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ねくろまんさぁになったので、敵を殺して味方にすることにしました 作者:そらからり
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1話 学園ハーレムもの

とりあえず5話まで連日投稿予定です

 誕生日の二日前にそれは起きた。突然の出来事だった。誰にも――少なくとも俺には予想できなかった。





 誰もが送る平平凡凡で退屈な人生を謳歌し、時折の刺激を求めて彷徨う。

 俺もその例外ではなく、おはようからおやすみまでのどこかに非日常はないかと探していた。見つからないからこそ非日常だと、その探す過程を楽しんでいた。

 本当に欲しいのは非日常ではなく日常だったと、平平凡凡な退屈な人生こそが大切なものだと思えるようになることこそ、人間が長命である理由だと気づけたのはそんな非日常を探していた誕生日二日前のことであった。



 その日を特に表す言葉はなかった。

 誕生日二日前という日は特に意識すべき日でもないし、特に祝ってもらえる相手もいない。

 いつも通りに目覚ましの音で起き、朝食を食べ、身支度をし、家を出る。

 日常を外れることの無い繰り返すべき人生の一部である。


「おはよう桐原君」

「ああ、おはよう菅原さん」


 クラスの華である菅原に挨拶をし、


「おはようございます桐原先輩」

「おう、おはよう戸村」


 後輩で妹にしたランキング一位である戸村に挨拶をする。


 おはようと挨拶をされ、おはようと返す。

 これも退屈な人生の一部。


 しかし俺は内に秘める日常に対する倦怠感を隠し、明らかに意識してつくった笑顔と明るい言葉で周りに挨拶していく。

 人生において敵をつくってはいけない。

 非日常を求めながらも日常を過ごすために必要なことである。



 しかしながら俺の人生においてすでに非日常的なことが起きているとしたら、その1つはこの苗字であろう。


『桐原 士道』


 文字にしてみるとそこまで異様なものではない。多少、士道という名前が珍しいかなと思えるくらいだ。しかし、この苗字はご先祖様の誰かが無理やり変えたものであった。


 きりはら――俺のご先祖様で最初にこの性で呼ばれた者は漢字でこのように与えられた。

 切腹、と。切腹と書いてきりはら。


 なぜこのような物騒なものになったかは俺も両親から幼い時に少しばかり聞いただけだから記憶が薄いが、切腹を命じられた大名であるご先祖様の1人が逃げ出したそうだ。

 その結果、侍の恥さらしとなった一家全員は切腹という性を名乗らされるようになったという。詳しい切腹の理由は分からないが、戦で負けたとかそういったことなのだろう。

 昭和の辺りで切腹という性は余りにも名乗れないということで桐原という苗字に変わったらしい。


 さて、両親。俺の両親からもっとこの話を聞けば良かったが、それも今は叶わない。

 それというのも俺の非日常であるところの2つ目。それが両親の他界である。

 桐原と切腹。この話を聞いた頃――小学生の高学年辺り――の一週間後に両親は交通事故によって死後の世界へと旅立っていった。事故の原因はよく分かっていない。当時の俺は小学生。警察に上手く誤魔化されたとしか思えない。……本当は殺されたのかもな。





 登校風景は日常。授業風景も日常。

 退屈感丸出しな中をどうにか愛想笑いで過ごし、帰宅路につくことができた。

 ちなみに部活はやっていない。強いて言うなら帰宅部だ。だって、あんな放課後になってまで無意味に疲れることや頭を使うことやりたくないだろ? まして怒られるなんてナンセンスだ。


 だから俺は放課後はすぐさま学校から飛び出す。飛び出すといっても校門から歩いてだが。


 ここからもいつも通り。

 帰宅途中にある廃工場で犬猫達に餌をやり、犬猫達であったものを見上げる。

 それで帰宅途中でやるべき仕事は終わり。別に犬猫は好きじゃないが、これも先行投資だ。こいつらが非日常を連れてきてくれるかもしれない。


「……今日も誰か来てやがったか」


 廃工場内を一通り見ると、餌を入れる皿が俺のものの他に2つ。そのどちらもに餌は入っており、入れたばかりであろうミルクも入っていた。


「まあ家の事情で動物を飼えないやつらがここに来て欲望を満たしているんだろうな」


 欲望。動物と戯れたいという欲望を。

 決して俺のような抗えないほどの醜い衝動ではなく。


「しかしアレを見られたら厄介だな。俺がやったことだが、変に誤解されるのも面倒臭い。……場所を移すか」


 廃工場の建物から出て、敷地内の茂った草むらをうろついていると、


「あれ? 桐原君!」

「……先輩、何しているんですかこんなところで」


 背後から声がした。


「……菅原さん、戸村」


 振り返るまでもなく声で分かった。

 分からなきゃアンチだとファンクラブのやつらに殺されかねない。

 いや、その前にこの2人の機嫌を損なうだろう。


「やあ、2人とも奇遇だね! こんなとこで何しているかって? いやー、この工場って犬や猫がたくさんいるだろ? 俺の暮らすアパートだと飼えなくて、たまにこうして見に来ているんだよ。もちろん、小遣いの中から餌を買ってきて。こんな目立ちにくいとこにいるから面倒を見ているのは俺だけかと思ったけど2人もなのかな? やっぱり動物っていいね。心が癒される」


