七章〜扉を開けたその先に…〜
Rの門をくぐると初めて【holy fort】の中を見ることとなった。
入った瞬間、目に飛び込んできたのは大きなシャンデリア。次に見たのはいかにもフワフワしてそうな豪華なソファー。そこまで来て初めてそこに座っている人達を捉えた。英国風の部屋の中に華やかな美男美女が座っている。
「やっと目に入ったか。このイケメンな僕をスルーするなんて椿さん以来で久しぶりだ。中々興味をそそるなぁ。」
「このナルシストが。いきなりアピールをする馬鹿がどこにいるんですか。」
「ここにいるじゃない。もう、飽き飽きするわ。あと、さりげなく私の事いうの言うのやめて、榊原。」
「ハーイ!」
「初めまして、新入生ちゃん!『クリスタル嬢』も喜んでるよ。」
「………。」
「♪〜。みんな、2人が困っちゃってるよ。自己紹介して。」
「はーい!西園寺さん!」
何だ、ここは。みんなキャラ濃すぎ。ハルのテンションがまだマシに見えてくる。西園寺というハープを持った着物の人がどうやら仕切っているようだ。
「まずこのイケメンな僕から。」
最初に紹介をし始めたのはナルシスト感全開で、髪をガチガチにヘアワックスで固めた男子。
「榊原大翔。水を操ることができるんだ。能力名は『Water Magician』そんな事はどうでもよくて、最近眉毛細くしたの分かる?椿さん?」
「うっさいわねぇ。知らないわよ、そんなこと。あんたの事なんか目に入らないわ。」
なんなんだ。隣にいる女性にひたすらアピールしているがまともに答えてもらえてない。しかも自慢する所、そこ?もっと違う所を自慢すればいいのに。
「榊原、学年も言いなさいよ。アタシは雅椿。高1。能力ネームは『Soul Paint』。この紅い傘を使って絵を描いて、その絵に魂を入れる能力を持ってるの。ちなみにそこでカッコつけてる奴は中3よ。ウザいったらありゃしない。」
手に真っ赤な唐傘を握り、髪をストレートに下ろしている。背も高め。私にしたら羨ましすぎるぐらいのスタイルとかっこ良さ。性格もこの人の方が私には合いそう。しょっちゅう榊原さんに近づいて来られるのは可哀想かな。椿さんがカッコイイのは分かるけど。
ちなみに能力ネームとは『ROYAL』に入ったときに国から与えられる能力の名前のことである。
「本当に馬鹿ですねぇ。何処がかっこいいんですか。あぁ失礼。私の名前は氷川瑞稀。高1。能力ネームは『Life Reaper』。先に言っときますが、左目の片眼鏡、取らないでくださいね。取ったが最後、全てそのものの核だけにしてしまいますから。」
核だけ⁉︎それって人間だったら心臓だけ残るってこと⁉︎それともなんか石みたいな物体になるってこと⁉︎どっちにしても1番怖い。チェーンを付けたその片眼鏡にどれくらいの魔法がかけられているんだろう?
