1.はじまり
あれは確か私が高校生の頃。
家庭用ゲーム機のソフトがカセットからCDタイプに替わり、ドット絵が姿を消し始め、グラフィックやサウンドが格段に向上した時期。
私は一つのゲームソフトに出会った。
「リリィの箱庭」
ゲーム好きな友達と一緒にプレイしたからよく覚えている。ヒロインはリリィ。色取り取りの花々に囲まれた庭園。
リリィはそこで、変わらない日々を過ごす。
寝床から起き、庭園できのみを探す。食事を終えると水を汲み花々の世話をする。夜が訪れる前に寝床に帰る。終わりなく繰り返さらるリリィの営み。
(割と好きだったな、あのグラフィック)
繰り返されるのだが、日によってリリィが世話する花や口にするきのみは変わる。それを一つ一つ反映させている。土を掘り起こす時はある時は鍬、ある時はしゃがみこんでショベル。きのみを採る時ふいに眩しそうにするリリィが可愛かった。
そんな平和で退屈な日々に、異変が訪れる。
ある日黒衣の魔女が訪れて、リリィに尋ねる。
「ここからでたいか?」
リリィがここで「いいえ」と答えると、ゲームは呆気なく終わる。「GAME OVER」の味気ない文字とともに。
「はい」と答えると、リリィの物語が始まる。
私は高校生の倍の歳になってこのゲームを思い出したのには訳がある。
私の目の前に、現れたのだ。下段の黒衣の魔女が。