第17話 食後のアフタートーク
【前回のあらすじ】お残したら……わかってるな……。
鍋いっぱいのスープを完食した後……ぐふっ、たっぷたぷ。
「……ほんとにタマキは容赦ないといかどうしようもないというか愚かというか……クズだよねー。もう一つの『属性』がめっさ強かったらどうするんだろうね。手首どころか腕ごとねじ切れて失血で死ぬんじゃないのかな? てかそーなればいいのに。うん、それがいいよ」
「おい、全部もれなく聞いてるぞ。隣に座ってるんだからな。ふざけんじゃねぇ」
俺の腕がねじ切れるだけで済むなら、どうかとても強い『属性』であってほしい。
こいつが万が一……百歩譲って僧侶であるならば、回復魔法使ってくれれば問題ないし。
しかし聞こえていないのか、お構いなしなのか、愚痴は止まらない。
「……君が来てから散々だよ。問題は起こすわー口は悪いわー……ヒクッ。どうなってんのさー……ヒクッ」
「つーか、お前……いつの間にできあがっちゃってんだよ」
「キノコで作ったお酒だよ、あとつまみも。……タマキも一杯ひっかける? ……ヒクッ」
「俺は未成年だから飲めない」
「えー、飲めないの……つまんないなぁ、情けないなぁ、馬鹿だなぁ……ヒクッ」
クックは、すっかり酔いが回っている。
いつもおかしいやつだから、酒が入ったところで大きな変化は見られない。
強いて言うなら……ちょっと素直に、性格悪い部分が発現の節々から棘のように飛び出ている。
自分の愚痴を聞かされ続けるのも嫌なので、自分から話題を振ることにした。
「ところでさ、『属性』ってのはみんな二つまで持てるんだろ? 俺もなんか付けたいんだけど」
「ヒクッ……好きにしたら」
「おい、急に投げやりになるなよ」
「だってー……面倒くさいし、ヒクッ……そういうのは勝手にやってもらいたいね」
だったら、最初から余計な新知識を吹き込むなよな!
「それに……そんなのに頼らなくたって、君は十分強いじゃないか……ヒクッ。強化イベントは、もうちょい強敵が出てきてからでいいんじゃない?」
「強化イベントとか軽々しく使うな! それに、自然以上の強敵が出てくるとでも?」
「……ヒクッ、バトルものとしてはそれが常識っていうか正常な流れじゃない?」
……こいつはそのようなものを読んだことがあるのだろうか?
それに、この小説バトルものじゃないし……がっつりラブコメだし。
「はぁ……『適正』ってどうやったらわかるんだ?」
「ヒクッ……今までの流れガン無視したね……まぁ、答えてあげるよ。……そーだねぇ、『適正』は『鑑定属性』を付与するモノクルってのがあって、それで鑑定をするんだ。
……ふむふむ。
「町に行くと鑑定士がいるからそこに行くのが一般的かなー……ヒクッ。値段は……ヒクッ、かなり法外だけどね」
ヒクヒクうるせぇ……。
「鑑定士か……。金かかるんだなー」
「そうだね……ヒクッ。『鑑定士』をやっているのは、ほとんどがお金持ちの商人か貴族なんだ……ヒクッ。アイテムさえ所有してればできる仕事だから、ヒクッ……まぁ、そこまで儲かるような仕事じゃないけどね」
「ん? 値段が高いのに儲からないのか?」
「君は酔った私より頭回んないのね……ヒクッ。高いんだから、庶民に手が出せるわけないじゃん。それにヒクッ、アイテム自体も高価格だからね……大体コレクターやトレーダー相手の商売だよ」
「なるほどな……要するに金持ちの道楽ってことか」
「その通り、ヒクッ……小遣い稼ぎだね」
「そうか。……ついでに、一般的じゃない方法も聞いといていいか?」
「クズ共から奪う。タマキにはおすすめだね。……ヒクッ」
……やっぱり聞くんじゃなかった。
「あのな、俺を賊か何かと勘違いしてないか? こちとら法治国家の下でこれといった問題も起こさず18年生きてきてんだよ。それは方法とはいわねぇよ」
「ほーちこっか? それが何か知んないけどさー……ヒクッ、今さら常識人ぶったって聞こえないなぁー……ヒクッ。そんなの私のコウゴウシイタケ食べたことに比べたらかわいいもんだよ」
「まだ根に持ってんのか。いい加減にしろよな」
「持つよ! あれさえ売れさえすれば……ヒクッ、鑑定代もアイテム買うお金もも出してあげたかもしれないのになぁ……ヒクッ」
「全部私のものとか言ってなかった?」
「私のものにした上で、君に施してあげるって言ってるんだよ……ヒクッ」
「生意気だな。今のお前は、俺に何の施しもできないくせに」
「……むかぁ! ……ヒクッ、そんなに施して欲しいなら……童貞くらいなら卒業させてあげるよ」
「お断りする」
「だったら……施しようがないじゃないか……ヒクッ」
他の手段は思いつかないのかなぁ……?
「その考え方危険だからやめろよ、簡単に体を売るとか言うなよな……」
「……私だって、誰彼構わず誘ったりしないよ……ヒクッ、恥ずかしいのに」
ん?
「それは……誰彼構わず誘ってるやつの常套句な気が……」
「……私の目を見て」
……その瞳は宝石のように透き通り、目尻はトロンと垂れ下がっている。
酒が本格的に回ってきたのか、目の焦点は合っておらず、心なしか体が誘うようにゆらゆらしている。
……これが、エロスか……。
「タマキはぁ……ヒクッ、私とシたくなぃ?」
……俺はどうせ踊らされてるんだろうな。
女……メスってみんなこういうものなのかな?
抗えない魔力というか、見えない何か……パワーが作用し……俺の頭が本能のままに肯定の意を示しt……。
「冗談だよ! ヒクッ……ちょっとはドキッとした?」
「……やっぱお前死ね」
あー、もう……ふざけんな! そして俺の馬鹿野郎!!
今日誕生日だ。あんまり嬉しいものじゃないけど笑





