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80話 料理対決 1

これより1週間連日投稿を開始します

書き溜めてたの放出するだけだから楽ね

「うぅ……ごめんなさいシドウ様」

「せっかく買って頂いたハンマーが……」


 マモンとの闘いも終わり数日。

 せっかくの勝利であるのにアイとシーは項垂れていた。

 その理由は、こいつらがそれぞれに買い与えていた武器を2度、全壊させているからである。

 つい先日のマモンとの闘いでもアイとシーの武器はマモンに受け止められ、そのまま砕かれてしまっていた。

 足止めの役割としては十分に果たせていたのだが、2人はそれでも武器を失ったことに耐えられなかったらしい。


「……両方ともシルビアが選んだやつだっけか。性能的にあれら以上のものを見つけるのは難度が高そうだ」

「も、申し訳ありません!」

「本当に、ごめんなさいシドウ様!」


 謝りに謝る2人だ。

 俺の言葉をどれも責め立てるものとして聞き取っているかのようだ。


「……いや、だから言ってるだろうが。お前達がまだ未熟なのは分かっていて武器は持たせた。どちらかと言えば壊れるような武器を持たせたシルビアの責任だ。そして大元はマモンが悪い。はい、これで終了。解決な」


 パンパンと手を叩き、シルビアに責任を押し付ける。

 これ以上は話の無駄だ。

 もう少し、現実的な話をしたい。


「だから新しい武器を手に入れないとな」


 出来るだけ優しい声音を出す。

 

「……うわぁ」


 シルビアが引いた目をしている。

 さっきも言ったように、アイとシーが落ち込んでいるのはこいつのせいでもあるのは確かだ。

 耐久性に優れた武器であれば破壊されなかったかもしれない。

 他人事でいられるのも今のうちだぞ?


「しかし君、この街の武器屋を見たがあれよりも良いものはもう無い。というか、量産品のようだから、実は似たり寄ったりだったりするのだけれど」


 だよな、そんな気がしてた。


「光対策の装備と同様に、武器もアイとシー専用のを作るか」


 実は武器破損については対策が無いわけでは無い。

 ただ、タイミングを失っていたというか機を伺っていたというか。


「専用!」

「私達だけの!」

「特注品。完全なオーダーメイド。少し大きすぎて扱いづらかっただろ? お前達の体格に合わせて作ればもっと振り回しやすくなるぞ」


 いくらシルビアが選んだとはいえ、2人の武器は元は大人向けに作られたものだ。

 勿論、体格の小さな亜人に向けられた重量級の武器もあったにはあったが、玄人好みの扱いづらい武器であったらしい。


「オーダーメイドか。うん、いいかもしれないね。良い素材を持ち込めば安く済むしハンマーと斧なら鉱石が必要か」

「私も今からアイさんとシーさんの武器が楽しみです」


 何言ってんだこいつら。


「他人事のように言うなよ。勿論、お前らの分もだぞ?」

「「え?」」

「そういえばシルビア。お前は魔法を使うくせに杖を使わなかったな。好き嫌いなのか遠慮しているのか知らんが、使って損が無いならお前のも作るぞ?」


 指輪、ブレスレット、ネックレス……代表的なのは杖だ。

 魔法使いが魔法を使う際の魔力軽減や効果上昇等が付与された杖があればマモンにももう少し対抗出来たのではないか。そう、闘いが終わった今でも思ってしまう。


「シドドイには弓だな。今まで使っていたのはアイやシーと同様の市販品だったが、それだってお前の手に馴染むようなのがいいだろ? 強くなったんならそれに見合ったもの作ろうぜ」


 せっかくの勇者パーティの子孫を師匠にとったのだ。

 武器がしょぼくてはその成果も十全に発揮できないだろう。


「斧とハンマーは鉱石類。杖と弓は木材か……? どうせしばらく暇だ。何があってもいいように、強化しておくに越したことは無いだろ」


 どうせなら一級品が良いなぁ。

 世界に1本だけ生えている樹木とか、宇宙の鉱石だとかそういうの。

 

