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東の空がかなり明るくなってきた。岩の白さがいっそう際立っている。
できるだけ急いで、一刻も早くジョッシュを見つけ出さないといけない。
僕は湖に背を向け、岩肌に足を掛けて急な斜面を登り始めた。いくつもの大きな岩が目の前に並んでいるのが見える。まるでゴブリン(子鬼)の頭のようだ。僕は彼らの頭を踏みしめるようにして進んでいった。まず目指すのは、来るときにジョッシュに追いついた場所だ。彼が足を怪我したとき、ちょうどいい具合に台座のような形をした平たい岩が2つ並んでいるのを見つけ、そこに腰掛けて傷の手当てをした。まずはその場所を目指そう。
時折、休憩を取りながら、そのつど空を見上げた。澄んだ青い光が、徐々に強くなっていく。“内界”のくすんだ空を見慣れたせいか、今見ている青空と、ところどころに散らばった白い雲とが、まるでスクリーンに投影された人工的な絵柄であるかのように思えた。これからの道のりを考えると頭が痛くなるが、そんな不安を忘れさせてくれる素晴らしい青空だった。
最初の目標である“腰掛け岩”はすぐに見つかった。僕はその一つに腰を下ろし、一服した。隣の台座に、ジョッシュが腰掛けていた光景が目に浮かぶ。あのときの彼は、とても不安そうな顔をしてたっけ・・・何だか懐かしい。あれから自分でも信じられない体験をしたわけだが、このとおり無事戻って来て、今この大地を踏みしめていることを思うと、感慨深かった。
次の目標はスロットキャニオンを抜けたところにある岩絵だ。そこまでいくには、岩山の頂を2つ越えないといけない。行きとは順序が逆なので、まずは高い頂、そして次に、少し低い頂が現れるはずだ。僕は遠くに見える高い方の頂を目指して歩き始めた。
坂道は、思ったより急だった。来るときはこの急斜面を下ったはずだが、ジョッシュの姿を見つけ夢中になっていたせいか、これほどの勾配があることに気づいていなかった。ゼーゼー息をしながら頂点に達し、その先を見渡した。手前の少し低い位置にある頂を越えれば、スロットキャニオンの入口だ。とにかくそこまで頑張って行ってみよう。
スロットキャニオンの入口で、念のため空模様を確かめた。今、自分がいる場所が晴れていても、上流が雨だと鉄砲水が出る恐れがある。
空の端から端まで見渡したが、先ほどと変わらずところどころに白い雲が浮かんでいるだけだったので、岩の隙間に体を滑りこませた。無事に通り抜け、脇の岩壁に先住民の岩絵があることを確かめた。お椀を伏せたような形と、丸い円。今となっては、その円は満月を表しているのではないかと思えてきた。そして連なる岩山のように見えるお椀の形は、ナチュラル・アーチだ。
この後は、谷に沿ってひたすら行けばいいはずだ。そのうち、ブロークン・ボウが見えてくることだろう。