そこまで考えてふとある事に気付いた。
そういえばハルって怖いの苦手だったはず。急いでハルの方へ振り向いた。ハルは直立したまま白目を向いて気絶していた。ハル、ゴメン。忘れてた。
「その子、気絶しとるん?ソファーに寝かせてあげなあかんなぁ。『ユニコーン』!」
1番小さい女の子は叫んだ。すると奥から綺麗な白い毛並みのユニコーンが。でもどこか異様だった。それは『ぬいぐるみ』だった。ぬいぐるみが自分で歩いている。そしてハルを乗せ、ソファーの上に下ろした。
「アンタも座ったら?まだ2人残ってるし、アンタらの紹介もまだだし。」
椿が優しく促してくれた。遠慮なくハルの近くでソファーに座らせてもらうと思った通りフワフワだった。
「勝手にぬいぐるみが動いてる…?」
夜桜は思っていた事を口に出してみた。
「…アレは「ドール先輩」の魔法だよ。」
さっきまで静かにしていた希が答えた。「ドール先輩」とはあの小さなツインテールの少女のことを指しているのだろうか。
「みんなはmeのことを「ドール先輩」と呼んでるよ。何故ならmeは相手を人形にしたり人形に命を吹き込んだりするからなんだ。meの名前は朝霧キャサリン。高1だよ。能力名は『Doll Mother』」
いやいや、怖すぎ。人も妖怪もなんでも人形に出来て操れるってことでしょ。なら、今さっきのユニコーンも…。
「秘密だよ。誰かは♡。」
ちょー怖い!高1に怖い人おりすぎでしょ。確か先生も言ってたっけ。何年かに一度、生命を操る系の能力を持った人が大量発生するという現象が起きる。今の在学生では『魔の9413回生』に注意って。9413回生って今の高1。使える術がみんな恐怖すぎるって!ココって安全な場所?大丈夫?夜桜が1人頭を抱えていると最後の1人が自己紹介をはじめた。
「僕はみんなほど凄くはない。ただハープを奏でて物の動きを止めたり、記憶を消したり、人の心を読んだりするだけさ。大したことじゃない。西園寺奏人。高3。能力名は『Harp's Devil』」
なんなのこの人達。ヤバすぎる。西園寺さんって人、そんな優しそうな顔をしてるのに言ってること無茶苦茶!流石ボス的存在っていうのは分かるけど、凄いを通り越してヤバイだよ。最初の人が全然大したことない様に思える。こんなところに私が入っていいのか?たかが1人の大物悪霊を2人(プラス2匹)で倒しただけで入る権利をもらっていいのか。ちなみに安全な組織だよね…?
「貴女は?」
みんな一斉にこちらを見る。
「わ、私は…」
「椿さん、どっちの方がいいと思う?このまま?それとも長髪?」
「アンタは入ってこなくていい!」
榊原に椿が一喝した。
「静かにしてないと、この眼鏡、あなたの方を向いて外しますよ。」
さらに氷川が眼鏡に手をかけながらトドメの一撃。榊原はすくみ上がり小さくなって黙った。
2人のあまりの早業にちょっと笑ってしまいそうだった。気持ちが今のでほぐれたかも。
「私は橘夜桜。中1です。召喚術師です。あと、白狐と赤狐を使役しているだけです。宜しくお願いします。」
「召喚か。新しくていいね。専門とかあるの?」
「実は神様しか簡単に呼べないんです。他も試してみたんですけど…。ごめんなさい。」
夜桜が告白すると10秒ほどの沈黙。その後、
「「「「「えー!!!」」」」
そんなにダメダメ?なんか本当にすみません。
「なにそのステキな能力!【クリスタル嬢】もビックリだよ!」
「君って凄いんだね!」
キャサリンと榊原が絶賛した。みんな笑顔?怒ってない?どういう事?
「なかなかいないんですよ、神を召喚する人って。僕も驚きましたよ。じゃあ、そこの彼女は?」
「ハルー!起きて!」
ハルはいつもこうでもしないと起きないのです。案の定、ハルは飛び起きた。
「何?どうなったの?自己紹介?」
ハルが混乱している。このままでは嫌な予感しかしない。これはまずい。
「はりきって自己紹介!」
「はい!」
慌てているときは大声で話しかけることが彼女の対処法だ。
「まず、名前!」
「佐藤遥!」
「学年!」
「中1!」
「能力!」
「「ヒール」!」
「一言!」
「好きな食べものはトマトです!宜しくお願いします!」
うーん、トマトは要らなかったかな。変な奴だと思われたよ、多分。しっかり目が覚めてなかったか。
「ありがとう、夜桜。目が覚めたわ。」
少々叫び足りなかったかな。
「アハハッ!最高すぎん、このコンビ。綾武(綾華・武尊)コンビとは違って面白い!アタシ気に入った!」
「キャハハハッ、meも!」
ちょっとよく分からないけど、なんか意外と良い反応…?
「♪〜。皆さんこの2人、『ROYAL』に入れてもいいですか?」
皆さんの判断は…?
「「「「はい!」」」」
「ではこの《Rの紋章》を贈呈します。」
「「ありがとうございます!」」
良かった。認めてもらえて。
ハルの挨拶には相当ヒヤヒヤしたけど。
受け入れてもらえたことに夜桜は安堵し、ホッと溜めていた息を漏らした。
「ROYAL」。なかなか個性的なメンバーです。皆さんは誰が好きですか?コメントもどんどん送ってください!
そしてこの人達はこれからどうなるのか?
次の投稿をお楽しみに!




