5話
「俺は…」
コウタなのに、こんな可愛い彼女。
やるじゃん!
なんて頭の中で考えていた。
「俺は……」
「コウタ……?」
心配そうにマミさんはコウタを見上げた。
コウタは苦しそうな表情から、普通のにこにこした笑顔に戻った。
「まだ、答えはでないよ。ごめん。ほんとにごめんな、マミ」
その笑顔は見ていて苦しくなるものだった。
「コウタはなんでそんな顔するのよ……」
マミさんは声を荒らげるわけでも涙を流すわけでもなく、ただそう言っただけだった。
しかし、その一言は心臓にぐさりと突き刺さりそうなくらい刺があった。
重たい空気。
私はただ、マミさんとコウタを交互に見つめた。
「私が裏切ったことは悪いと思ってる。でもね私の気持ちは変わらないよ。ずっと待ってるから」
マミさんは公園をあとにした。
「コウタ。追いかけなくてもいいの?」
思わず尋ねた。
「…ご…め…」
「え…?」
「無理だ」
コウタはしゃがみこんだ。
「マミは、俺の彼女なんだ。だけど……、」
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中学校の入学式。
俺は、合唱団を辞め、音楽もやめようと考えていた。
憧れているサッカー部への入部を心に決めていたのだ。
だるい入学式も終わり浮かれて猛ダッシュで廊下を走っていた。気分は最高潮。
ブカブカの制服に、教科書がギッチリ詰まったスクールバックを担ぎそんな喜びを噛み締めていた。
「わあ!」
がしゃん!
小さな悲鳴と大きな物音に慌てて足を止めた。
「いたた……あー。やっちゃった……」
「ご!ごめん!」
慌てて駆け寄った。
どうやら今、俺は女子生徒にぶつかったようだったのだ。
大きな物音の正体は花瓶。
ひびが入り、割れてしまっていた。
初日からやってしまった。
その後先生にもこっぴどく叱られた。
しかしその思いと同時に運命を感じた。
その女子生徒に一目惚れしたのだ。
四季田マミという可愛らしい女子はどうやら吹奏楽部にはいっているようだった。
俺は吹奏楽部に入った。
クラリネット奏者の彼女に近づくため、俺は木管楽器のフルートを希望した。
部活に入って知ったのは彼女が2つ上の先輩ということだった。
俺は彼女を追いかけ、1番仲の良い後輩にはなれたと思う。
だけど、それだけでは嫌だった。
引退の吹奏楽コンクール。
告白した。
「少しだけ、考えさせて……」
そう言われたが次の日、オッケーをもらった。
高校生の彼女と中学生の俺。
つりあっているのか心配だったけど大丈夫だったと思う。必死に頑張って背伸びした。
だけど、それだけでは、だめだったのか……
「別れたいの」
付き合って一年半。そう告げられた。
年上の人を好きになってしまったと。
だけど、俺は嫌だといった。
マミのことを失わないように。
一度別れたが復縁した。
だけど、その時別れていればよかったのだ。
マミは、その年上の男と付き合っていた。
俺はマミと連絡をとるのをやめた。
高校は別のところを選んだ。
忘れようとした。
高校では初恋の人もいて、新しい恋をしたかった。
そんな時。
タイミングが悪すぎる。
ああ。気持ちがぐらぐらと動いた。
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「ちょっと!大丈夫?!」
コウタは泣き崩れたさっきから、ずっとかんがえてるようだったので見守っていたが、言わずにはいられなかった。
「なにがあったの!?私で良ければ力になる」
「……ごめん。ちょっと今日は帰る。塾、ちゃんと行けばよかったよサボりはダメだな」
そう冗談っぽく言ってコウタは走っていった。