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第14話 ご褒美になるかどうかは君の猛る想像力次第

【前回のあらすじ】クックって意外と多才よ?

「タマキ、正直な私のお気持ちを表明してもいいかな?」



 ……森の中にしては綺麗に整備された、クックが掘り当てたらしい温泉に向かう道のりを歩いている途中……珍しくクックが真剣な面持ちをして言葉を紡いだ。



「ん、何?」


「タマキ、超汗臭い」


「……馬~鹿」



 はぁ、真面目に聞いて損した。


 こういうやつだってわかってるのにな……。



「絶対身体洗うんだよ。温泉にもちゃんと浸かるんだよ、臭いから」


「言われなくてもそうしますけど。つか、俺が温泉に何しに行くと思ってんだよ」


「覗きとか盗撮とか覗きとか」



 ……とりあえず俺が覗くのは確実なんだな。



「俺がそんなことすると思ってんのか? この数日の中で、お前の風呂を覗いたことがあったか?」


「君は見た目に反して知能犯だからね。油断した頃に絶対やってくると思ったから、釘を刺しておくんだ」



 もう褒められてんのか貶されてんのかよくわからんぞ……。



「お前みたいな貧相な身体、覗く価値を見出せない」


「はぁ⁉ 失礼なガキ!」


「失礼なのはどっちだよ。汗臭いっていうお気持ちはな、普通そう感じても心の中にしまっておくもんなんだよ。……それにな、お前も大分汗臭いと思うぞ」


「言った! 言ったそばから言ったよ! 心にしまっておくべきお気持ち表明しちゃったよ!」



 ―――――



「よっし、着いたー!」


「……おぉ、すげぇ」



 ……俺の眼前には、想像以上のちゃんとした温泉が広がっていた。


 円形の広々とした温泉。


 それを半月型に分かつように木製のついたてが突き刺さり、それに隣接して流し場がある。


 クックによると、右側が女性用、左側が混浴用とで分けているらしい。


 脱衣所は、温泉の左右手前にそれぞれ簡素な小屋が用意されている。


 とりあえず、覗けないことはなさそうだ。


 むしろ超イージー。



「タマキは左ね……あ、タオルと石鹸と……あとは、着替えね」



 クックってなかなかに甲斐甲斐しいんよな。


 いいママになりそう。


 色んな意味でモンペアになりそうだが。



「おっけ、サンキュ……ってこの着替え、サイズ大丈夫か?」


「あ、問題ないと思うよ。それ、下穿かなくていいように大きく作ってあるから」


「……お前、ノーパンで過ごしてんの?」


「これだから童貞は。下のパジャマだよ! 普通に考えたらそうでしょ⁉」



 普通に考えたら、下穿かないって……そういうことじゃない?



「ごめんな、勘違いしたみたいだ。……お前が痴女なのが悪いんだぞ」


「痴女じゃないし!」


「……こっち覗いてくんなよ」


「だから痴女じゃないし!! もう知らない! ふんっ!」



 クックの大げさな足音を聞きながら、俺は左側の小屋に入った。


 内装も外装と変わらず簡素で、木製のロッカーが置いてあるだけで……当然ながら利用者は俺一人である。


 俺は左端の穴に持参物を置いて、汗がたっぷり染みて少しずっしりとしたユニフォームを脱ぐ。


 はぁ、ユニフォームも何日か着てたからな……ありえないよ本当。


 ま、いいか……やっとゆっくり湯船に浸かれるし。


 はやる気持ちそのままに服を全部脱いで適当な穴に突っ込み、必要なものを片手で抱え、残った手で温泉へと繋がるドアを開ける。



 ガチャ。



 ――と、幻想的な湯けむりが俺の視界を出迎える。


 見惚れそうになるが、寒さが俺を現実に引き戻してきやがる。


 俺は身体を流すために、流し場に向かい、蛇口を捻る。


 未だにわからないのが、この異世界がどの文明にあたるのかということだが、考えても仕方ないのだろうな。


 ……温かい。


 タオルで流れ出続けるお湯を迎えに行き、石鹸を擦り……身体になじませていく。


 ゴシゴシとここ数日で付いた垢を根っこから削いでいく感覚。


 ぶっちゃけそれだけでだいぶ満足してる。


 温泉にでも入れば、きっと天にも昇る気持ちになるのではないだろうか。


 上からお湯を被って、身体に残った泡を洗い流し……待望の温泉に浸かる。


 お湯はピンク色でロマンチック……身体にいい成分がガンガン染み込んでくる。


 …………ふぅ、控えめに言って天にも昇りそうだ。


 温度も……深さも……ちょうどいい。


 ……ふへぇ……温かさに包まれて変な声が出てしまいそうだ。


 このまま寝て……。



 ガチャ! ……バンッ!



 ……って、うるせぇなぁ! 雰囲気!



「ふぃ~。タピオカミルクティーは何味かなぁ♪ それはねそれはねそーれはね、なんとびっくりイワシの肝味♪~~~」



 ……おっさんかよ。


 つーか、タピオカミルクティーがどうやったらイワシの肝味になるの? 


 そもそもミルクティーって言ってるのに、ミルクティーの味じゃなきゃ何だって言うんだよ。


 味変最大の秘密は、クックの馬鹿舌だろうな。


 ……それにしても、薄い板を一つ隔てたところで曲がりなりにも女の子が入浴してるなんて……改めて考えると、何か複雑だ。



 ……ぴちゃぴちゃ、ぴちゃ……ちゃぷ……。



 あいつの歩く音だったりが、敏感に聞こえて……そそられる。


 ……あいつは見てくれだけは文句なしの美少女だから尚更。見てくれだけは。


 ……背中越しの感触がよみがえって……あの柔らかな肢体が、一つ壁を挟んだ先で、無防備にもあらわになってんだよな?


 さっきは『貧相な身体』とか強がって言っちゃったけど……ダメだ、嫌でも想像しちまう!


 俺があんなアホに欲情させられるなんて――。



「ごしごしごしごしごっしごし~、君のハートもごっしごし~、あの日の誓いもごっしごし~、全部ぜーんぶごっしごし~……」



 ……口を開かなければなぁ。


 やっぱり、お前をそういう目で見るのは……ちょっと無理だわ。



 ―――――



「ターマキ~、気持ちいいかい~?」


「うん~、気持ちいいよ~」


「君~、今一つ壁を隔てて女の子と入浴してるんだよ~。しかも超美少女とだよ~! 想像はかどってるでしょ~?」


「ごめんな~、そのフェーズはもう終わった~。お前じゃ無理だった~」


「はぁ~⁉ 本当についてんの~? 本当は密かにおっ勃ててるんじゃないの~?」


「温泉気持ちよすぎて~、超萎えてんよ~。それとな~、女の子なら~おっ勃てるとか言うなよな~」


「……悔しい~! 温泉なんかに負けるなんて~」


「悔しかったら~、こっちまで来てみろよ~。一応混浴だぞ~」


「嫌だよ~! そんなことしたら~、君の思うつぼじゃないか~!」


「だったら~、おとなしくしとけ~」


 ……。


 …………。


 ………………脳から、身体からの休息を求める信号を抗うことなく受け取り、蕩けていく……。



 ―――――



 …….。o○.。o○.。o○.。o○…………むぐっ。



「ぐばぁ! ぶへぇ! ごほっ……」



 大きく入ってきた水の勢いに驚かされ、それに感化されたように体が溺れまいと反射的に作動する。


 どうやら眠ってしまって……疲れてたんだな俺も。



「……ねぇ、大丈夫?」



 ……んっ?

【ありがとうございました】

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