4話
「ま、昔の話な」
「なんだよ。ときめいたのに!」
この感じ昔と同じだな。
それにしても、昔好きだったとは衝撃だ。
大親友だと思っていたから。
「そういえばコウタは今も歌ってるの?」
コウタはユキヤには及ばないが、かなり上手だったと記憶していた。
話していてわかるが彼はきっとテノール。
「いや、今は吹奏楽やってる」
意外な答えだった。
「え!そうなんだ!でも、音楽は続けてるんだね」
「うん!フルート吹いてるんだ。いがいだろ」
「フルート!?」
コウタはフルートを吹く真似をしてみせた。
「ユキコは?部活とかやってんの?」
「帰宅部」
「えー。吹奏楽入りなよー楽しいよ」
「遠慮しとく」
「わかった。なら、合唱部はいれば?楽しそうだったよ」
「合唱は、もうやりたくない」
「へー。なんで?」
「なんでもいいでしょ!」
「ふうん。ま、いっか」
少し間が開く会話も昔と同じで楽だ。
ふわあっと少し強めの風が吹いた。
青々としげる木の葉ががさがさと音をたてた。
「コウタ…!」
女の人の声が聞こえた。
桜色のワンピースをひるがえしながら軽い足取りで歩いてくる。
「コウタ……久しぶりね」
肩まで伸びた綺麗な黒髪。
目は大きく黒目がちな可愛い目をしている。
口も小さく、頬はワンピースと同じ桜色に染まっている。
そこら辺のモデルよりも可愛い。
「マミ」
コウタがそう呼んだ。
その女の子、マミは私に気づいたようで尋ねてくる。
「コウタの新しい彼女?」
「……いや、違うよ。昔の友達だ」
「良かった。いいかげん決断してもいいんじゃないかなあ?待ちくたびれそう」
話についていけず口をはさむ。
「ええと……どちらさまですか?」
ああ。と口に手を当てて笑った。
「四季田真海です。申し訳ありません彼とはずっと連絡が取れてなくって……ついつい」
マミさんは、深々と頭を下げた。
お嬢様みたいで……なんというか。なんだか、なんか自分の苦手なタイプだった。
しかし、さっきの話は大いに気になる。
「あ、あの……あなたは……?」
一瞬不思議に思ったら、そういえばこちらが名乗っていない。
「南川ユキコです。よろしくね!」
「ユキコさん……よろしくね」
ガラでもないが握手して微笑みあった。
「コウタとは、どういうご関係で??」
私は乗り出すように聞いた。
マミさんは少しだけ、目をそらすと照れくさそうに言った。
「中学生の頃、お付き合いしていました」
コウタが一瞬顔をしかめた。
「俺は……」