表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

21/161

21話 クエスト 2

「さぁて俺も金稼ぎするか」


 冒険者ギルドにて俺が受けたクエストはコボルドの討伐であった。

 他にも薬草集めやお使い、護衛のようなクエストもあり、討伐もコボルド以外に他のモンスターのクエストもいくつかは出されていた。しかし俺の初クエストということもあり、ランクがFということで受けられるクエストが制限されていた。


 薬草集めは近くの森の手前でたくさん生えている最もありふれた薬草を集めること。数は多ければそれでいい。初心者冒険者であれば通る道であるらしく、今もその森の手前には初心者冒険者が絶えないだとか。

 ちなみにジルのいる森とは別の森。


 お使いは10代前半のパン屋の息子が道路をまたいだ向かいの花屋の娘にラブレターを渡すという何とも青臭く、そしてとてつもなく遠回りで、それでいて面倒な内容であった。そもそもクエストに出す時点で皆に知れ渡っているがそれでいいのか? その勇気を花屋の娘に向ければいいのに。


 護衛はとある老婆を教会まで連れて行き、そこで祈りをさせてからまた家まで連れて帰ると言う内容であった。受けた者も祈りを共に奉げるため、少し時間がかかるものであるが付いて行くだけということもありそこそこ楽。ラブレターもそうだが、一般人でもできそうな内容である。これは俺が教会に行きたくないという個人的な問題から無視。


 討伐系のクエストは『黒煙の双狼』という二つ名のついたモンスターの討伐や繁殖期に入って増えすぎたナイトバファロゥというモンスターの討伐であったが、これはアシュリーがストップをかけた。まあ俺自身も今すぐにそんな大物を狩りにいくわけではなかったが。


 そうそう、ジルの討伐もクエストにはあった。推奨ランクはB。これは緊急性も含まれており、ジルは洞窟に近づかなければ危険がないため、Bであるらしい。実際のジルの強さはA級のモンスターに勝るとも劣らないとか。


 ということはそのジルを倒した俺がAランクの実力があるかというと、もちろんそんなことはなく、あれはただジルの寿命を狙っただけの結果に過ぎず、本当に真正面からジルと闘えば恐らく勝つことは100回やっても100回負けるだけであろう。



 そんなわけで俺の受けたクエストはFランクにある唯一の討伐クエストであるコボルトの討伐。最低3体で最高25体、倒せば倒すだけ報酬は上乗せという。街門から少し離れた場所ではあるが、日帰りで十分間に合う場所のため、時間を確認しながら倒してきてくれれば3体は十分らしい。


「シドウさんはお仲間はつくられました?」


 クエストを受ける際にアシュリーにそんなことを聞かれた。


「いや、残念だけど見つからなかったんだ。まあコボルドくらいなら俺でも頑張ってみるよ。1体のやつを見つけて倒す。それを3回繰り返せばいいんだろう?」

「はい。魔物の討伐依頼はその証が必要となります。なので、そのコボルドの耳を持ってきてください。それがシドウさんがコボルドを討伐した証になりますので」

「耳か」

「最初は誰でも耳を持ってきてくださいと言うと顔をしかめますね。なんてたって耳ですから。でも、これから先、例えば粘着質なモンスターを倒したときは粘着質なアイテムを持ってくることもあるんですよ。なので我慢してください」

「あ、ああ……分かった」


 俺がコボルドの耳と聞いて顔をしかめたのは違う理由なのだがな。


「決して、1体以上のコボルドは相手にしないでください! 1体を相手にするのと2体を相手にするのでは全く違いますから! 慣れたと思っても、油断は禁物です!」

「はいはい……」


 全く、どれだけ俺に死なれたくないんだ。

 俺を都合の良いカモとでも思っているのか?


「では、頑張ってください。夜は危険な魔物も出るのでなるべく日の高いうちに帰ってきてくださいね。初めてだと何もできずに帰ってくる方もいますがそれは決して恥ではありません。自分の実力を知っているということは賢明だということです」


 そう送り出された俺であった。





 すでに武器は調達済みである。

 あまり大層な武器を買ったところで俺に剣の心得も何もなかったので杖を2本と包丁サイズのナイフを数本。それでもそこそこな値段はするが。おっさんにナイフを1本もらえたのは良かった。あのナイフは俺が買ったのよりも質が良い。

 俺に棒術の心得は無いため、杖は完全にファッションだ。

 黒魔法や土魔法を使うのにあれば使いやすいだろうくらいで買ってみた。

 防具も重すぎては動けなくなってしまうためどちらかというとジルとの闘いのときのように避けることを主体にするためこのままローブで行こうと思う。ローブではあるが動きやすいローブなのだ。


 今度は門で冒険者カードを堂々と出し、特に何を言われることもなく堂々と通り過ぎていく。

 若い門兵は首を傾げていたが、中年が出てくる前にさっさと過ぎていく。

 あの時は暗かったし顔はよく見られていなかったのだろう。だがあの鋭い中年は油断ならない。会わないに越したことはない。たぶん帰りに会うことになるだろうが。





 ファスナ草原。

 それが街から少し歩き、辿り着いたコボルドが生息する草原の名前らしい。

 その名の通り、草は膝にまで届いている。だがまあ、よほど小さい魔物でなければ奇襲を受けることはないだろう。それこそ地を這う虫けらでもない限りは。


 周囲には冒険者の姿はない。

 俺の闘い方は誰かに見られるわけにはいかない。

 【フリーリバイバル】で蘇生させた奴らならまだしも、見知らぬ奴らに、事情を知らない奴らに見られたら面倒なことになりかねない。

 

