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しかし、そういう彼女も相変わらず“外界”に関心があるようで、そこがどんなところか、しきりに様子を訊いてきた。例えば人々はどんな服を着ているかとか、何を食べているのか、どのような動物がいて、どんな草花が咲いているのか等々。できるだけ詳しく、かつ正しく教えてあげたいという気持ちがある一方で、彼女が見たことのないものをわかるように説明するのは結構難しく、途中でお手上げになって最後は当たり障りのない回答をしてしまうこともしばしばだった。たとえば、食事のことを訊かれたときなどは、肉から野菜から何でも食べている、という話はできても、どのように調理しているかを説明するのは難しかった。調理を説明するには道具や器具のことも話さねばならないが、それらの名前を出したところでそれが一体どんなものかわからないので、まずはその解説からしないといけない、といった具合だ。そしてこの、道具や器具を言葉で伝えるという行為がとても難しい。いつも途中で投げ出してしまい、結局のところ最後は「こことそんなに違わないよ」という回答でごまかしてしまうのだった。そして、そのつど、彼女に対して申し訳ない気持ちで一杯になった。
ガスやサンドラとも、これまで以上に話をする機会が多くなった。この集落のずっと先に“蛇の頭”と彼らが呼ぶ場所があることは以前にも触れたが、それ以外にも彼らの旅の様子などをいろいろと聞かせてくれた。道のところどころに立つ巨大な木は道しるべの役割を果たしているが、実は人間が姿を変えたものだとか、真ん中が大きく窪んだ巨岩の前では無心になって通り過ぎないと体が岩に飲み込まれてしまうだとか、中には迷信めいた話も多かった。さらには、地面に大きな円形の穴が開いている場所があり、そこには水がたまってちょっとした池のようになっているのだが、その下は“神の泉”とつながっているらしい、という話もあった。“神の泉”で誰かが落とした髪飾りが、その池の水面に浮いていた、というのだ。
もしその話が本当だとすると、この“内界“の地面の下に水脈があることが考えられる。しかし僕は、それどころか巨大な湖が広がっているのではないかと疑っていた。というのも、一度だけジョッシュに連れられて“花の家”の奥にある牧場を見に行ったことがあるのだが、そこではある特定の場所だけ、青々とした芝に覆われていたのだ。牧場というだけあって、かない広い土地に牛たちが放されており、ゆったりと草を食んでいた。何でもジョッシュによると、芝が生えている場所は土地の水分が豊富で、何もしなくても草が枯れることはないらしい。つまり、土地の下、それも地面にかなり近い場所に、広大な水の層が存在するのではないかと考えられるわけだ。
とにかく“内界”には、ここの住人すらよく知らないことがまだたくさんあるようで、僕はそれらの話にとても惹きつけられた。このような不思議な話を少しでも多く聞きたかったので、ガスとサンドラの姿を見つけると僕はよく近寄っていって話しかけた。




