九章〜突然の訪問者〜
「随分と早く来られたのですね、理事長。」
西園寺は窓際に佇んでいる女性に呼びかけた。
ゆっくりと振り返った銀髪の揺れる彼女は、この学園の理事長、柊珠姫。
普段は下ろしている髪をポニーテールにし、高く括っている。彼女の能力は不老不死と蘇生術。しかも完全に死んでいても生き返らせることができる。この学園が出来た時からの理事長だ。この9416年間、悩みが無かった彼女の眉間にシワが寄っている。
「この学校に上からの指示はあまり来なかったのに…。世の中も酷くなったものね。」
「理事長、御用件は?」
柊は1つ溜息をつくと命令を下した。
「国から不穏な動きが各地で起こっていると警告があったわ。至急、坪田希に占わせろとの命令よ。」
「分かりました。至急、占わさせます。伊吹。」
西園寺は奥の部屋にいた伊吹を呼んだ。伊吹は忍びの様な速さで足音も立てず現れた。
「私のハープを手入れしておいてくれ。…忙しくなりそうだからな。」
「かしこまりました。」
伊吹は嬉しそうな顔をしながらも早速実行に移した。
「もしかして、黒鬼くんも先に動かしていらっしゃるのですか?」
「ええ。何か文句、あったかしら?」
「いえ、何も支障はありません。要らぬ質問をしました。」
「あと、もう一つ。新しく『ROYAL』に入った中1で召喚術師っているかしら?」
「ええ、居ますが。」
すると柊の眉間のシワがさらに濃くなった。そして少し思案した。
「その子に忠告しておいて。あまり、外に出てはいけないと。」
「なぜですか?彼女にも『ROYAL』の仕事はあります。それを放っておけと?理事長もあの掟はご存知でしょう。」
西園寺が猛反論した。中1は技術を磨く時期であり、沢山の仕事をこなすという暗黙の掟がこの『ROYAL』にはある。それは理事長も知っているはずだ。それを、「外に出すな」とはその掟に反することになる。この9416年間守られてきた伝統をそこで途切れさせるわけにはいかないのだ。
「ええ、知ってるわ。だって私が作った掟だもの。」
「ならば何故?」
西園寺がしつこく聞くと、いよいよ柊は参ってしまったようだった。そして考え込んでしまった。西園寺はふと冷静になり、聞いてはいけないものだったのかと反省した。
「すみません。言い過ぎました。」
「良いのよ。ただ、秘密事項なのよ。だからどこまで、誰にまで言ったらいいか分からなくて。」
そう言った彼女の瞳には迷いが見て取れた。だが、決心したらしく、息を吸った。
「…『inperium Deus』なのよ。」
「『inperium Deus』。やはりそうだったのですね。神しか簡単に呼べないって、ただ単にそれだけに特化してたからですね。」
「えっ、本人も言ってたの?」
「ええ、『inperium Deus』とは言ってませんが。」
「なら、話が早い。言っておいてちょうだい。また、そっちに出向くかもしれないわ。その時はよろしくね。」
「As you wish(仰せのままに)。」
西園寺は胸に手を当て、深く礼をした。その様子に柊は上機嫌に微笑み、部屋を後にした。
理事長ついに現る!
国が動き出しました。
これから夜桜はどうなるのか。
仕事かけなくてすみません。
またいつかやる日が来るかも?
次回の投稿をお楽しみにー!




