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Rの紋章  作者: 緋野蒼菜
第一節
14/16

十三章〜黄泉の穴〜

 その頃、『ROYAL』1人である黒鬼武尊は藍緻(あいち)県に出た大勢の僵屍と対峙していた。その数およそ300人。3日前、上からの指示でこの県に派遣され、蓬莱寺山(ほうらいじやま)に行って討伐しろと命令された。そして昨夜来てみたもののどこに正体を隠していたかと思われるほど多くの大群が黒鬼を待ち構えていた。しかし、それらは動かず突っ立っていた。黒鬼はいつ襲ってきても良いようにその僵屍達から100メートルほど離れ、戦う準備をしていた。


「オマエ、コロス。」


「オマエ、ウマソウ。」


 いろんなところから物騒な言葉が飛び交っている。しかし黒鬼は心の中で確信した。

 この量ならダリアに焼き殺させれば殲滅できる。見た感じ、妙な妖気も放っていない。おかしいのは大量発生したということだけ。たった300人だ。うまく行けば瞬殺で終わる。そんなことを考えながら僵屍の言葉を無視していた。


 ガシャ。ガシャ。ギシギシ。


 なんか変な音がする。と黒鬼は思ったが空耳かと思って聞き流した。


 ガシャ。ギシギシ。ゴキゴキ。ガタン。


 すると周りが静まり返りいきなり大きな声で大群の中の1人が喋り始めた。


「オマエ、カラダ、イイモンモッテル。ソレクレ!ムリナラ」


 そこで言葉が止まる。何も気にせずほったらかしていたが何かと思って顔を上げた。さっきまで目の前の大群は、動かず虚空を見つめ、悲しみを表現する様に独り言をそれぞれが呟いていた。

 しかし今は手足を動かし、その眼には赤い光が灯っている。しかも明らかに怨念が僵屍に纏わりついている。その様子を見て黒鬼は異変を察知し、肩にいたダリアを右腕に留まらせた。それが合図だったかのように僵屍達は一斉に口を開いた。


「「「「「「クワセローー!!!」」」」」


 約300人の大群が叫び、黒鬼達めがけて土煙を上げながら押し寄せてきた。突然の展開に驚いている暇もなくすぐに我に帰った黒鬼は愛鳥に指示をした。


「ダリア!全て焼き払え!」


 ダリアは耳をつんざくような声をあげながら、その大群へ突っ込んでいく。火の鳥ダリアの炎の温度は約6000℃。太陽の表面と同じくらいである。飛んできたダリアに群がるように男や女の僵屍が襲いにかかるが、彼等が集まってきたのを見計らい、内側で炎を爆発させた。

 半径5メートル以内にいた僵屍は吹っ飛ばされ、悲鳴を上げる間も無く溶かされ、灰になった。しかし、まだうじゃうじゃと奥から出てくる。肉の焼ける音と腐敗臭のする中から這い出たダリアは、一度飛翔しもっと奥へ進み再度滑空した。黒鬼はそれを横目で見ながらダリアに指示が届くギリギリの距離に移動した。


「ダリア、右だ!」


 指示を聞き、ダリアは同じように右へ飛び潜り込んで中から爆発させる。吹っ飛んで溶けて灰になる。それを繰り返しているうちにある事に気づいた。


 全く数が減らない。

 ダリアが焼き払っても湧いてくるのだ。

 全体を見回すとあろうことか500人を超えていた。


 明らかにおかしい。

 どこかから湧き出ているとしか思えない。


 目を凝らしながら探していると、ふと前方からムッと一際強い腐敗臭が流れてきた。匂いを元に再度探すと、ダリアが焼き払っている20メートルほど先に大きな穴が開いておりそこから絶えず僵屍が出てきていた。

 黄泉の穴だ。


「ダリア!作戦変更だ!奥の黄泉の穴を狙え!」


 ダリアは一度周りを火の海にして3メートル上まで浮上し、黄泉の穴目がけて口から炎を吐いた。今まさに出てこようとしていた僵屍は溶けて灰になった。だが目の前にいた僵屍が灰になるだけで、中からは別の僵屍が出てこようとしている。なんとかしてこの穴自体塞がないと永遠に終わらない。しかし生憎黒鬼はその穴を防ぐ力など持っていない。そもそも依頼の内容は討伐。だがこれは討伐しようにも1人では何も出来ない。

 悩んでいると後ろからトントンッと肩を叩かれた。正確には叩かれたのではなく()()()()()黒鬼の身体を叩いていた。嫌な予感がして振り向くといつの間にか近くまで来ていた僵屍が襲いかかっていたのだった。ダリアに助けを呼ぼうとしたが、距離が離れすぎて指示が届かない。自分で対処しなければならなくなり、ひとまず寄ってくる僵屍を引き剥がし出来る限りダリアに近づけるよう走って立ち止まり、五芒星を描き、印を結んで結界を張った。これでひとまず僵屍に襲われることはない。


 黒鬼の能力は火の鳥を思い通りに操り、周りを火の海にできることだ。だが人数が増え、長期戦になると彼の愛鳥もエネルギーを使い果たして倒れる。黒鬼自身は何か特殊な能力を扱えるわけではない。

 よってこの戦いはどう考えてもこちら側の負けだった。

 ダリアは今も穴から出てくる僵屍を必死に食い止めようと炎を浴びせ続けているが、フラフラとして体力的にも限界のように見えた。


「ダリア!一時退散だ!一旦引け!」


 黒鬼はこれ以上いるとお互いに身の危険が迫ると考え、ダリアに指示を送った。

 疲労困憊になっていたダリアは力を振り絞り急浮上し黒鬼の元へ帰ってきた。

 戻ってくるタイミングを見計らい、すぐに結界を解き猛ダッシュで五キロ先まで走った。

 僵屍はそんなに早く走れない。

 後ろまで迫っていた大群は引き離されて行った。

お久しぶりですみません。

今までとは一転バトルしてみました。黒鬼ピンチ!

てことで次回の投稿をお楽しみに!

これからも読んでやろう!と思われる方は活動報告をチェックしていただければ、今後の予定などたまーに書いてますのでこいつ投稿いつもより遅いなーと思ったらお読みください。

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