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具現化魔法で異世界乱舞  作者: 桃山
第1章(修正済み)
7/2000

1章14〜20話




1章14〜20話の修正版です。


それではどうぞ!!









リーシャは、2杯お代わりをして腹が満たされたようである。



それと同時に、お食事会は終わり、片付けに入った。



クジラはリーシャの食べる姿を見て、



「うん、いい食べっぷりだね」



と言いながら、母国日本の代表的食材であるお米が気に入られた事に喜びを感じて笑っていた。



「クジラさ、いえ、クジラの住む所は、いつもこんな美味しい物が食べれるんですか?」



満足そうにお腹をさすりながら、リーシャはクジラにそのような事を尋ねた。



「うん、そうだねぇ...。

かなり平和で、食料もたくさんあったからね」



「そうなんですか...。

とても羨ましいです」



リーシャは、さっきまでの元気いっぱいの様子とは正反対な表情を浮かべた。



そして、何かを決心したのか、喋り出す。



「...私、実は奴隷なんです。

奴隷と言っても、まだ売り物になる前の主無しです。

奴隷商人の所で色々な勉強などをし、主人となる方の経済面などを助けるような知識奴隷になる予定でした」



「そうだったんだ...。

(この世界、奴隷なんてシステムがあるのか...。

本当にファンタジーな世界に来ちゃったみたいだなぁ...。)」



「はい。

そして、勉強などの過程が終わり、奴隷として売り出される為、籠の中に閉じ込められ、馬車によって奴隷市場に送られそうになりました。

でも、その時に複数のオークが攻めてきたんです。

私を連れていたオークは、一匹の馬と共に私を籠ごと攫いました」



「あぁ、それで捕まってたのか...」



クジラは、何故彼女が籠に入れられていたのか納得し、なるほどと、頷いていた。



「そしてクジラ、そんな私を、偶然的に貴方が助けてくださいました...」



リーシャは、話し始めてから辛そうな顔をしていたが、この一言を言った途端、少しだけその表情が和らいだ気がする。



彼女の目にはどんな感情の篭った物なのかはわからないが、軽く涙が浮かんでいた。



「そうか、君は今までそうとう辛かったんだね...。

僕は、君がどれほど辛かったのかはわからない。

でも、これだけはいえるよ。」



クジラは一呼吸置いてから囁いた。




「君はいままでよくがんばったね。

もう大丈夫だよ、君を脅す存在はここにはいない。

安心して、僕は君の味方だよ?」



そういってクジラは、リーシャの頭を優しく撫でた。



「あっ...」



彼女から、声が漏れた。



その一瞬の発声をきっかけに、リーシャの目からは、大粒の涙が零れた。



「大丈夫、大丈夫だから。

今はたくさん泣くといいよ」



そして、数十分の間、リーシャは泣き続けた。



「ひぐっ、クジラ...。

本当に、本当にありがとうございます.....」



「いいんだよ。

人間泣きたい時は、しっかりの泣かなきゃね!」



クジラは、今の彼女には救いになると思った言葉を掛け続けた。



そして彼は、これからの異世界人生を大きく変えるであろう言葉を、発する事にする。



「リーシャ、君は僕と一緒にこの世界を旅しないか?

辛い事もあるだろうけど、その分楽しい事もあると思うよ?」



リーシャは目を大きく開き、口を開く。



「いいん...、ですか?」



まさか、1時間前は見ず知らずの他人だった彼から、そんな言葉が出てくるとは思っておらず、唖然としているのだ。



「うん。

君といれば、楽しく旅ができると思ったんだ。

それに、旅のみちづれ?が欲しかったからね。

本当にそれだけなんだけど、そんな理由じゃダメ?」



クジラは、リーシャが奴隷と聞いた後で、彼女に選択肢は、あるようで無いという事は軽くわかっていたのだが、一応リーシャの本心を聞きたかったので、多少意地悪な質問をして、返事を待つ。



