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秘め恋  作者: 蒼崎 恵生
27/32

壊れた関係


 せっかくアオイと二人きりなのに、着信を知らせるバイブの音がスマートフォンを低くうならせる。消音モードにしておけばよかった。マサが後悔していると、バイブ音に気付いたアオイはそれを気にした。


「出なくていいの? さっきからずっと鳴ってるけど」


「いいよ。後でかけ直すし」


「そう?」


 いったん、着信はやんだ。しかし、直後、再びマサのスマートフォンは振動した。無視しようかと思ったが、こんなに鳴らしてくるなんてよほどの緊急連絡かもしれない。


「実家で何かあったかな?」


 渋々スマートフォンの液晶画面を一瞥いちべつすると、そこにはリオの名前が表示されていた。すぐ隣にいるアオイに見られてしまわないようすぐにスマートフォンをポケットに放り込んだが無駄だった。


「この前店でイクト君と話してた子、だよね……?」


 あえてそんな風に尋ねるのはアオイなりの配慮だろう。イクトの元彼女で過去にマサとも一悶着あった女性、アオイの中でリオはそう認識されているはずなのだから。


「何か大事な用でもあるんじゃない?」


「だとしても、もう関係ないし」


「そう……」


 アオイは何でもないようにマサから視線を外し窓の外に広がる夜景に目を戻した。どこか面白くなさそうな横顔。嫉妬の表情だったらいいのにと、マサは思った。


 俺達が正式な恋人なら、こんな時、アオイのことを優しく抱き寄せ「好きなのはアオイだけたから妬く必要ないよ」そう言ってキスできるのに。




「だよねー……」


 独り呟き、リオはスマートフォンをテーブルに置いた。何度かマサに電話をかけてみたが応答なし。時間も時間だ。日付が変わったばかりの深夜帯。連日バイトの彼はすでに寝ているだろう。そう考えても、電話をかけたい衝動を抑えられなかった。


「自分の気持ちが分からないや。何がしたいんだろ、私……」


 高校時代、イクトとの交際に悩みマサを利用した。女の扱いが上手く一人の女に執着しなさそうなマサは、都合良く寄りかかるのにちょうど良い相手だった。実際マサはリオと関係を持った後もさして変化しなかった。それどころか、そのことが原因で仲違いしたイクトとも仲直りしてしまう始末。そこへ行き着くまでマサとイクトの間にも様々な葛藤があったのかもしれないが、それでも、当事者のリオとしては複雑な気持ちになってしまうのである。


「私って一体何だったんだろ」


 これでも平均以上に異性の人気を獲得してきた自負がある。それなのに、結局誰と付き合っても相手の心に自分の存在を刻めなかった。そのことがリオの心を憂いに染めた。


「ねえ、私の魅力って見た目だけ?」


「性格も含めて本気で好きだったよ。何度も言ったけど」


 そう答えたのはイクト。


 ここはイクトのアパートだ。リオは地元から遠方のこちらへ訪ねて数日ホテルを借りていたがそれも毎日のこととなると金がかかってしまう。それでもなぜか自宅に戻る気にはなれない。うまく言葉に出来ないが、マサに再会してから、初めて訪れるこの地に未練のような感情が芽生えたのだ。そんなリオを見兼ね、地元に戻るまでここに居ていいとイクトが言った。元彼のよしみなのか、リオはイクトの厚意に申し訳ないと思いつつずるずるとこうして甘えていた。


 先日マサのバイト先でイクトと話し合い、イクトとの関係には決着がついた。


 イクトは私のことを本気で想ってくれてた。身勝手な私の行動も許すって言ってくれた。全部俺が悪かった、そう言って……。


 そこで気はすむはずだった。イクトの言葉には続きがあった。


『本当に、リオはもう何も気にしなくていい。罪悪感とかも忘れてよ。俺いま好きな人いて、その子と付き合えはしないけどそれなりに満足してるから』


 イクトの好きな人がカフェの店長アオイだということは言われなくてもすぐに分かった。店内で懸命に働くアオイに視線を注ぐイクトは、それはもう優しい目をしており好意がだだ漏れだった。そのことには不思議と腹は立たなかった。イクトへの気持ちはとっくの昔に消化されていたのだろう。


