有力手掛かり!
118話になります!
本日も投稿はこれのみにさせて頂きます。
明日からは再び2話投稿に戻しますのでご了承ください。
「さて、それじゃあ俺は今からあやしそうだと思っている場所とか、魔力の痕跡がある場所をしらみつぶしで当たってみる。
2人は俺の代わりに迷宮管理してくれ。
この石板に触れながら行きたい階層を念じればそれで行けるぞ」
そういってヴァーチュはポケットからトランプほどの禍々しい何かを放っている石板を取り出し渡した。
「それじゃあ頼むぞ!」
「えっ、ヴァーチュ!?」
渡すとともにヴァーチュは闇の空間を展開させて消えていく。
「(俺がお前にこの石板を渡さなかったのはお前ならすぐに空間移動使いこなせると思ったからなんだぜ...。
くそっ、何処へ行ったんだクジラ)」
やはりヴァーチュは、クジラに対してかなりの期待を持って接していたようであった。
そのような裏事情を思っていると、ヴァーチュが向かっていた目的地に着いたようだった。
彼の空間移動はクジラの時空を歪ませるのと違い、いわば高速移動する闇の中に入り、障害物の何も無い影の中を伝って行くようなものなので、到着にラグがあるらしい。
それも、遠くなればなるほどのラグが発生するようだ。
「(さて、着いたか。それじゃあ早速魔力の痕跡捜しをするか...)」
彼は今、フーの街で中央区広場と呼ばれる、名前通り街の中心にある広場へ来ていた。
何と言っても街の真ん中なわけで、街内での魔力探索には1番適しているらしい。
彼は中央で噴き上がっている噴水のふちに座り、魔力の痕跡を感じ始める。
「(ふむ...、流石になかなか見つからないか...。
それに、魔力痕跡の数が妙に多い気がするぜ。
これじゃ拉致があかない。
見つけたいのはクジラのよくわからない魔力だ。
集中しろ、魔王である俺ならこの中からクジラの魔力を探し当てる事など余裕だ)」
ヴァーチュは更に集中し始め、目を瞑りまるで便意を我慢する為にケツの筋肉を思いっきり締めているような顔をしながら魔力痕跡の調査をしていた。
ヴァーチュの近くにいた通行人は、そんな顔芸を見て、大爆笑をしていたようだ。
しかし、ヴァーチュは全力で痕跡捜しに集中しており、そんな事全く気付いてすらいなかった。
「見つけたっ...!」
カッ!と目を見開く。
その目が開く瞬間には広場からヴァーチュの姿が消えていた。
「ここだな!今度は魔力の追跡だ」
クジラの魔力を見つけ、即座に移動した所は、ある路地裏だった。
そこは、昼間であるのに関わらず、全く日が射さず真っ暗で、人が1人も歩いていなかった。
ヴァーチュは、いつでも瞬時に動けるように体制を取り、用心深く歩いてゆく。
「ここか...?」
辿り着いたのは、表通りではなく、路地裏に玄関口のあるおかしな民家であった。
「明らかに怪しいな...。とりあえず中入ろう」
ガチャ
「邪魔するぜ!フーの街の魔王ヴァーチュだ!怪しげな魔力反応があったから調べさせてもらう!」
ヴァーチュは、大きな声でそう叫んだ。
「誰もいないのか...?まぁいい。魔力の追跡をさせて頂くとするか」
ヴァーチュは、微弱な魔力の痕跡をまさに手探りといった感覚で読み解いてゆく。
「なんだ?閉鎖的な空間を発現したような跡があるな...。こんな事が出来るのは上級魔族レベル...。しかしこの街に魔族は俺を除けば中級が3人ほどいるだけだ...。どういうことだ?」
ヴァーチュは、この民家周辺からぼろぼろと滲み出る魔力痕跡に、頭を抱えて悩み始める。
「まぁいい、奥へ進んでみるか」
今悩んでも解決出来そうもないと悟り、一旦民家の調査を進めることにした。
ヴァーチュは、一部屋一部屋入念にチェックしていく。
そして、とある奥の小部屋にてある物を発見する。
「む...?これはなんだ?」
そこには、不気味だが、何処か引き込まれるような魅力を持つ小さな置物が置いてあった。
ヴァーチュは謎の置物を手に取る。
「何を象った置物なんだこれは?」
ヴァーチュはそれをまじまじと眺めはじめた。
そして、ついに手掛かりとなるある物を発見してしまった。
「ん?裏に何か書いて...なんだと!?」
裏に文字を発見したヴァーチュはその文字を確認した。
そこには、
『魔神サイラー、それに仕えるルキフグスに栄光あれ』
と刻まれていた。
「サイラーだと!?
くそっ!よりによって今騒がれている魔神についての手掛かりがこんなところで見つかっちまうなんて...。
魔力痕跡的に、クジラはサイラーかこのルキフグスって奴にやられたに違いないな...」
どうやら、魔神サイラーとは、最近裏で騒がれていた、神の身体を乗っ取った反逆者の様である。
そして、光を避ける者という意味の名前を持つルキフグス。
恐らくルキフグスが、クジラを苦しめ倒した者なのであろう。
「こいつらを追って、倒す事がクジラを奪還する為の最短だろう。
それに、この姿を象った像を媒介にすれば、すぐに奴らの場所が特定できるはずだ。
そうと決まれば、早速仲間を募って準備をしよう」
魔法である生物の場所を特定する場合、その生物についての情報があればあるほど特定するのが早くなるそうだ。
だから、その探している奴の名前が刻まれて、しかも姿を象った置物となればかなりの有力素材になるということだ。
それを知っていたヴァーチュは、置物をキズ付けないよう丁寧に持ち、急いで魔王理事会へと移動して行った。




