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ジョッシュのアーチ  作者: Tom Openrange
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彼が再び下りてきた。僕が座っているところへ跳ねるように駆け寄ってきて、隣に腰を下ろした。満面の笑みを浮かべて、こちらを見ている。僕も安堵と嬉しさとで、自然と頬が緩んだ。

「それにしても、よくここがわかったね。他の場所も回ったの?“窓”とか“壁”とか・・・」

僕は首を左右に振りながら言った。

「ジョッシュ、僕はね、“窓”や“壁”と言われても、どのアーチのことかわからないんだよ。何しろここ“外界”では、別の名前で呼ばれているからね。たとえば、今、僕たちがいるこの場所は、ゴールデン・カセドラル、つまり“黄金の大聖堂”と呼ばれているんだよ。

「ダイセードー?」

「そう、大聖堂というのは、大きな聖堂ということ。聖堂とは、人々が神様に祈りを捧げる場所のことさ。“内界”でいうところの、キヴァみたいなものかな」

「ふーん」 彼はピンとこないのか、気のない返事をした。まあ、実際のところ、キヴァと聖堂とではあまりにも造りが違い過ぎる。彼には想像もできないことだろう。それにそもそも、キヴァという呼び名だって“外界”の人間が勝手につけたものではないのか。

「他にはどこへ行ったの?」

「うーん、たぶん“弓”と“壁”と“岩”だと思うんだけど・・・。石積みがあったからね」

「石積みを見つけたの?それは凄いね!」 彼はとても驚いたようで、声が大きくなった。

「あと、残るは“窓”なんだ。いくつか見当はついているんだけどね」

彼は黙って相槌を打った。

「でもここで君に会えてよかったよ。これから自力で“窓”を探すのは大変だもの」

ジョッシュは笑顔を見せて言った。「それはちょうどいいや、こっちも残るは“窓”だけなんだ。一緒に行こうよ」


トレイルヘッドの駐車場まで戻ると、僕のジープを見てジョッシュの目が輝いた。

「これを使って来たの?それは凄いや!遠くの方で走ってるのは見たことがあるけど・・・砂ぼこりを上げながらね。でも、こんなに近くで見たのは初めてだよ!」

ジョッシュの興奮した様子は、車に夢中になる年頃の少年の反応そのものだった。ジープの回りを何度もウロウロし、上から下まで舐めるように見ている。あまりの嬉しさに、いつまでたっても興奮が冷めないようだった。

「ジョッシュ、早く行こうよ」

彼を助手席に乗せたものの、ハンドルやダッシュボードをもの珍しげに眺めるばかりで、なかなか“窓”への道を教えてくれない。僕はしびれを切らして言った。

「早くしないと“内界”に帰れなくなるよ」

彼の顎を見たが、アーチの印はかなり薄くなっていた。事情を知らない人が見たら、そこに山のような形をした線が入っていることに気づかないかもしれない。

「ああ、そうだったね。でもこれを使うと、ものすごい速さで進めるんでしょ?歩くことを考えると、もうちょっと見てても大丈夫だよね?」 ドアや窓をいとおしそうに撫でながらジョッシュは言った。

確かにそれはそうだが、“内界”のことが心配だ。ここに来るまで、相当の時間を費やしてしまった。

それに何より、彼の顎の線が消えてしまいそうなことが気になった。

「とりあえず出発しようよ。そのまま車の中をいろいろ見ててもいいからさ」

そういってエンジンをかけると、驚いたようにジョッシュは腰を浮かせた。「ワーォ!」

そして車が走り始めると、今度は窓から見える景色に関心が移ったのか、外ばかり見ていた。きっと風景が速く流れていくことが珍しいのだろう。もう声を上げることもなく、ただ目を見開いて口を大きくあけたまま固まっていた。

ホール・イン・ザ・ロック・ロード まで戻り、そこからはジョッシュの言うとおりに車を走らせた。30㎞ほど走ってから脇道に入り、トレイルヘッドに着いた。

「ここだよ、“窓”があるのは」


挿絵(By みてみん)


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