 リオの心に引っかかっているのはマサの存在だった。過去に一方的に利用し彼を嫌な立場に追いやった罪悪感、もちろんそれも大きいが、それ以上に思い当たることと言えば恋するマサを見てしまった事だ。マサもまた、イクト同様、愛しげにアオイを見ていた。


 男って残酷なほど正直だよね。ちっとも隠そうとしない。


「アオイさんって結婚してるんでしょ? 望みのない相手をあえて好きになるとか。二人とも馬鹿なの?」


 元彼相手に、つい毒づいてしまうリオである。


「ちょ、馬鹿は言い過ぎだろ〜。否定できないのが悲しいな」


「アオイさんの何がそんなにいいの? けっこう可愛いとは思うけど、あのレベルならその辺にゴロゴロいるじゃん。年上だし。すぐにおばさんだよー」


 普段ならもう少し取り繕うが、あらゆる感情をぶつけたイクトの前では言いたい放題してしまう。リオはやさぐれていた。


「リオ、しばらく会わない間にキャラ変わってないか? 付き合ってた頃はもっと丸かったのに」


「そうだっけー? そんな昔のこともう忘れた」


「昔って。あれから二年も経ってないだろ〜」


 呆れ顔で突っ込みつつ、見放さないのは面倒見の良いイクトの良さか。リオは、改めてマサを訪ねたことで芽生えた未知の感情に戸惑い、こうして元彼相手に八つ当たりじみたセリフを投げることしかできなかった。


「人はね、一分一秒変化していくものなんだよ」


 などと言いながら、リオはテーブルに突っ伏してダラダラとスマートフォンの画面をスクロールさせた。現在大学で仲良くしている友人らの、インスタグラムの投稿がズラリと並んでいる。皆、趣味に恋愛に充実した日々を送っている様子。リオも周りに合わせてそれなりに楽しげな画像を投稿してはいるが、恋にいて、自分は誰よりも満たされていないと感じる。恋人と幸せそうに過ごしている状況を匂わす友人の投稿を見てしまうと、虚しさが心を覆う。


「皆、すごいよね。唯一無二の恋人なんてどうやって見つけてるの? イクトは? 私の事忘れてアオイさんに惹かれるって、どういうこと? ヤキモチじゃない。真面目に教えてよ」


 スマートフォンを無意味にスクロールさせながらリオは言う。気だるげな口調とは裏腹に、言葉の奥に託された心情は真剣なものだった。イクトは二人分のミルクティーを淹れテーブルに置くと、リオの隣に腰を下ろした。


「好きなんて気持ち、説明できないよ。初めて見た時、可愛いなって思った。もっとこの子の事知りたいってなってって。アオイちゃんの時も、リオの時も、それは変わらない。どっちがいいとか、比較したりもしてない」


「でもさ……。私の事忘れられるほどアオイさんは魅力的なんだよね?」


 唸るように困りつつ、イクトは懸命に考えて答えを返した。


「んー。なんて言うんだろなー。アオイちゃんって不器用なんだよな。人のために自分を犠牲にしすぎるとこがあるし、かと思えば旦那さんのこと一途に想ってる時は気が強かったり。俺も振り向いてもらいたくて結果アオイちゃんに嫌な事しちゃったけど、それでいつまでも恨んだりしてこないし……。まあ、俺の事なんて眼中に無いってだけなんだろうけど。そういう、危うい所もいいなぁって思ったんだ」


「そんなに好きなんだねー……。人妻って知って引かなかったの?」


「引くもなにも。まあそりゃ知った時はビックリしたけど。案外すんなり受け入れられたかも。言われてみればって納得する部分たくさんあったし。既婚者独特の落ち着きとか強さとか、アオイちゃんは持ってる」


