、騒がしい日々を送ってきたわけだけど……うん、やっぱり静かだ。
何かから解放されたような、何かを失ったような……。
……俺もつられるように……視界がぼやけてきて……。
―――――
……ガチャァン!!!
「!!!」
勢いよく開いたドアの音が、俺のうたたねの世界を木っ端みじんにしやがった。
「……お前かよ」
ま、そうだろうけど。
皆の想像通り、入ってきたのはクックだ。
ただ一つびっくりしたのは、クックがメイド服に身を包んでいたことだ。
相変わらず……何がしたいのかわからないが、普通に似合ってる……と思う。
何より、猫耳との相性はやはり抜群である。
「……何、その不愛想な返事は?」
「お前に愛想を振りまいたことがあるか?」
「ふんっ! よだれが顔に付いてるっつーの、汚い」
「うるせぇ、寝てたんだよ。びっくりさせやがって」
俺は無理矢理起こされるのが大嫌いなのだ。図らずとも、口調には怒りのエッセンスがこもってしまう。
「……で、何? いつものおとなしくしてられない発作か?」
「そんな疾患は持ってないから!」
それに気付いてないのは……もう手遅れだな。
「そんなことより……何か言うことがあるんじゃないの?」
「お茶まだ?」
「私が持ってくるわけないでしょ! メイド服だよ! メイド服!!」
「逆に何で持ってこないんだよ! メイドだろ、お前」
「私は持ってきてもらう側の人間なの!」
……知るか!
メイドコスするくらいなら、その心持ちまで染めてから来いと言ってやりたくなった。
「……で、どうなのさ?」
「どうとは?」
「感想だよ、感想……似合ってる?」
「うんそうだな、いい感じじゃん?」
「うわっ、適当にあしらいやがったよ、せっかく着替えたのに……」
「で、本当の用は何だ?」
「あ、うん。まずはこれを君に……」
……クックが渡してきたものは一枚の紙だった。
「……これは?」
「プレゼント! まぁ、見てみ?」
……プレゼントね。
…………ペラッ。
んー、何々……数字が並んで……。
「……どっかの住所か?」
「そう、友達の家の場所だよ!」
ふむふむ……。
「あと、裏側に手紙を書いてあるから、着いたらそれを渡せばいいよ」
「……急にどうした? やけに準備がいいな」
「……何?」
「いや、お前らしくないと思ってな……。それに、お前がやらなくても、ポークさんがやってくれるって言ってたろ」
「はぁ、君は私をどれだけ軽視すれば気が済むんだよ……」
悪いが、どこまでも軽視している。
「私なりに気を回したってのに……」
「ククルス様。どうされたのですか?」
「げっ、ポーク! お茶入れるの早いよ!!」
「粗茶ですから。……それよりも、どうしてあなたがここにいるのですか? おとなしくするようにと言っていたはずですが」
「私にそれができないこと、わかってるクセに……マジで性格悪い」
「全てはククルス様のためでございます」
「……どうせ、どうせパパのためでしょ」
「ともかく、あなたにはおとなしく反省していただかないとなりません」
「……この豚肉!!!」
「その通りでございます」
クックはぐうの音も出ないまま、元いた部屋に引っ込んでいった。
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