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87話 護衛 1

 【熱石】という武器の素材としても品質の良いアイテムを手に入れたわけだが、一つ問題が発生した。

 俺は当初、料理対決にて優勝し、このアイテムを手に入れた暁にはアイとシー二人の武器を一度に作ってしまおうと思っていた。

 熱の籠った石などどう考えても杖や弓の素材にはなり得ない。

 シドドイ用の矢に使う鏃くらいの用途だろうか。

 それはまあ、余ったらでいいだろうから、まずは各々の武器をグレードアップしたい。

 特にアイとシーの武器は二度目の大破だ。

 二人に合った武器を作るという考えを捨てるわけにはいかない……のだが


「この量で二つは作れねえよなぁ……」

「アイとシーの武器は大型のものだしね。それこそ出し惜しみなく使う気でなくては足りないくらいだろう」


 流石はなんか開発やら発明だかをやっていたというシルビアだ。

 結局何を作っていたのかは知らないままだが、調合に使う素材の分量は慣れたものなのだろう。


「まあ案外と中核だけで済むかもしれないし、持っていくだけ持っていけばいいだろう。外殻は別の金属を使うのかもしれない」

「そうだな。俺達が作るわけじゃねえし、職人次第か」


 武器職人のあては……まあ無いな。

 ここはやはりグリセントに紹介してもらうしかねえか。


「またグリセントに頼むかい?」

「他に当てがないからな。今まで武器を買ってた店に行くのでもいいけど」


 あそこは下請けだっけ? 鍛冶もしていたっけ?

