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52話 翠の巨人 1

なんか、私の作品の1つがなろうコン一回戦突破していたので、そちらもよろしければ


https://ncode.syosetu.com/n8579do/


処女作なため拙いとは思いますが(別にこちらのがそうではないとは言っていないけど)宜しくお願いします。

基本、あっちも能力バトル。というか私の作品はほぼ能力バトル。

 無自覚な善意からの行動は、時として大悪をも超える悪行と化す。

 だから、人間は行動に自分の感情を織り交ぜるのであれば、それを自覚していないと行動そのものが破綻する。


 俺の出会ったその男は――ソレが男女なのか老若なのかも今となっては分からないが――善意のある悪であることは、ソレを目撃していた誰もが一目瞭然であっただろう。

 純粋な善は悪にさえなり得る。

 善と悪は紙一重。

 見方によって善は悪にさえ捉えられることがある。


 どれだけ誰かの為に動いても、助けようとしても……それが大衆の悪であるならば、それはきっと悪と定義されるのだろうと、俺は改めて思い知らされることとなった。





 アイとシーをゴレンの下に預け、ジルのいる森へと向かう途中であった。

 近くに魔王がやってきたことなど知らない街の住人達は今日もあくせくと働いている。今日を生きるため、明日を生きるために働く彼らはこの先の未来など考えていないのだろうなと、そんな意地の悪い考えを浮かばせてくれる。


 街を歩けば、さすがに野良の奴隷は見かけることは無いが、親に捨てられたと思われる孤児を幾人か見かける。

 何時までもそんなところでひもじそうにしているとグリセントのやつに連れていかれるぞと思うがあえて口には出さない。

 それはそれで、最低限の生活を保障される素晴らしい生活となることだろう。むしろ、グリセントに奴隷の素質有りと見定められるくらいの才があるならば、幸運なことだ。奴隷商会に掴まろうが逃げ延びようが、その才を上手く活かすことが出来れば孤児などやっていかずとも生きていけよう。

 問題は才すらない、生きることだけにしか能力も価値も見いだせなかったやつの末路だが……まあ見知らぬガキの心配なんてするものじゃない。

 それは、どこかの善人の仕事だ。善人が身を削ってガキ共に自分の命を分け与えてどちらも共倒れになるか、幸運と不幸の狭間で生きるかの愉快な将来を期待してみるとしよう。


「お願いします! 花を、このお花を買ってください!」

「飴、美味しいよ! 果物とお水しか使っていない飴だよ!」

「あの……その……」

「靴を磨かせてください! 綺麗にしてみせますから!」

「えと……うぅ……」

「ねぇねぇ、お姉ちゃん知らない? 僕と同じような色の服を着ているんだけど……」


 孤児を少しでも視界に入れてしまったせいだろうか。

 一斉にこちらに駆け寄ってきたかと思うとそれぞれが喚きたて、騒ぎ始める。

 俺に対して何かを売りつけようとか、人探しを頼もうと服を引っ張ったりしているのだが、


「うるせえな……俺に何かを期待するな」


 人睨みし、物乞いにも似た連中をとりあえず追い払う。

 あんなのを相手にしていたら、キリが無い。


 そして、


「おい、いくら俺の衣服を漁ろうとも無駄だ。そこに財布はない」


 姉の捜索を依頼するふりをして俺から財布を剥ぎとっていこうとしたクソガキを一蹴する。……別に本当に蹴ったわけではない。こちらも睨めばそれきり黙っていなくなった。


 最後に、


「んで、お前は何だ? 何か言いたいことがあるならはっきり言え。俺がこれ以上ここに立ち止まっている理由は無いぞ」


 物乞いやスリに混ざっていた孤児の1人に尋ねた。


「え?」

「え、じゃないだろうが。俺に話しかけてきたのはお前だ。邪魔をしていた物乞いもスリも今はいない。ここには俺とお前だけだ。用事があるなら早く言え」


 孤児の少女は少しばかり黙った後、口を再び開いた。


「その……助けて欲しいんです」

「金か? それなら答えは決まっているだろ。俺に商売を持ち掛けてきた奴らは少なからず努力をした。だが、ただ欲しいと望むお前に対して俺は何もしないぞ?」


 スリみたいな努力は問題外だが。

 だが、動こうともしないやつをただ助けるだけの善人にはなりたくない。

 善人と悪人の間で揺れ動く一般市民でありたい。


「ち、違うんです! 助けて欲しいというのは……その……」

「……はっきり言えよ。でないと、俺もやるかやらないか判断出来ない」


 少女は一度、下を向き、次いで上を向いた後に俺を真っすぐと見た。


「大人が必要なんです! 私達子供ではどうしようもありません。何をどうしていいのか分からない。誰に助けを求めて良いのか分からない。子供では判断出来ない。だから、大人であるあなたが必要なのです」


