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第0話 はじまりのゆめ

 少女は愛らしい風鈴の音が好きだった。

 金魚の柄をしていて、大好きな友達とお揃いだったもの。

 今もきっと彼女の部屋の窓辺に飾ってあるのだけれど、どんなに窓を開けても音は鳴ったりしない。

 最後にあの音を聞いたのはいつだっただろう。

 アスファルトの上に湯気がゆらゆらと揺らめいているような季節だった気がする。

 時刻は美しい太陽が沈みゆく夕暮れで、外の世界のすべてが橙色に染まっていたのを覚えている。

 聞こえてきたのは心をくすぐる風鈴の音。

 涼しげな風が生み出す癒しの音。

 けれど、何故だか今、少女はその音を思い出せない。

 きっとここが夢の世界だからだろう。

 では、夢から覚めれば風鈴の音も思い出せるのだろうか。

 その疑問に答えてくれる人なんて、何処にもいない。


 少女が思い出せるのは風鈴の鳴っていた光景。

 そしてその音に対する純粋な感想と、遅れてやってくる対照的な印象の記憶。

 僅かに開けられた窓の向こうは黄昏の世界で、アスファルトに映された電信柱の影もうんと伸びてしまっている。

 しかし、その様子を詳しく見ることは出来なかった。

 少女の目はただ風鈴と窓の傍に釘付けになったまま、少しも動くことが出来ずに時を止めたようにしばらくじっとしていることしか出来なかった。

 目に映っているのは何だろう。

 一言でいえば色。

 美しい色でもあったし、残酷な色でもあった。

 風鈴に描かれた金魚の色にもよく似ている。

 赤。

 その色の名前がしばらく少女の脳裏を踊り狂った。

 何が起こっているのだろう。

 どうしてこんなことになったのだろう。

 何度も何度も同じ疑問がぐるぐると巡回し、赤という色の名前と共に少女を苦しめた。


 これは何だろう。

 結局、少女は苦しみのあまり、答えを見つけることを放棄してしまった。

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