 まあいいや。グリセントに聞けば済む話だ。


「ついでに冒険者ギルドにでも行ってみるか。最近あんまりクエスト受けていないし。何か報酬でいいもの無いか見に行こうぜ」


 出不精というわけではないが、ただグリセントの顔だけ見に出かけるというのもモチベーションが上がらない。

 クエストをそこそこ受けてランクを上げにいくのもいいだろう。

 報酬も金銭だけではない。それ以上の価値がある素材やらが手に入るかもしれない。


「この際だしシドドイは冒険者登録しておくか?」


 アイとシー、シルビアは死体であるから登録できない。

 冒険者ギルドに登録する際にはステータスボードで己の状態をギルドに見せなければならない。

 疎まれているネクロマンサーの傀儡人形が街中に紛れ込んでいるだなんて噂されたら外を歩けなくなってしまいかねない。

 だから、こういう時の人間の奴隷であるシドドイの出番だ。

 こいつならどれだけステータスを見られようと困ることは無い。


「シドドイの力ならすぐに高ランクに上がれるだろ」

「この力、ご主人様の為にあります。Sになれというのなら、なってみせましょう」

「いや別にそこまで言ってないだろ。CでいいよCで。頑張ってる俺を追い越しすぎないでくれ」


 実際、魔王を倒せる力があるんならSをくれたっていいわけなんだが。

 隠しているというか、言い出していないから誰が魔王を倒したんだって話になっていたっけ。

 勇者の誰かに役目が押し付けられていたはずだが……そいつらはランクSなのだろうか。

 金髪勇者も実力は確かだったからな。同レベルがあと2人もいるんなら、魔王討伐も夢ではない。……俺にだって1人倒せているんだし。


「そうしたら……俺とシドドイでグリセントのところと冒険者ギルドに行ってくるか。シルビア達はこっちを任せる」


 そう言い俺が取り出したのは数枚の鱗や牙であった。


「これは……!? 君、これを何処で手に入れたんだい?」

「ちょっと馬鹿な勇者から、な」


 マモンとの闘いではまず必要ないだろうと後回しにしていた代物だ。

 決して忘れていたわけでは無い。


「分かるのかシルビア」

「ホワイトドラゴンだぞ! 中々手に入らない素材だぞ!」


 実はそれの更に上位の素材が手に入りかけただなんて言えない。

 金髪勇者が殺しきってくれればなぁ……。

 もしくは死体が残っていれば良かったんだが、こうして素材になってしまっては【メンテナンス】も効果が無いとどうしてだかわかってしまう。


「そういえば……付近の森で目撃情報があった気もしたが……討伐されていたのか」

「おかげでゾンビがわんさかだそうだ。抑えつけていた厄介者が消えたとかでな」

「ああ……そうか。ゾンビには光だったね。私達みたいに」


 シルビアは薄く笑う。

 自嘲するかのように。


「光魔法だけはどうしても習得出来なかった。もはや体質的に受け入れられないみたいだ」

「まあ光るだけの魔法なんてどうでもいいじゃないか。回復は薬で間に合わせればいいし」


 俺とシルビアだけの分で済むのだ。

 5人いてそれで済むのなら安上がりだろう。


「光線は土なり炎なりで槍みたいなの作ればいいし……便利そうなのは幻影くらいか」


 金髪勇者の必殺技を回避出来るくらいだしな、俺も使ってはみたい。

 別に教えてもらえなかったから羨ましいとかではない。


「幻影って……君、そんなのどこで知ったんだい? かなりの光魔法の使い手で無いと使えない魔法なのだが」

「なら、かなりの光魔法の使い手と出会ったんだよ。残念ながらケチな奴で何にも教えてくれなかったがな」

「ふむ……一度話してみたいな」

「止めとけ、すぐに消されちまうぞ」


 漏れ出る光のオーラでな。

 なんて、言えばその正体も知られてしまうかもしれない。

 勝手に竜王シャルザリオンとかいう奴と闘ったとか言ったら問い詰められるに違いない。

 しつこく問いただされ、シャルザリオンの特徴やら使っていた魔法やらをいつまでも尋ねられるのは面倒だ。


「それで……その……ホワイトドラゴンの素材を少しだけ分けてくれないか? 光魔法がなぜゾンビ系統に対して弱点になるのかを解明出来れば私だって再び光魔法を使えるようになるかもしれない」


 そりゃ使えるだけ便利かもしれないな。

 使えるなら使えた方がいいか……。


「ならもう少しだけ出しておくか」


 先ほどシルビアに渡した量より3倍程のホワイトドラゴンの素材を取り出す。

 

「まだあったのか」

「ドラゴン一匹分からあれしか取れなかったら解体したやつ下手すぎだろ」


 とはいえこれで全部だ。

 金髪勇者にせがみにせがんで頂いた素材だが、流石に自分たちの分もあるからとこれ以上は貰えなかった。

 執事の爺さんが少しばかり口出ししてくれたからこれだけ貰えたとも言うが。

 こっちサイドに立ってくれる有難い爺さんである。


「この素材で当初の予定であった光耐性のアクセサリーを作ってきてくれ。光のドラゴンから作る耐性素材だ。良い物を期待できるだろ」


 当初というか随分前の予定だ。

 マモンの奴のことでかかりきりだったから随分と昔のことのように思える。


「余ったら貰ってもいいということか」

「これまでに狩ったキリンやらの素材もあるし、たぶん余るだろ」


 素材を集めるだけ集めて何もしていなかったからな。

 そろそろ俺のアイテムボックスの肥やしから卒業だ。 


「武器とアクセサリーは一緒の方がいいか……? 俺とシドドイは冒険者登録とグリセントのところへ、シルビア、アイ、シーは武器製造とアクセサリー製造依頼で分かれるか」


 アイかシー、どちらかの武器になるのなら使う本人がいた方がいいだろう。

 今回は俺とシルビアは二手に分かれる。シルビアの判断はおおよそ間違うことは無い。誰が見ても間違うことであったらアイとシーが止めるだろうし。


「シドウ様、シドウ様! 次こそお役に立てるような武器を手に入れられるのですね」

「落ち着いてシー。まだ武器は手に入っていない……どんな武器になるかは私達次第なの」

「そっか! じゃあ頑張っていい斧を作らなきゃだね!」

「作るのは武器屋さんだけどね」


 こいつらもそこそこに強くなってきているんだよな……。

 ゴレンの奴にまだ礼を言っていなかったし、冒険者ギルドに行ったらついでに探してみるか。


「ナイフも刃が欠けていただろ。ついでに研いでもらってくるといい」

「「はーい」」


 シルビアもいることだし生半可なものにはならないだろう。

 妥協せずに腕の良い鍛冶師に頼んでくれるはずだ。


「良さげなクエスト見つけたらそのまま受けて来るから下手すると今日は帰ってこないかもな。シドドイ、大丈夫か?」

「私は構いませんが……ご主人様は大丈夫ですか? 最近色々とお疲れのようですが」


 マモンを倒してからも闇医者や満腹貴族と変な連中に出会ったからなぁ。

 気疲れはあるかもしれない。


「体力的にはばっちりだ」

「体力的には……もし、本当に厳しい時には教えてください。私が頑張りますので」


 シドドイが両の拳を構えて微笑む。


「ああ、頼りにしているよ」

「シドドイ、私からも頼むよ。シドウが放っておくとよく分からない存在に絡まれているからね」

「それは俺のせいじゃねえだろ。まあ出来るなら、絡まれないように護ってくれると助かるけど」


 何人かは俺から絡みに行ったこともあるから強くは言い返せないが。

 

「そんじゃ解散、と」


 日帰りかつ武器の素材として秀逸な報酬のクエストがあることを祈って宿を出た。

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