一章〜とある朝〜
朝方の大通り。一人の女子中学生が歩いていた。夏向いている季節だが朝なので涼しげだ。そこに新しい人影が合流した。
「おっはよー、夜桜ー!今日も朝から眠くて寝坊してしもたわー…。」
同じ歳くらいの女子中学生は会って早々いきなり話し始めた。朝からテンションが高い彼女に少々温度差がある夜桜は、このままではあと10分程度話していそうだと察し、話を一度打ち切ることにした。
「ハル、朝から元気だね。毎日そんなに騒いで疲れないの?」
「ヘーキ、ヘーキ!ウチはいつでも元気やもん!それより夜桜、調子悪そうやなぁ。どうしたん?」
確かに夜桜はここ最近寝不足だ。テンションが低いのもそれが多少影響している。
遥(通称ハル)は小学校からの幼馴染。長い付き合いでそういう点では察しが良い。
「ハリー★ッターを読み直してたのよ。何回か疾風と火影に早めに寝ろって言われてたんだけど…」
本好きな夜桜はここのところ毎晩ハリー★ッターシリーズを読み耽っていた。あれはいつ読んでも面白い。確か3週目だったか。
「確かに寝るように言ったぞ。」
「そうだよ。あっ、ハル!久しぶり〜。」
何も無かった所から、いきなり2つの気配が現れた。白狐の疾風と赤狐の火影だ。一般人にはギリギリ見えない程度まで霊気を強め、姿を現したようだ。最近とある事情で火影は家でしか出てこれないようにしてたのに、全く…。出てきたものは仕方がない。
「あっ!火影やん!久しぶりやなー!」
ハルは生まれつきどんな類の妖も見えるし話せるので疾風も火影も古くからの友人だ。なかなか夜桜が火影を家から出さないのを知っていたので驚いていたが久しぶりの再会に嬉しがっている。
「良い機会だから注意を促そうと思ったのだ。少しは早めに寝ろ、夜桜!周りの気が乱れてきているぞ。身長も止まりかねない。」
体調面にはやたらとうるさい疾風は説教しだすと15分くらい終わらないのだ。今は妹と私しか家族はいない。だから疾風と火影が家族のようなものだ。疾風と火影は代々この橘家に支えてきた妖狐。今は私に付いてくれている。心配してくれるのは有難いが、私の低い身長には触れないでいただきたい。
「疾風、もう良いじゃん。僕がせっかく出てきたのに怒るなんて。夜桜、今からどこ行くの?」
疾風と夜桜に飽きてきた火影は新しい話題を振った。
「あぁ、中学校。小学校、1回行ったことあるでしょ。火影が楽しくなっていろんなところでかくれんぼしてたよね。それの大きいバージョン。」
「えっ!行きたーい!」
小学一年生の時、私を付き添いといって火影が付いてきていた時期があった。その時に初めての小学校で火影が楽しみすぎて物を壊してしまい疾風に1時間くらいこっぴどく怒られるという事件があり、私は火影が付いてくるのをあまり快く思ってはいなかった。むしろ、やめてほしい。案の定、疾風も渋い顔をしている。
「…火影、前に何したか覚えているのか?」
私もそれ思った。散々怒られたはずだが。
「うん、覚えてるよー。永遠、プンプンな疾風が話し続けたやつだよね。めんどくさかったー。」
絶対反省してないよね。ていうか、むしろ話さえ聞いてなかったって事?これは疾風の逆鱗に…?
「…おまえ、あとでブッ殺す!」
「助けてー、ハルー!」
「自業自得やわ。頑張ってねー。」
火影の切なる願いは虚しく、ハルに突き放されてしまった。そりゃそうだ。火影、ちょっとは反省してもらいたい。
「火影は自宅待機、疾風だけ付いてきて。」
私はピシッと家の方角を指差した。
「承知した。火影は迷惑すぎるしな。」
「ちょっと、夜桜酷いってウワァーッ!」
仕える主人の命令は絶対なので、火影は文句もまともに言えずに光に包まれて家の方角へと消えていった。
一連の流れを見ていた遥は、またいつものことだと思って、軽くため息をついた。
やっと登場人物が出せました。
さて次は学校です。
どんな学校かな…?
次回更新をお楽しみに!




