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第16話 汁の肴

【前回のあらすじ】謎の女の子……でも今は、この瞬間を楽しんで。

 ……キッチンは、小屋の外にあり、雨風吹きっ晒しで衛生もクソもない。


 しかし、不思議と嫌な感じはしない……こういう外ご飯というのは、少々味が良くなかったって多少石が入っていたって大抵うまいものだ。


 初キャンしに来たクソガキみたいに心躍っていると、食材を両手に抱えたクックが戻ってきてた。


 食材を取りに行くついでに、エプロンを着てきたようで……って、あれがない。


 トレードマークのあれが……猫耳が!


 ついに、自分のアイデンティティまでかなぐり捨てたのか?



「食材取りに行ってきたよー……ってどうしたの? そんなに目をぱちくりさせて」


「……いや、お前……ないじゃん」


「ない……何か足りない食材でもあったかな?」


「いや、猫耳……」


「猫耳? あぁー猫耳ね。あれなら外してきたよ」


「は、外す……?」


「そうだよ。あれ、猫耳カチューシャだからね」



 ……今さらかよ!



 ―――――



 料理シーンは、想像で補って欲しいのだが……とても見せられるものではないのだということを察して欲しい。


 クックの料理は繊細さの欠片もない、グロテスクでアクロバティックなものだった。


 曰く、『料理は口に入れたら一緒、おいしければそれでいいの!』……どうか改名してくれ。


 名が体を表さない娘が作った料理ならざる何かは、良く言えばシチューみたいに少しドロッとしたスープ状のものだった。


 いや、色は透明で白っぽくもないから、餡という表現の方が近いかも。


 それをすすりながら、俺の半生についての話をしてやると……クックは事あるごとに近所迷惑苦情レベルの笑い声を夜空に響かせた。


 あ、スープは普通にうまいよ。



「あははははっ、やっぱ君はおもしろいなぁ」


「そうか? ま、楽しんでもらえたなら何よりだ」


「うん、楽しかった!」



 ここだけ切り取れば、元気っ子系美少女なんだけど……もったいない。



「そういえば、君には『属性』についてまだ話してなかったね」


「『属性』?」



 唐突だな。



「そう。人はみんな二つまで『属性』を持つことができるんだ。基本はアイテムによって自由にカスタムするんだけど」


「つまり猫耳がそのアイテムってことか」


「ご名答! 猫耳をつけると、『猫属性』が手に入るんだ。『猫属性』は文字通り猫の力を手に入れることができるんだよ』


『例えば?』


『探索能力や危機察知能力が上がったり、猫じゃらしに目がなくなって掌に肉球が発現したりとか……あと、とりあえず何でも口にしたりする効果があるよ。いいでしょ」


「最後のとかはともかく肉球には少し興味が……。あ、ゴホン……で、もう一つの『属性』は?」


「うん、あるよ。……でも私の場合はちょっち特殊でね』


『特殊?』


『そうなの。なぜかもう一つの『属性』は取り外しができないんだ』


『ふむ』


『それにね、それがどんなアイテムなのか、どんな効果があるのかも知らない』


『ほぉほぉ』


『つまり、私がアイテムによって獲得できる『属性』は一つだけってことなんだよ」


「まとめると、自由にカスタムできるストックが一つ埋まったまんまの状態ということか。それにもう一つの『属性』は見当もつかないと」


「その通りだよ」


「……お前もしかして落ちこぼれなんじゃねぇの?」


「うるさいよ! 落ちこぼれっていった方が下等で下劣で醜悪なゴミなんだからね」


「辛辣じゃね? ……生きづらいだろ」


「それは否定しない……。このエプロンは『新妻属性』を獲得できるものなんだ。簡単にまとめると、花嫁修業修了並みの料理ができるようになるんだけど……。これを付けるためにわざわざ猫耳を外さなくちゃいけないからね」


「つまり、そのエプロン付けないと料理できないってことだろ?」


「……」



 やはり俺の人を見る目に狂いはなかったようだ。



「お前、なんか残念だよな……」


「その憐みの目はやめてもらえないかな。あのね、君が思っているほど料理の素養がないとは限らないんだよ。『属性』にはちゃんと『適正』ってものがあるから、カスタムできるからって何でもかんでも装備できるわけじゃないんだよ。だからいつかは、私もアイテムなしで料理ができるようになる希望があるってことさ!」


「そんなに料理がしたいなら、『新妻属性』なんてわかりづらい『属性』つけなくても、もっと端的に料理ができるアイテムとかなかったのか? 『料理人属性』がつくコック帽とかそんな感じのアイテムとかさー」


「……料理系のアイテムはいろいろ試したけど……これしか装備できなかったの……」



 なるほど、料理ができる効果というのはあくまでオプションみたいなものに過ぎないのだろう。


 こいつが『新妻属性』を装備することができた……いや、それしか装備できなかった理由は……つまりそういうことだ。



「お前、やっぱり残念だよな……」



 なんだか本気でいたたまれなくなってきた。



「……タマキの馬鹿! 歯に衣着せぬ!!」



 さらに憐みの視線を強めると、クックが涙目になりながら肩辺りをポカポカしてきた。


 ……そのいじらしさはとても新妻っぽくていいぞ。

クックのもう一つの『属性』は内緒。

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