3話
折り返しの電話。
1コール。2コール……お掛けになった電話番号は現在使われていないか、……ぶちっ!
使われていない!?
そんなばかな。
私は頭をかきむしった。
コウタを会い、思い出してしまった数々の想いのせいで、ユキヤに会いたいと思ってしまったのだ。
「この冬は暖冬になるんだって」
「暖冬?」
「暖かいんだよ冬なのに。雪、ふらないかなあ……」
ユキヤは物知りで私の知らない言葉を沢山知っていたのを覚えてる。
暖冬になるとか、次の選挙は誰がいいとか、小学生低学年とは思えないことばかり話していた気がする。
ユキヤは、ポケットからキャンディーを取り出し一つ私に渡す。
グレープ味。
ユキヤの大好きな味だった。
ユキヤはいつも飴をゆっくりとなめて味わってから、口の中になくなってから歌い出す。
ーららら。らー♪
天使の歌声だった。
そういえば、ユキヤは男の子だ。
きっと今は、ソプラノではなくテナーかバス。
不思議な気分だ。
ユキヤは今、なにをしているのだろうか。
後ろから綺麗な歌声が響いた時。
必ずそこにユキヤはいた。
ユキヤが笑っていた。
二人で笑いあった思い出。
思い出し笑いかな?口元が緩んでいたようだ。
「忘れ物して戻ってきたら俺のクラスでなにしてんの?」
気づけば特別クラスに戻っていたようだ。完璧に上の空だった。
「え!あ、コウタかぁ」
「俺だけど?なんかニヤニヤしてるけどどうした?告られたりしたのか?」
「いやいや、そんなわけないじゃない」
コウタは窓の外を見てつぶやいた。
「雨降りそうだし、塾さぼろうかな」
「えーだめじゃん。行けよー」
「今日だけ!」
コウタはそう言って私の手を引っ張った。
「待ってよ!速いってば」
ぐいっと引っ張られる手。
今にも転けてしまいそうだ。
それに、小学生以来だ。男の子と手を繋ぐのは。
「合唱の練習の後いつも行ってた公園行こうよ。駄菓子屋まだあるかな?」
懐かしい。
「行く!」
コウタに手を引っ張られながら私達は公園へ向かった。
「懐かしい」
ざわざわ、さわさわと揺れる木の葉。
すこし錆びたジャングルジムにブランコ。
古くなってしまったけど、あの頃のままだった。
「いつも、三人で来てたもんな」
「私と、ユキヤと、コウタ、仲良かったよね」
「懐かしい」
「めっちゃ懐かしい」
「ここのベンチで飴たべたね!」
「何味だったか覚えてる?」
「グレープ?」
コウタは、笑った。
「惜しい!それはユキヤ。あーあ。あの頃からユキコはユキヤのこと大好きだったもんな」
「ないない。友達友達」
「実はさ、俺も好きな人いたんだ」
まっすぐな目で見つめられる。
「そうなんだ……」
「小学生の頃は俺、ユキコのこと好きだったなあ」
どきんと心臓が波打つのに気づいた。