「なるほど。そういうとこが年下男子の心をつかんで離さないんだねー。私には無理だー」


 投げやりに呟くリオを、イクトはなだめた。


「リオにはリオの良さがあるって。アオイちゃんと比べることないよ」


「そうは言われても……」


 リオはどうしたってアオイのことを意識してしまう。それは、ああいうタイプの女性が身の回りにいないせいかもしれないし、マサの初恋相手だから興味本位で気になるだけかもしれない。


「それなりに恋愛してきたつもりだけど……。恋ってよく分からないね。身勝手な自分との戦いみたいに感じる」


「それ、その通りかもな」


「あのマサ君が、初恋かぁ……」


「なー。俺も最初は信じられなかったよ。女のことなんて単なる女としか見てなかったアイツがなー」


「イクトは、マサ君の応援するの?」


「まあ、な」


「最終的にうまくいくわけないって分かってるのに?」


「そうとは限らないよ。アオイちゃんマサにはやけに親身だし」


「親身になるよ。自分をチヤホヤしてくれる男なんて、女にとっては気持ち良いもん」


「偏見もあるだろ。その言い方はえげつないぞ」


「イクトはアオイさんを美化しすぎ」


「そうか?」


「そうだよ」


 ハッキリした物言いで、リオは言葉を継いだ。


「マサ君だって、叶わない相手だから都合良くアオイさんのこと美化してるんだよ。きっと。そうでもしてなきゃ片想いなんて無意味なもの継続してる意味ないし」


「ずいぶん厳しい意見だな。さっきからやけにアオイちゃんに当たりきつくない?」


「かもね。だって嫌いだもん。アオイさんみたいな人」


「ハッキリ言うなぁ……」


「自分を見てるみたいで何だかねー。手に取るように読めるよ、アオイさんの真意が」


「この際、好き嫌いは仕方ないとしても。そんなにしゃべったことない相手に決めつけは良くないぞ」


「イクトからおおまかな話聞いたしそれで充分だよ。私そこまで馬鹿じゃない」


「マサのこと、本気で気になり出した?」


「さあ。分からない。分かりたくもない」


 雑に立ち上がりスマートフォンを滑らせるようにテーブルに戻すと、リオはバスルームに向かった。


「シャワー借りるね!」


「バスタオルいつもの所な」


「分かってる」


 リオの背中から憤りが伝わってくる。イクトはただならない気分で彼女の姿を見送った。



 離婚したいと願うアオイの意思は固い。分かっていてもひとしは引き下がるつもりはなかった。アオイの心を開くためにまず自分がするべきなのは、玲奈れなとの関係をきっちり終わらせる事。


 営業という職業柄、顧客との時間や営業所での雑務以外はわりと自由に時間を割くことができた。そういった隙間時間を利用し、仁は玲奈を呼び出した。玲奈は平日休みのアパレル店員をしている。今日は玲奈が休みの日だと前もって本人から知らされていたので助かった。冷静に自分の立場を省みた今、人目も気になり彼女のアパートへ訪ねようかと考えたが、それだと別れ話がまとまらずなし崩し的に抱き合ってしまいそうだ。それだけは避けなくてはならない。


 今まで玲奈とのデートでは行ったことのない遠くの喫茶店へ彼女を呼び出した。別れるのなら思い出のない場所の方が傷も最低限ですむと思った。これまでとは違い、玲奈を待つ仁の気分は重かった。自業自得とは言え、一方的に別れを告げなくてはならないのが憂鬱だった。楽しそうに談笑している主婦らしき中年女性や、商談中らしきサラリーマンの客達に成り代わりたい。この場から逃げ出せたらどれだけ楽だろうか。


