2話
その日は遅刻でこっぴどく叱られた。
放課後になり、とぼとぼと廊下を歩く。
「ユキコ?」
うしろから声がかかる。
低く落ち着いた声が私を呼び止める。
「はい?」
くるりと後ろを振り返る。
「あ、やっぱりユキコだ。
南川雪子!」
同じ高校の制服。
しかし、私と違うのはバッチの色。
私達の銀色と違い、金。
特別クラスだ。天才がなぜ私を?
「ユキコでしょ?覚えてないの?俺だよ俺!」
「オレオレ詐欺……?」
全く見覚えのない男の子に不信感を抱く。
こいつは……誰だ!!?
「覚えてないんだ。公太だよ!合唱団の」
蘇る記憶。
コウタ。北川公太。
南川と、北川の川コンビ。
思い出した。
「わかった!」
「あー懐かしいなあ。なんでやめたの?俺達いい仲間だったじゃんか。ユキヤ寂しがってたんだよ」
「……ごめんね。私、才能なかったからなあ。怒られるのが嫌でやめちゃった。」
「また会えて嬉しいよ。俺も受験のためにやめたんだ」
「あ、そうなんだ。亅
「そういえばユキヤがどこにいるのか知らない?俺ユキヤと連絡とれなくてさ。合唱団見に行ったら、そいつもやめたって言う訳。けっこうでかい合唱団だったのにな、いまじゃ弱小合唱団さ。ユキヤ上手かったのにな」
「電話……できないの?」
「ユキヤにか?うん。出来なかった」
「出来ない?」
「出来なかったんだ。今までの番号じゃ繋がらなかった。どこに行ったんだ……?高校も知らないから中学校に行ったけど個人情報がどーとかで住所も高校も教えてくんなかった」
「ユキヤの中学の同級生は?」
「ばーか。そのぐらいあたったよ。答えはみんな同じ。知らないって」
久しぶりにあったのに、ずっと一緒にいたみたいに話せる。
不思議な気分だ。
「あ、俺塾あるからまた明日な」
「うんバイバイ」
なにか、忘れているような……思い出せない…
懐かしいコウタの背中を見送って
気の向くままに廊下を散歩する。
なんとなく、コウタの教室を見てみたくなり特別ナントカクラスにいってみた。
広い教室に後ろに貼られたテストの結果。
あ、私の結果も貼りだされてる。
239位 南川雪子
250人ちゅう239位…。
泣けてくる。
北川公太。
見つけた。
「え……」
思わず声が出た。
1位 北川公太
私がどんなに頑張ってもこんな成績は出せないだろう。
あのコウタが1位とは!!!
びっくりだった。
「へーえ」
トコトコと、歩く。なにか忘れているという気持ちが強くなる。
ふと聞こえてくる歌声に足をとめた。
聞いたことのある歌だと思ったら校歌だ。
へえ。なかなか綺麗な声だ。
さすが合唱部。
ふと、思い出した。忘れていたのはこれだ!
コウタは電話できないと言った。
じゃあ
昨日のあの電話は?
そう、私に電話をくれたのはユキヤだったのだ。