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第23話 これから

【前回のあらすじ】クック、どんまい。

「ギリギリギリギイギリギリギギギリギギリイギ・・・・・・」



 完膚なきまでに負かされた悔しさからか、クックは高速で歯ぎしっている。つーか、もう上手く歯ぎしれていないような……。


 甲高い音が脳に嫌な感じで響いてきて不快以外の何物でもない。


 そんなギシギシとした雰囲気(実際ギシギシ言ってんだけどね)に門番さんも参ったのか、絶妙なフォローを入れることにしたようで……。



「……ククルス様、そろそろご機嫌を直していただけますか? 拘束すると言ってしまえば言葉は悪く聞こえるかもしれませんが……決して悪いようにはしませんから」


「……」


「……少しの辛抱ですから。……もしよろしければ、今回の家出旅の話でも聞かせてはいただけませんか? お茶を入れますから……粗茶ですが」


「家出じゃないのに……社会見学なのに……」



 おい、さっきはキャンプって言ってただろ。変わってるけどいいのか?


 ……確かにクックは間違ってるし、門番さんはド正論を言ってる。コテンパンだ。


 でも……拘束するってのは、俺としても避けたいんだよな。


 クックがいくら金魚の糞と言えども、今離れられたら困る。


 俺はこの町について無知だし……クックの活用の余地はまだまだあるのだ。


 ……ちょっと助けてやろうか。



「……なぁなぁ門番さん、話に割り込むようで悪いんだけどいい?」


「えぇ、何でしょうか? それと私のことはポークで構いませんよ」


「そっか……じゃあポークさん」


「はい、ご用件を伺いましょう」


「さっきさ、クックにはここで待ってもらうって言っただろ?」


「はい、確かに」


「それだ、俺としてもそれってちょっと困るんだけど」


「……僭越ながら、そうおっしゃる理由を伺ってもよろしいですか?」


「実は俺さ、町には用事があって来てるんだよ。こいつがいないと目的地もわからないんだ」



 ……こんな馬鹿でも、俺が持ってる唯一の駒なんだ。手放すわけには……。



「左様でございましたか。そういうことであれば、当家がタマキ殿のサポートを致します」



 この人、万能だなぁ……。対応が完璧……。



「……うーん、その用事がさ、クックの友達のところに行くってことなんだ。……だから、少しの間だけこいつを貸してもらえないかな?」


「ちょ……、私をモノみたいに扱うな!」



 面倒くさいから無視無視……。



「……なるほど、事情は理解しました。しかし……大変申し訳ないのですが、こちらとしてはククルス様の貸与は致しかねます」


「おい! モノみたいに扱うなって言ってんだろうが!!」


「恥ずかしい話ではありますが、私は命に逆らうほどの器量と度胸を持ち合わせておりませんので……」



 うわー、ナチュラルにガン無視してるよ……。モノどころか、空気扱いじゃん。



「それに、ククルス様のお友達ということであれば、私にも心当たりがございます」



 ……おっ。



「マジですか!」


「マジでございます。というのも、クック様のお友達と呼べる人物となると……一人だけですし……」


「おい、勝手に決めつけてんじゃねぇよ! いるから! 友達ちゃんといっぱいいるからぁ!!」



 ……それはむしろ、友達いない人間のセリフだと思うけど……。



「……ですから、そのお友達の方には当家から話を通しておくということで納得していただけないでしょうか?」



 ……全然悪くない。つーか、そこまで言われて……納得しないわけがない。


 言うならば、クックを手放して、ポークというとても役に立つコネクションを手に入れたというわけだ……わらしべ長者の道を爆進してると思うのは俺だけだろうか?



「……わかった、それでいいy……」


「ね~え!!!!!」



 これから交換されるという儚い結末が待っている馬鹿が、一段と大きな声で吠えた。


 ……少しいじめ過ぎたかな? かなり怒気の強まった荒々しい声だ。



「……もうちょっと粘ってよ! そこはもっと『クックじゃないとダメなんだ!』とか言って欲しかったんですけど!!」



 ……怒るポイント、そこかよ。



「残念ながらお前の思い通りのラブコメ展開にはならねぇよ。家に帰ってミルクでもペロペロしながら自分の行いを反省しろ」


「……この意気地なし! 私が反省すべきことなんて一つもないっての! あと牛乳嫌い!」



 ……反省すべきことばっかだよ! 逆に反省すべきことしかないまである。



「好きな飲み物でいいよ。俺の名誉のために言っておくけど、意気地がないんじゃなくて、無益な争いを起こしたくねぇだけだ。これ絶対争ったらめんどくせぇ案件じゃん、お前のお家の問題絶対関わりたくねぇわ」


「面倒なことに甲斐甲斐しくお節介を焼いていくのが主人公の役回りじゃないの?」


「悪いな、俺はその手のテンプレ主人公に囚われるつもりはない。そんなの面白くも何ともないだろ。あと、これ以上メタ発言したら今後のお前の出演は保証しないぞ」


「……もう! タマキの馬鹿! どこへでも行っちゃえ!」


「だから馬鹿はお前だっつーの。それに、行くのはお前の友達のとこだよ?」


「……そっか。そうだったね」



 急に冷静になるなよ……いや、俺は最初から冷静だけれども。



「ま、用事終わったら迎えに行くから」



 こいつん家知らないけど。



「あのー、お話は終わりましたか?」


「はい、ポークさんの提案に乗ることにします」


「ちょっ……」


「ご理解いただきありがとうございます。……それでは、ククルス様はこちらでお待ちください。すぐにお茶をお持ちいたしますので……粗茶ですが。タマキ様は……こちらで詳しい話をお聞かせ願えますか?」



 そう言いながら、ポークは隣の部屋へと案内してくれた。

連載再開して、五日……とっても面白おかしく書いています。

来週も頑張ろう。お付き合いをよろしくです。

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