六章〜招待〜
「ところで夜桜。『ROYAL』の会合が今日あるから来ない?」
綾華が話しかけてきた。ランク持ちだけの組合がこの学校にはある。
通称『ROYAL』。
国から認められた存在ゆえに入ることのできる優秀な組合だ。
『ROYAL』のメンバーになる為には、まず今『ROYAL』にいるメンバーに認めてもらわなければならない。ちなみに『ROYAL』に入ると学校から《Rの紋章》が与えられる。誘われて入らない人はなかなかいないのでランク持ちは《Rの紋章》を大体つけている。その《Rの紋章》は一回会合に参加しなければ受け取る事すら出来ない。
「行く!何時から?」
「うちも行っていい?一応ランク持ちやから。」
「別にいいよ。じゃあ連絡しておくよ。希も行くし。じゃあ、昼休みに職員室前集合。」
「分かったー!」
ちなみに希とは私の親友、坪田希である。
彼女は陰陽師で得意なのは占術だ。その能力は桁違いに当たる。日本で一二を争う術者だ。だが極度の人見知りのため、あまり自発的ではないので仕事は国や学校から頼まれたことしかしない。でも優秀なのは確かなのでたくさんの依頼が来る。
だから毎日、学校の彼女専用に作られた隠し部屋にこもりっきりだ。いろんな人の人生や世の中の傾向などを占い続けている。出てくるのは登下校、先生の呼び出し、そしてこの『ROYAL』だけなのだ。たまに話をしに行ったらいっつも忙しそうだけど今日はゆっくり話す時間あるかも。
「希が出てくるのか。楽しみだな。」
「疾風、希は見せ物じゃないよ。もう。可愛らしいのは分かるけど。夜桜も酷いと思わない?」
希は可愛いので人ではない妖にも好かれやすく出てくると喜ばれるのだ。そしてちゃっかり入ってきた火影だが前回よく活躍したので謹慎を解いたのだ。また何かあったら大変だから(色んな意味で)。
そういうわけで疾風も火影も付いていきたいみたいです。
昼休み。職員室前で待っていた。
「夜桜、遥、待ったー?」
綾華が職員室前に到着した。希も一緒だ。
「希、久しぶりだな。」
「ホントだよ。僕なんか何年ぶりかの再会だよ。」
疾風と火影が早速、私達に見向きもせず希に話しかけている。結局人間も妖も男というもんは可愛い子に対して考えることが一緒だな。全く。
「疾風、火影、下がって。希が嫌がってる。」
私が両手を後ろに勢いよく振ると疾風と火影は吹っ飛ばされた。
「夜桜吹っ飛ばしすぎじゃない?2人ともかわいそうよ。希もそう思わない?」
綾華は夜桜が勢いよくふっ飛ばして2匹が壁にドーンと大きな音でぶつかったのを聞き、気の毒そうにつぶやいた。
「まぁ、確かに。でも助かったよ。ありがとう。…びっくりした。」
「別にいいよ。一応2人の主人だし、2人も近づきすぎだったから。」
人見知りの希に久しぶりに会った疾風と火影が近づくとびっくりするのは当然だ。疾風も火影もそこは考えてほしい。全く。
「さあ、そろそろ時間だし、行きますか。」
綾華はポケットに入れていた《Rの紋章》を取り出し職員室の向かいにある【holy fort】と呼ばれている部屋の壁に引っ付けた。そして大きく筆記体の『R』を書いた。するとそのRが輝き、扉になった。
「うわぁ、スゴイ!コレって誰先生の魔法?」
この学校は大体、先生の魔法で動いている。
それはトラップや仕掛けも同様だ。学校の入り口のウサギなどの魔法は防衛魔法の魔術師、浅沼先生だ。雪女先生は全ての食堂の冷蔵庫の温度調整と各教室のエアコンの冷房の管理を受け持っている。だから毎回エアコンの風は夏、異様に涼しいのだ。(本人は死にそうになっているが。)
「この仕掛け、誰先生の魔法っていう以前に先生の魔法じゃないよ。」
「これは『ROYAL』を作った月神紅魔さんよ。」
月神紅魔。この学校初のランク『R』を持ち、国にも認められた逸材といわれている。あらゆる魔術と、話術を使い相手を惑わし、最後はその「紅魔」の名の通りに真っ赤なドラゴンを操ってトドメを刺す。彼が活動するのは必ず月が出てきた頃。そして華やかに事を済ませ月が沈むと同時に消えることから「月の君」とも呼ばれる。
今現在どこにいるかは分からない。どの人から聞いてもただ恐ろしい人という印象を受ける。そんな人がこの仕掛けを作ったのなら、中にも色々ありそう。
「さあ、入るよ。」
綾華の言葉に私とハルの体がこわばる。意を決して2人はその扉へ飛び込んだ。