 よくもまあこんなスラスラと嘘が出てくるなと我ながら感心しながらまくしたてる。

 2人の方へ振り返る頃には朝のようなつくりものの笑顔が貼りつけられている。今ついている嘘のように薄っぺらい笑顔が。


「そ、そうなんだ……桐原君も。実は私も!」

「やっぱり! 菅原さんは優しいね」


 菅原は俺のクラスメイトにしてクラスで一番人気のある女子生徒だ。

 誰にでも笑顔で挨拶をし、誰にでも優しいから他クラスからも人気が高い。そして学年どころか学校の中でも5本指に入るほどの美貌を持っている。

 少し茶髪なのは地毛らしく、その髪を長く伸ばし後ろで一括りにしている。顔は綺麗と表現する方が良いだろう。化粧はしていないにも関わらず白く、目鼻立ちは整っている。胸も大きい。これで誰にでも優しいのだから人気があるのは分かる。ちなみにこれまで彼氏はいなかったらしい。これからもつくる予定があるからは未定だとか。

 誰にでも優しい菅原と、誰にでも愛想笑いをする俺。だからこんな風にばったりと会えば会話するくらいには仲が良かった。


「……先輩。私もいるんですよ」

「おお、悪いな戸村」


 俺を睨む戸村も人気が高い。それも男女問わず。

 小さい体に細い手足。顔は綺麗よりも可愛いと言うべきだろう。黒く肩まで伸ばした髪をサイドテールにしておりそれはよく似合っている。本人曰く、誰かが似合っていると言ってくれたから最近はずっとこうしているらしい。俺には誰か見当もつかないが。

 その幼い外見にも関わらず、彼女の性格は一言で言えば意地っ張り。何でも1人でやろうとして、そして失敗する。そのため周囲が放っておけず、妹のように扱っているのだとか。それも本人は不服そうだが。いつもうーうー唸っている。

 こちらも彼氏はおらず、しかし学校全体が兄姉みたいなもので誰も男を寄せ付けていないのが原因であると俺は推測している。

 戸村も俺と同様に1人暮らしをしているらしく、スーパーで買い物をしているところを見かけたらしく向こうからよく話しかけに来るようになった。


 無視する形になってしまった戸村に謝りながら、俺はさりげなく廃工場の出口に体を向ける。帰ろう、と示す。

 2人もそれに異論はないようで出口に向かいだした俺に着いてくる。何やら2人だけで会話しているようだが俺には聞こえない。


「2人はここによく来ているのかい?」


 ……最近、ここに2つの餌皿が置かれるようになった。しかし、ずっと以前からここに出入りしていたとなると俺の危機管理が甘かったことになる。


「ううん。私は先週からだよ。帰りに歩いてたら犬の鳴き声がして来てみたの」

「私もそのくらいです。猫がここに出入りをしていたので着いてきてしまいました」


 菅原は犬派で戸村は猫派なのだろうか。2人のイメージに合っている。


「そうなんだ。俺も最近ここに来始めてね。2人が来るなら俺も毎日来ようかな」


 あくまで社交辞令的に2人に愛想を振りまく。


「ほんと! 私も毎日放課後ここに来てるから! 何時に来るか決めておこうよ!」


 先ほどの俺の詭弁に負けないくらいの勢いで菅原がまくしたてる。


「……なら私は後で先輩にメールしますね。菅原先輩は桐原先輩と口頭だけで、約束してください」


 なぜか冷気を伴うような声で戸村が言う。

 確かに俺は戸村のアドレスを持っていて、菅原のは持っていない。

 しかし、なぜそんな菅原に喧嘩売るような真似を。


「――っ! じゃあ明日の放課後、ここに来てね桐原君。……これ私のアドレスだから」


 絶対にファンに見せられないような顔を一瞬だけ覗かせ、すぐに元の笑顔に戻ると菅原は俺にアドレスの書いた紙をよこした。


「……私も後でメールしますね」


 そのまま2人は一緒に帰っていった。仲が良いのか悪いのか分からない。


「……さて、俺も帰るか」


 チラッと、廃工場の方を見て、俺は帰宅路を再び歩き出した。


 歩き出したところで前から走ってくる者がいることに気づいた。


「お、お前……菅原さんとこんなとこで何してたんだ!」


 そう言いながら手に何やら光るものを持って走る男に見覚えは全くなかった。制服からして同じ高校の生徒なんだなと分かるくらいだ。


「連れ込んだんだろ? お前が菅原さんを無理やり連れ込んだんだろ! お前が全部悪いんだ!」


 そう言って手に持つ光るもの――ナイフを俺に向けながら突進してくる。


 ――ヤバい。避けないと。


 この距離ならまだ十分避けることはできる。

 横にずれ、そのまま後ろを向いて逃げようとした。

 いくらなんでもあんな非日常は勘弁だ。


 だが、それは叶わなかった。逃げることなんて最初からできなかった。


 ドン、という衝撃があった。遅れて背中に熱さが宿る。そしてさらに遅れて痛みが。


「あ……え……?」


 何があった?

 まだ振り向いてはいない。ナイフを持っているのは前にいる男だ。

 首だけ後ろを向くと、


「……お前が、お前が! 戸村ちゃんを汚したんだな! 戸村さんも、菅原さんにも告白をみんな断られた。その理由が2人ともお前が好きだからだ! ……なんでお前が」


 後ろには別の男が。こいつもおそらく同じく生徒の1人だろう。手にはナイフの柄のようなものが見える。


「うわぁぁぁぁぁぁ!」


 そして前から走ってくる男のナイフが俺の腹部に突き刺さった。

 逃げることなどできなかった。避けることさえもできなかった。


 薄れゆく意識の中で思ったことは、


 ――勘違いかと思ったけど、俺モテてたのか。ならとっとと2人ともモノにしておけば良かったな。


 という自分勝手な欲望だけであった。

 こうして直接的な死因は桐原よろしく切腹のような形で腹を割かれたことで俺の生涯は1度終わったのであった。





 そして2度目の人生が始まる。

 白い空間で神に出会い、非日常が始まるのである。


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