 ……俺もまだ大人じゃないんだけどな。


 この世界では成人扱いとか、そんなもの気持ちの問題だ。

 子供とは言わないが、それでも20を優に超えている大人がそこらを歩いている中で俺に声を掛けたのは、やはり若い……年が近いからだという理由があるのだろうか。

 おっさんよりはお兄さんの方が話しやすいってか。


「……急いでいるわけじゃないけどよ」


 ジルに約束を取り付けているわけではない。

 俺が一方的に訪ねようとしているだけだ。

 だから、少しばかり時間を食ったところで問題は無い。

 無いのだが……


「お願いします! 私達を助けてくれたあの人が苦しそうなんです。私たちの恩人を助けたいんです! お医者様に見せようにもお金が無いし……」

「俺も医者じゃねえぞ?」

「でも、冒険者ですよね……? その……回復薬を持っていれば分けて欲しくて」


 回復薬。

 それを俺が持っているかいないかと尋ねられれば答えは持っている、と答えることは出来る。

 だが、その数は少ない。

 俺以外にもシルビア、アイ、シーと仲間はいる。

 それでも回復薬は俺の分だけしか用意していない。

 別に俺が仲間の傷をそのまま残すことに快楽を覚えているからではない。

 仲間が傷つく様を楽しみにしているわけではない。

 

 単に、俺以外の仲間が全員回復薬を必要としないからだ。

 【メンテナンス】で事足りる仲間の治療をわざわざアイテムを使う必要は無い。

 そんなものに金を掛けるくらいなら、待てば自動で回復されるだろう俺の魔力を使った【メンテナンス】の方がお財布的にも良い。


 そんなわけで、俺の手持ちの回復薬はわずか数本ばかり。

 これを見知らぬガキ、というかその恩人なのか知らないやつに分ける価値は、はっきり言って無い。


 無かったのだが、


「お願いします! お願いします!」

「っ!?」


 必死に頭を下げる少女を見て俺は固まった。

 

 俺がそれに感銘を受けたわけでも、

 少女の懇願に欲情したわけでも、

 往来の中で頭を下げる少女と俺という構図に恥ずかしくなったわけでも、

 ましてや、その恩人を助けたいと気紛れに思ったわけでもない。


 単純に、目の前の少女が頭を下げた際に見えた異物に目を囚われたのだ。

 具体的には少女の背中……衣服で分かりにくいが肩甲骨の下あたり。右側に何やら突起物らしきものがあった。


 コブ、と呼ぶには少女が頭を下げるのと同期してユサユサと動く。

 まるで、風に揺られる木の枝のように。


「おい、お前それは……」


 俺が指をさして尋ねると少女は、


「え? あ、ああ……これですか。あの人に頂いた果実を食べたらこうなりました。けど、特に体調が悪くなったりとかは無いですよ? 少し、背中から枝が生えてしまっただけで」

「人に貰ったものを簡単に口にするなと……枝?」


 いや、こいつらは孤児だ。

 そんなことを教えてくれる親や、ましてそんなことを言っている余裕も無かったのだろう。

 果実なら洗えば食べられる。

 そのくらいで無くては生きてはいけなかったのだろうな。

 それよりも、枝と言ったかこいつ。

 果物を食べたら枝が生えた、ということか?


「その果物を……配っているのか? その、恩人とやらは」

「子共達に限らず、日々の生きる糧を手に入れることの出来なかった者には平等にあの人はくれます」

「そうか……分かった。そいつに会ってみよう。その代り、俺にその果物とやらを分けてくれるか?」

「ありがとうございます! それなら、あの人に言えばくれると思いますよ。私達に配ってもまだ用意できるみたいでしたから」


 街の人間に得体の知れない何かが流通していることに忌避した……というわけではない。

 ただ、興味が出てしまっただけだ。

 無償で果実を配り、そして回復薬を必要とする状況に陥ったその人物に。

 そして、果実と果物。

 間違っても俺の口に入らないようにしたい。

 だって、絶対に体に悪いだろそんなもの。

 持ち帰ってシルビアに鑑定してもらい、同じものを見分けられるようになるまでは怖くて果物食えないぞ俺は。

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