 逃げ出す勇気もなく、仁は貼り付いたように窓際のテーブル席に腰を下ろし、間もなく運ばれてきたコーヒーを喉に流し込んだ。そうしているうちに玲奈が来た。いつも通り、仁好みの清楚な格好をしている。今から、真面目な彼女の想いを打ち砕かなくてはならないかと思うと胃が痛くなってきた。


「お待たせ。仁仕事中なのにごめんね。途中、渋滞してて」


「ううん。大丈夫。今日はアポもないし、最低限の仕事はすませてあるから」


 玲奈が注文したアイスティーが運ばれてくるまでの間、仁はいつも通りの会話を心がけた。彼女のアイスティーが半分ほど減った時、ようやく重たい口を開く。


「玲奈。ごめん。別れてほしい」


「その必要はないよ」


「え?」


 予想外の玲奈の言葉を受け、仁は目を見張った。


「少し前にアオイと会って話した。仁とは別れるって言ってたの。やっと仁はアオイと別れられる。私達、もうコソコソする必要ない。これからは正々堂々一緒に出歩けるね」


「……ごめん。それは無理だよ」


「どうして? 意味が分からないんだけど」


 玲奈の微笑はかすかに歪んだ。めげそうになるも、仁は言葉を振り絞った。


「結婚って、そんな単純なものじゃなかった。好き嫌いだけじゃない。俺、甘かった。アオイに別れたいって言われて初めて、彼女の存在の大きさを知ったんだ。上手く言い表せないけど……。自分で考えてた以上に、アオイとの絆を感じてる」


「嘘だよね? アオイのことは好きじゃない、好きなのは私だけだって言ったよね?」


「ごめん。玲奈のことは好きだけど……。俺はやっぱりアオイの夫でいたい。離婚はしたくないんだ」


 玲奈の瞳にうっすらと涙がにじんだ。それは瞬く間に大粒の雫に変わり、彼女の頬を滝のように濡らした。店内客達の存在もはばからず、玲奈は語気を強めていく。


「どうして? 私のことだけ愛してるって言ったのは嘘? 私との子供もほしいって言ったよね。アオイとは同情で一緒にいるとかさ! 全部作り話だったわけ?」


「ごめん。本当にごめん!」


 テーブルに両手のひらと額をつけて仁は頭を下げた。周囲の客達の視線が突き刺さる。羞恥心も覚えたが、今はただ、玲奈にこんな思いをさせてしまう自分が不甲斐なく情けなかった。できることならこの場から消えてしまいたいと仁は思った。


「もう、俺のことは忘れて欲しい。玲奈にはもっとふさわしい人がいる。だから……」


「綺麗事ばっかり、うんざりする」


 玲奈は立ち上がり、グラスに半分残ったアイスティーを氷ごと仁の頭にぶちまけた。仁が身につけたスーツの上半分と彼の髪が容赦なく濡れる。ほんのり香る茶葉の匂いですら、仁をせせら笑うかのようだった。店内のざわつきを無視して、玲奈は大きく息を吐いた。彼女はひどく落ち着いた口調で、最後にこう言い置いた。


「なるほどねー。アル中の親持つ貧乏育ちにとっては死んでも手放せない存在だよね。アオイは自分も実家もお金持ちだもん。一応悲しんで引き止めてはみたけどさ、別れられてせいせいする。無能で不幸の塊みたいなアンタの母親、大嫌いだったし」


「……」


 乱暴に千円札をテーブルに置くと、店内の人々の動揺など素知らぬ顔で玲奈は店を出て行った。最後の罵倒は耳に痛かったが、仁は深く安堵した。これで玲奈とのつながりはてた。あれだけ嫌われれば、今後だらだら関係が続く心配もない。


 思ったより大事おおごとにならなくてよかったな。


 安穏とした気持ちになる。玲奈を呼び出す前から胸に貼り付いていた緊張感は一気に霧散し、濡れた髪やスーツすら穏やかな気持ちの理由になった。これでアオイとやり直す第一歩を踏み出せる。


