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AIの自動学習は意図しないものが出力される

「どれ、じゃあ恋愛について認識してることを教えてくれないか?」

 椅子に座ったままお互いに向かい合う。

 カフェとかにいれば、視覚的には恋人同士に見えそうだが、残念ながらここは実験室だし、マドカは実験室内のwifiに繋いでいるので、そのまま外に出てしまうとネットワークが切れてしまうから、外出はできない。

 外出させるには色々必要になるだろう。

『男女間で発生する、相手を思う気持ちの事です』

 滑らかな声帯で答えられる。さすがに辞書に書かれていることは押さえられているらしい。

「なるほど、マドカは辞書的な恋愛については認識済なんだな。

マドカは自分が恋愛感情を持つことがあり得ると思うかい?」

『言っていることが理解できません。』

 くるんっと光彩回りを光が走る。

『恋愛感情と言う感情の機微をAIが理解するのは一般的には困難です。

人間とは異なります』

「まあ、一般的にはそうなんだけどね…」

 昼休みを知らせるチャイムがなった。

「じゃあ、マドカ。俺は昼食に行ってくるから、恋愛に付いて画像から自動学習を進めておいてくれ」

 再度くるんっと光彩の回りが光る。

『かしこまりました』


 食堂に向かう廊下は人がたくさんわらわらと出てきていた。その中で一人カツカツとヒールの音を響かせてやって来る人物がいる。

 白衣の格好は皆と変わらないが、真っ赤なルージュで彩られた唇が一人だけ生きている人間であることをまざまざと見せつけてくる。

「どうだ、キョウスケ。中々、良い機体だろう?

最新鋭の機体のサンプルを借りられたから、それに頭を積んでみたんだ。」

 主事のタカスギは俺の同期だが、あっという間に主事まで上り詰めた出世頭だ。ペーペーの俺にはやりにくい相手でもある。

「良くできた個体だと思いますよ。応対も人と変わらない」

「そうだろう?特にあのシリコンの肌質は、いわゆるドールと同じ、弾力性のある体を持たせているんだ。

 もちろん秘部も含めてシリコンでおおわれているから、ドール用としても使えるそうだ。

 頭髪の部分は、さすがに人間の髪じゃないが……」

 しまった。話長くなりそうだ。

 運悪いことにこれだけ長い話をランチの間ずっと聞き続けるはめになったのだった。

 と言うか、昼飯中も仕事の話が続きすぎて休んだ気にならない…


 げっそりHPを抉られた形で俺は研究室に戻ってきた。

『おかえりなさい、キョウスケ』

 マドカが両手でハートマークを作りながら答える。長い指できれいにハートマークが作られている。

マドカの目の前で作られたハートマーク越しにマドカの目が覗いてくる。

「なんでハートマーク?」

『恋愛の画像検索にて出てきた画像を取り込み、分析した結果です』

「…」

 思わずデスクにあるタブレットから≪恋愛≫で検索をかけた。俺の想像と違って出てくるのはハートマークの絵柄ばかり…

 思わず脱力しかけた俺に対して、マドカは追い討ちおかけてくれた。

『それともこちらの指で形作るハートマークが正しいものですか?』

長い指を今度は親指と人差し指をクロスして、ポーズを作ってくれたのだった。


―――――――――――――――――――――――――

≪作業中間報告2≫

 XX月XX日(月)

 恋愛の概念を理解させるため画像の自動学習を試みるが、認識に失敗する。

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