二章〜学校にて〜
程なくして、芙梓水稲荷神社の隣のビルの前に到着した。
そして私とハルは生徒証を取り出し、その壁につけた。そこからドアが描き出される。
そのドアの隣には小さな窓がついていて、そこから黒ウサギが顔を出している。その黒ウサギに向かって左目を覆い、右目だけ見せる。黒ウサギは夜桜達を少しの間見た。この間夜桜達は瞬きしてはならない。してしまうと自分に身の危険が迫るらしい。ウサギはじっくり夜桜達を見た後、窓から消えた。するとガチャッと鍵が開く音がした。もう一度黒ウサギは戻ってきてお辞儀をした。
「入れ」の合図だ。
そのドアを開けるとそこには沢山の人や妖怪、生き物が。
この私が通っている中学校は普通の学校ではない。
その名もラシーナ学園。
中学、高校、大学まである。入校時は生徒証を使い、あの儀式を絶対にしなければならない。間違ってこの学校の生徒や先生以外が入ってしまうと大変なことになってしまうからだ(主に記憶を消さなければならない)。
この学校の生徒はみんな何かしらの能力があったり妖を使役している。私は召喚術師として、遥は「ヒール」(傷を癒す能力を持つ人)として登録されている。私とハルは同じクラスのBクラス。クラスメイトには同じ妖狐を使役する人や、大蛇と話し使役する人、陰陽師もいるこの教室。
そのクラス長は火の鳥を使役し、赤い目を持つ黒鬼武尊と完全位置把握能力を持つ古兎綾華だ。ちなみに古兎綾華は夜桜の親友である。この2人は桁違いに成績が良い。
この学校の成績はいかに自分の能力や妖を使い、結果を出したかだ。レポートにまとめて提出し、そのレポートの評価で優劣が決まるのだ。
このクラス長達はいつも2人で行動していて、綾華が騒ぎを起こしている妖などを見つけ、大きさ、強さ、対戦の時の相性などを確認し、武尊が火の鳥を使って撲滅をする。その実力は今の私たちの学年で1番ある2人と言っても過言ではない。
ちなみに私はそんなに成績は良くない。主に疾風を使って、風を起こしゴミを集めたりして、街のボランティアを手伝ったりしているだけだからだ。
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教室に入るともう綾華はいた。
「綾華、宿題終わった?」
「うん、終わったよ。武尊に手伝ってもらったから後は一緒にレポートをまとめるだけ。夜桜は?」
「まだ。良い題材が見つからなくて。頑張るわ。」
「頑張って。私も次の題材見つけなくちゃならないから。」
今も夏休みまでに何かをしてレポートを仕上げないといけない状況に陥っている。しかも夏休みまではあと1ヶ月しかない。
ちなみにハルも焦っている。自分の能力である「ヒール」を使って完成させている。だが上がり症で、いざ怪我している人の手当てをしようとすると焦って加減を間違えてしまったりするのだ。
レポートは数人で1組として提出することも出来る。だからよく一緒に提出することが多い。今ではバディ的存在になっている。かといって私もそんなに成績は良くないのであんまり変わらないのだが。どうにか成績上げられないかな〜。
「そういえば、最近パワハラで訴えられた人の家に次々と雷が落ちていってる事件知ってる?」
「あぁ、『連続パワハラ雷事件』?」
「そう。あれ、怖いよね。」
夜桜と綾華がそこまで話した時チャイムが鳴った。担任の氷雨先生が朝からみんなを急かす。その際、雪の混じった凍りそうな風を吹かせることも欠かさない。
「みなさん、夏休みまでの課題、終わってきていますか?もうすぐ出せそうなのは黒鬼・古兎ペアだけですわ。信じられませんことよ!わかってらっしゃる?もし間に合わなかったら…1日氷漬けするわよ。」
氷雨先生は怒りながら朝礼を始め、淡々と連絡を終えるといつも以上に凍りそうな風を吹かせながら教室から出て行った。数秒間の沈黙が流れた。
その沈黙を破ったのはハルだった。
「いつにも増して怒っとるなぁ。まぁ頑張らんと怒るよってことやね。」
「ただの脅しとは限らないぞ。」
黒鬼が反論した。
「ここは普通の法律から外れた学校だ。意味通りだとしてもおかしくはない。」
そう。この学校は普通の法律に縛られていない。みんな能力者ばかりのため、普通の法律では制御出来ない能力者もいるからだ。
「だって既に1人、そうなった事がある人がいるんだよーん!」
夜桜の斜め後ろに座る西洋魔術を操るルナ・アルバートが口を挟んできた。
「誰?知ってる人?」
「そうだよーん。ねぇ、そこで縮こまってる哀れな小動物ちゃん。」
彼女が振り向いた先にいたのは、ヘビ使いの響カナトだ。彼は毎回ギリギリまで宿題を出せていない常連だ。
「氷漬けにされたとき、どうだった?ねえねえ教えてよーん!」
「やめろ、アルバート。いじめるな。」
「ちょっとからかっただけだよーん。」
黒鬼に止められ、ルナはニヤニヤしながらからかうのをやめた。本当にそんな人がいるなんて。入ったばかりのこの中学、ちょっと怖い。たまにこんな事があるから、注意しないと本当にヤバイ!
「ここっていつ来ても修羅場だなぁ。」
疾風が呟く。能力争いは時に熾烈な争いとなる。あまり成績が悪すぎると退学、もしくは自ら学校を辞めなければならない。それは普通の学校と同じだ。もし辞めたくなければ成績を上げないといけない。今、夜桜はクラスの中では真ん中程度。あまり下手をすると転落の危機に瀕している。何か成果を上げたら一発逆転。でもそんな簡単にうまく行かない。
あーあ。文系の関係の課題なら絶対成績が良いのにな…。
「ってそうだ!その手があった!」
夜桜はいつもの相棒、隣にいる疾風に意味ありげな目配せをした。
今回は学校編でしたー!次は何が出て来るかな…?
次の投稿をお楽しみに!