 【魔物使い】。そのような職業もあるらしいので、最悪それで誤魔化そうとは思う。しかしそれは最後の手段であってできる限りは隠していきたい。【魔物使い】の説明では説明しきれないものもあるしな。


 ともあれ、俺は今、ファスナ草原にて獲物もとい魔物を探していた。

 しかしここはジルがいたような深い森ではなく見渡す限りの草原。障害物も弊害物も無いため遠くに人影を見つけることが出来た。


 肩から小鳥を飛ばす。普段は服の下に潜らせており、そういえばシルビアにもまだ見せていなかった。小さく、飛ぶことができ、俺と視界を共有できる。そして死体ゆえに体力という概念がない。これほど偵察に向いているのもないだろう。


「行って来い」

「ピィィィィ」


 【フリーリバイバル】を使っているためか、視界を共有しようとすると小鳥の感情も伝わってくる。今は平静ではあるが……人影に近づくにつれ恐怖や焦りといった感情が伝わり始めた。どうやら早く俺のところに戻りたいらしい。


 それでも人影の正体が見えるところまで近づけさせ、その全貌が露わになったところで俺は心の中で戻って良いぞと伝える、とすぐさま小鳥はこちらへと戻ってきた。


「こいつが見つかっていて、あいつらがこっちに来るなんてことないよな」


 奇襲こそ最も勝利が見える戦法である。

 望ましくはあの場所に居てほしい。


 小鳥の視界からでは立っている人影は5。そして倒れているのが1であった。


 あの場所から動かなければ俺の勝ち。

 動いてこちらに来てしまえば俺は負けることこそしないが、逃げるしかなくなる。





 あれから数分が経ったが、まだ動く気配はない。

 どうやら倒れた人影を執拗に攻撃しているようだ。

 少しずつ周りこむようにして、位置を変えるようにして5つの……いや倒れたのも合わせると6つの人影に徐々に円を描くようにして近づいていく。

 万が一、奴らがさっきの小鳥に気づいてはいたが後回しにして、用が済んだら向かおうとしていたとしてもすでに俺は違う場所にいるってことだ。

 まあ別に草は隠れられるとしてもある程度まで近づいてしまえば草むらが揺れて普通に気づかれるんだが。その場合は俺も相手の様子を知れるから問題あるまい。


 さて、そろそろこちらが気づかれるくらいの距離だ。

 そしてこちらも相手を肉眼で人影ではなく色や輪郭まで見え始めている。


 犬の頭をした小さな人間。イヌミミであれば、そしてそれが美少女の顔に生えているのであれば、元の世界でも、こちらの世界でも大層需要にあったのだろう。だが、残念ながら今見えるのは狂犬じみた顔をした俺の腰あたりまでしかない人型の魔物の一種であった。

 尖った犬歯は口を閉じることを許さず、口の間から涎が常に垂れている。手には棍棒のようなものを持っており、それを使って倒れた人影……人間を殴っていた。棍棒といっても木の枝を少し太くした程度であり、そこまでの破壊力はなさそうだ。だが、倒れている人間の頭からは夥しいほどの血が流れている。すでに頭部は割れているのだろう。それこそ何十回と5体のコボルドは殴りまくったに違いない。


「あの人間……冒険者だな。助かった」


 何が助かったかというとその倒れた……というか死んだ冒険者は手に剣を持っていたことだ。

 別に素手でも良かったが、剣の方が致命傷を与えやすいからな。


「死んでてくれてありがとよ」


 そうでなかったらこの小鳥を突撃させるところであった。



――【オートリバイバル】



 すでに死体になっていることを知ってか知らずかコボルド達は死体を殴りまくる。もしかしたら殴ることで肉をミンチ状にして美味しく頂こうとしているのかもしれない。

 だがその思惑はすでに実行不可能だ。なぜならここには俺がいる。俺が来た。


 死体を誰よりも有効活用する俺がな。


 死体を殴るコボルドの1体が動きを止める。

 何やら異変に気付いたようだ。首を可愛らしく傾げ、しかしその場からは動かない。まだ生きていたのかと、さらに強く叩こうと棍棒を振りかぶった。

 そして首は飛んだ――コボルドのが。冒険者の剣によって。


「グルッ!?」

「グゥッグッ」

「ウゥゥ」

「ウグルルル」


 残った4体のコボルドが汚らしい鳴き声を上げる。

 それもそうだ。仲間のコボルドが突然1体殺され、これまで殴っていた死体が起き上がったのだから驚いているのだろう。

 しかしまだ驚くのは早い。



――【オートリバイバル】

――【メンテナス】



 首を飛ばされ死んだはずのコボルドもまた起き上がり、そして首が再び生え、仲間のコボルドに殴り掛かった。


 こうして2対3の乱戦は始まった。

 もっともすでにどちらが勝つのか決着は見えているがな。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