7話
マミちゃんは、メニューをじっくり熟読し、それからコーヒーと苺パフェを頼んだ。私はコーヒーと苺タルト。
メニューに可愛く描かれたいちごの絵を見て迷わず苺の入ったメニューにしようと決めたのだ。
「おまたせしました。コーヒーと苺タルトと、苺パフェです」
5分ほどできた。
苺パフェは、大きい硝子のカップに入っていた。
そこの方に敷き詰められているのはコーンフレーク。その上に苺のアイス。ピンク色のホイップクリームがあふれんばかりに盛られ、その上に苺、苺、苺。
タルトもこれでもかというぐらいに苺が使われていた。
想像したよりも大きくて幸せな気分。
フォーク、スプーンをそれぞれ手に取り食べ始める。
二人の間ではコウタの話ばかりだった。
マミちゃんは苺をスプーンの上に乗せながら言う。
「コウタは、中学校の頃とすごく変わってしまったんだよね……」
「コウタは中学校の頃どんなん人だったの?」
「ええとね。部活にすごく一生懸命でよく練習してたわ。よく質問にも来てたし。それにすごく子供っぽかったかな」
「あはは。そうなんだ!」
私は苺をフォークにぐさりと突き刺す。
「私はコウタと合唱団で一緒だったの」
「そうなんだ。音楽が好きなのね」
あ、美味しい。出来たてだ。
「そう。歌すっごく上手」
「そうなんだ!聴いてみたいなあ。」
生地もフワフワのサクサク。
ほっぺがとろけ落ちますー!
「成績も学年一位なんて……」
「受験生の私よりももう賢いのよ。なんだか腹が立つわねえ」
「あ、先輩なんですね……」
「ああ!気にしなくていいよ。敬語ってなんか他人行儀みたいで嫌じゃない?」
「ええ、でも。なんか……」
「いいよ。今まで通りにお願いね」
「うん。分かった。ありがとう」
気づけば皿の上のケーキはなくなっていた。
コーヒーをちょびちょびと飲みながら尋ねる。
「ええと。マミちゃん。あの、マミちゃんはコウタの事が好きなんですよね……?」
マミちゃんは溶けかけたアイスをすくう。
「……好き。裏切っちゃったけどね。後悔してるの」
「うらぎる……?」
その瞬間だった。
「えーー!マミー!なんでここいるのーー?」
金髪の女の子が近づいてきた。
一言で表すのなら、ギャルだ。
「わあ!アダコ久しぶりーー」
「ちょっとーアダコッてやめてよーお」
急に、変わったマミちゃんの態度に驚いた。
さっきまでがお嬢様キャラなら、今度はイケイケの最近の女の子キャラなのだ。
「足立だから、アダコでしょー。アダコにスミレなんて名前やばいくらい似合ってないんだもーん」
「ちょっとぉ。ひどーい!
……ん?この子は誰?」
私の方を指差す。
あぁ。人を指差すのは良くないよ。
「あーこの子?ウチの友達。高1なのよ」
「高1かぁ!わかーい」
「ウチらと2歳しかかわんないじゃーん」
「2歳は大きいよ。うん」
「マヂおばさんみたい、アダコ」
「やめてよーお!あ!忘れてたぁっ。今からも彼氏とデートなの♪マミは?彼氏できたー?」
「いませーん。ぼっちですよーだ」
「あはは。もういっそタクトとより戻せばいーのにー」
「いや、今は新しい恋に夢中なんで!」
「そっか。残念ー。うん!あ!マミの友達ちゃん。LINE交換しよー。はい!
……ばいばい!亅
嵐は過ぎ去った。
気づけばLINEの新しい友達にスミレという名前が加わっている。
「あ、ええと。あの、マミちゃん……」
「ごめんね。あの子は私の高校入ってからの友達なんだ」
「そうじゃなくて……」
「びっくりした?私の学校でのキャラ」
「とってもびっくりしました……」
というわけで、混乱しすぎ私はそこでマミちゃんと別れた。
……なんであんなに人格が変わるんだろう。
……タク卜って誰だろう。
……不思議な人だなぁ。
ぴろん!
スマホが振動した。LINEだ。
『やっほー。アダコだよ!』
『はじめまして。私はユキコです!』
『よろしくねユキコ!』
『うん!よろしくね』
ぴろん!
聞こえないふりして歩き出した。
歩きスマホは危険だからね!