「遠慮というよりは要らないと思っていたのだがね……、今となっては慢心ともいえるか」

「出来れば矢もお願いできますか? 属性付の矢があると聞きます。まだ習得は不完全な他の奥義も放つことが可能となるかもしれません」

「お、おう……」


 シドドイはまだ強くなる可能性があるようだ。

 マモン戦でのMVPであるシドドイだが、もしかしたら他の魔王もこいつが倒しきってしまうかもしれないな。


「さてそれでは武器の素材をどうするか考えようでは無いか。是非とも忌憚のない意見を挙げてくれたまえ」


 5人でテーブルを囲む。

 俺はテーブルの上で手を組み、その上に顎を乗せる。


「はい!」

「シー君、どうぞ」

「いっぱい魔物を倒して素材を集めます!」

「うん、いいね。次はどんな魔物の素材がいいか言えるともっといいね」


 はい次。


「はい」

「アイ君、どうぞ」

「出来れば硬い魔物を切り刻んでみたいです。せっかくの新しい斧ですので」

「向上心豊かで結構。だけどまだ武器は作ってもいないからな?」


 はい次はい次。


「はい」

「シドドイ君、どうぞ」

「現実的に考えれば私達に倒せる魔物、もしくはその生息地で採れる素材でしか武器を作れません。どこまで行けるのか、それを探っても良いのではないでしょうか」

「まともな意見だ……」


 前の2人が馬鹿で可愛い解答であっただけに、シドドイのはストンと俺の中に落ちてくる。

 無理することも無いのかなぁと思い始めてくる。


「そういえばシドウ」

「はいそこシルビア君。何かある時は手を挙げるように」

「……はい」

「シルビア君、どうぞ」


 少しだけこの学校ごっこが楽しくなってきた。

 たぶんすぐ飽きる。


「金の力で手に入れられないだろうか。私達の実力に見合わずとも金さえあればそれなりのものは手に入る」

「オーダーメイドなら安く済むとか言ってたのお前じゃなかったか?」

「それでも、全て向こう任せよりは安いだろうさ」


 ううむ……ロマンが無いんだよなぁ。

 もっとこう、自分で苦労して手に入れたからこそ武器に愛着が湧くというか。


「だがまあ、採用だ。伝手はあることだし、買い叩けるか交渉してみよう」

「ほう。商人に知り合いがいるのか」

「何言ってんだ。ほら、お前も知っているだろ。金にがめついあの商人を」


 我らが奴隷商人グリセントがいるではないか。

 腐っても商人。

 世界中から奴隷を集めてくるのであればその何処かで素材を扱う商人とも繋がっているはず。


「アイとシーは留守番だな……」


 少しだけ大人の汚い世界になることは間違いない。

 そもそもこいつらだってあの場所に良い思い出ないだろうし。

 

「……シドドイもだな。2人と遊んでてくれ。金は適当に置いていくから」


 忘れていたが俺の身内は奴隷が多かった。

 死体と同じくらいには奴隷がいる。

 今更だがどんなパーティだよ。


「さて行くかシルビア。いっちょグリセントの奴を脅しに」

「ようし乗った。アイツであれば問題は無い。遠慮せずこちらの取り分だけ貰っていこう」






「駄目に決まっているだろう。お前達は何を考えているんだ」


 グリセントの商会に乗り込んだ俺達は早速最上階のアイツの部屋に押し入った。

 だが、告げられたのは無下な返事であった。

 

 ほう?

 そんな態度取るならこっちだって考えがあるぞ。

 そんな偉そうな態度取っているのも今のうちだ。

 ぐぬぬと言わせてみせよう。


「……言うまでも無いが、アイとシーの一件はすでに俺が金を払うことで手打ちとしたはずだ。これ以上ほじくり返すというのであれば、俺とて出るとこに出ざるを得ない」

「ぐぬぬ……」

「おいシルビア。お前がそれ言ってどうするんだ」


 作戦失敗。


「それなら……その件の原因がそもそもお前の奴隷って話はどうだ? それは知られたくないだろ?」


 【緑の巨人】だが何だか知らんけど、街を壊滅させかけた原因がグリセントであることはこの商会の人間と俺達しか知らない。

 むしろ街の人間は事件解決に一役買った存在としてグリセントを称えていたはずだ。


「その時はお前の連れているその女の正体もはっきりさせなければならんな。シルビアという名のエルフ。どのような顔をしているのか、その仮面を外しても構わんな?」

「まあ、証拠があるわけじゃないからな。別に俺が何を言ったところで信じるやつもいないだろ」

「シルビアがどのような顔だとしても誰に迷惑をかけているわけでもない。俺も別に無理に探ることはしない」


 ……チッ。

 今回はグリセントの方が一枚上手のようだ。

 この間、脅すようにシドドイを貰っていったからか、グリセントは俺の悔しがる顔を見て笑っている。

……どうやら帰るしかないようだ。


「だが、まあ……お前達には恩もある。大恩と呼ぶには浅い。だから俺に出来る情報を提供する。これで良いか?」

「手ぶらで帰るよりマシだ」

「ならば何が欲しい。出来る限り、簡易に取れる方法を教えてやろう」


 俺は鉱石類と木材。あるいは魔物の素材で仲間達の武器の素材になりそうなものが無いか尋ねた。

 出来る限り上等な素材を所望だ。


「そうだな。鉱石に関してであれば情報がある。……木材は分からん。というかしばらく植物に関しての話題は避けたいところだ」


 グリセントは背後にある棚から一枚の紙を取り出す。


「たまには俺もこの街の一員として布教しようでは無いか。街おこしの一環として行われる催し物だ。お前達もどうだ? 時間があれば出てみるといい」


 そう言って渡された紙には


『新春☆料理対決!』


 というふざけた題目が書かれていた。


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