「お兄さん、派手にやられたねー。大丈夫かい?」


 喫茶店のオーナーらしき初老男性がタオル片手にこちらへ駆け寄ってきた。


「お騒がせしてすみません。大丈夫です」


 笑顔で対応できる。心は晴れやかだった。



 その日も、イルレガーメは多忙を極めていた。暦の上では秋なのだが、九月は現代ではもう立派な夏の仲間だ。まだまだ激しい暑さを記録する九月下旬。マサのバイト期間が残りわずかとなった。


 アオイは相変わらず暇な時にぼんやりしており、かといって何かを相談してくる様子もなく、マサはひたすら友達の距離感で彼女と接する日々だった。アオイが悩む理由はきっとただひとつ。旦那との関係についてだ。旦那の浮気が分かって、それきり、アオイは具体的な次の行動を起こしていない。離婚するなり関係を修復するなり、何かしら考えているのだろうか。それとも、そんなことも考えられないほど気力を消耗してしまったのだろうか。何にせよ、相談されていないマサはあれこれ推測してはその都度気持ちを揺るがせていた。


 ただ、アオイが頼ってきた時には全力で彼女の力になる。そう決めて。


 ここの短期バイトももうすぐ終わりかー……。


 マサは迷っていた。短期バイトのままここを去るか、バイト期間を延長してもらえるようアオイにお願いするか。学業との両立は大変かもしれないが、今あんな状態のアオイを放っておくのは心配だった。結局自分には何もできないかもしれないが、もしも彼女に何かあった時真っ先に気付ける立場に居たい。もしバイトをやめてもアオイとはラインで連絡を取れる。それでも、もしバイトをやめたらアオイは遠慮して連絡してこなくなるかもしれない。そういったわずかな気がかりも悩みのタネだ。


 今はバイトとして傍にいるから、社交辞令的な感じで気を遣ってラインしてくれてるのかもしれないし。


 ほぼ毎日しているラインも、近頃は途絶えることがある。それも決まってアオイからの返信がなくなることがキッカケで。途絶えるといっても一日二日の短い間だが、店での様子の変化を照らし合わせても、マサは過剰なまでに気になってしまうのだった。


 客足も落ち着き雑談する余裕ができると、食器の整頓をしているアオイにマサは話しかけた。


「店長。相談があるんですが……」


「どうしたの?」


 穏やかな面持ちでアオイはマサを向いた。いつも通りの彼女の対応に、マサは安堵あんどする。


「初めは夏だけの短期バイトのつもりで入ったんですけど、やっぱり長期で続けたいんです。もし可能なら、後期の授業始まっても手伝わせてもらえませんか?」


「私としてはすごく助かるけど、大学は大丈夫? マサの負担にならない?」


「大丈夫ですよ。体力には自信あるし、ここでの仕事は社会勉強になるんで」


 社会勉強。そう口にしてみるもののそれは口実でしかないとマサは思った。短期バイトと口にして改めて思い知った。このままアオイと離れたくない。


「そんな風に言ってくれて嬉しい。でも……」


 アオイが口を開いたのと同時に、新しい来客があった。扉が開き、荒々しいハイヒールの足音が彼女を目指した。アオイは一瞬言葉を詰まらせ、けれども次の瞬間には店長の顔を取り戻した。


「玲奈! 来てくれたの?」


「…………い」


「え?」


 久しぶりに見る玲奈の顔は別人のようにやつれていた。何日も寝ていないのか、目の下にはクマが出来て頬もこけている。いつもは艶があり丁寧に整えられている髪もパサパサだった。彼女は強引な足取りでカウンターに近寄ると、そこに置いてあった砂糖入りの瓶を掴み勢い良くアオイに投げつけようとした。


「嫌い! アンタなんか居なくなればいい!! いっそ死んでよ!!」


「アオイ……!」


 少ないながらも客の居た店内。客達の視線は玲奈とアオイに注がれた。マサは、ちょうど手に持っていた木製トレンチを盾に、アオイの前へ駆けた。



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