彼は、もしもリーシャが少しでも悩んだり、嫌そうな顔をした時は、強要せずに必要になるだろう食料、道具を持たせて自由にさせようと考えていた。



「本当に、こんな私でいいんですか?」



だが、彼女に迷いは無いようである。



クジラは、心の中で喜んだ。



「うん、僕は君と一緒に旅がしたいんだ」



「...はい!それならば何処までも着いて行きます。

これからよろしくお願いします!」



クジラがもう1度一緒に来て欲しいと言うと、


リーシャは、まるで太陽を想像させるような満面の笑みを浮かべた。



「これからよろしくね!リーシャ!」



こうして、リーシャという大切な仲間が加わる。



クジラは、日本食を好きになってくれそうな彼女とならば、きっとこれから楽しくなるだろうと心を踊らせた。



「(あっ、もう夕暮れかぁ、お爺ちゃんに迷惑はかけられないなぁ...)」



それと同時に、クジラはおつかいを急ぐことを決心する。



「リーシャ、さっそくで申し訳ないんだけど、移動するよ」



クジラは、本当にさっそくだったが、歩き始めようと言った。



「なにか急ぎの用でもあったのですか?」



リーシャは、先ほどまで泣いていた事により目の周りを軽く腫らしながら、何か用事があったのか聞く。



「うん、実はここを通ったのもね?

ここから西の方角にある村の村長さんから、隣の村に届け物を頼まれてたからなんだ」



「そ、そうなんですか!?

ごめんなさい私なんかの為に時間使っちゃって...」



リーシャは、しょんぼりしながらクジラに謝った。



「いやいや、謝らなくてもいいんだよ?

だって、このおつかいが無ければリーシャとも会えなかったからね。

ほんと村長のお爺ちゃんには感謝してるよ」



「クジラ...」



リーシャは再び目をうるわせている。



クジラの優しい言葉が本当に嬉しいようだ。



「さっ、僕達にとっての大恩人の頼みだ。

早く行って、報告に行こう?」



「はい!頑張りましょう!」




そしてクジラとリーシャは歩き始める。



2人は、改めて簡単な自己紹介や、タナベの村の村長がどんな人だったかなどの話をしながら道をまっすぐに進んでいると、何事も無く隣の村に到着してしまった。



「さて、村人にここの村長さんの場所を教えてもらって、渡す物を渡してすぐ帰ろうね。

きっと、お爺ちゃんも待ってるしね」



「そうですね。私もはやく村長さんに会ってみたいです」



そして、クジラとリーシャは村の中へと入って行った。





[クジラ視点]





僕とリーシャは村に入り、村人を探すことに専念する。



「あっ、クジラ。

あそこに人がいますよ」



「ほんとだ!すいませーん!!」



僕はリーシャに言われて村人に気づき、すぐに話しかけにいった。



もう日も落ちてるから、早く帰らなければいけないからね。



「おや?君はタナベの村の人かい?」



片手にクワを持っていた村人が会話に応じてくれた。



農作業の帰りだろうか?


「いえ、僕は旅人です。

タナベの村の村長さんにお届け物を頼まれて、この村に来ました」



「そんなのか。

で、届け先はどこだい?」



「この村の村長さんです。

村長さんはどこにおられるでしょうか?」



「ここだ」



ん?どこからか声が聞こえた。



「ここである!!」



「キャアア!!」



リーシャが叫ぶ。



僕は何事かと斜め後ろに立っているリーシャの方を向く。



すると、リーシャの真横にはタナベの村の村長である、お爺ちゃんよりも老けている老人がいた。



「うわぁ!!」



僕は、いつのまにいたのかと驚き、声をあげてしまった。



「ふぁーっふぁっふぁあ!

いやぁー、このくらい見抜けなければ、まだまだじゃぞ小僧!!」



あー、びっくりした。



とりあえずこのおじいさんがこの村の村長でいいんだよね?



「ど、どうも。

自分は旅人のクジラと言います。

今日は、タナベの村の村長さんからのお届け物を渡しにきました」



「ほぅ、そうか。

そんで、そちらの可愛いお嬢ちゃんは?」



「か、可愛い!?

わ、私はリーシャと申します!

クジラとは、えぇっと、旅の仲間です!!」



先ほど驚きで声をあげてから軽く放心状態だったリーシャは、呼びかけられて正気に戻り、自己紹介をする。



結構人見知りなのだろうか?



かなりおどおどしているように見える。



「ふぁっふぁっふぁっ!

本当可愛らしい嬢ちゃんじゃなぁこの子は!

君も、いい女と旅してるじゃないか!

くぅ!羨ましい!」



「あははは、自分も彼女には癒されっぱなしですよ」



なんか、色々と豪快なおじいさんだなぁ。



とりあえず僕は、リーシャが可愛いという所に同意した。



よかった。



僕の美的感覚はこの世界でも通用するんだね。



「くっ、クジラっ!」



あ、リーシャの顔が真っ赤になった。



僕は確信した。やっぱり彼女は可愛い!



さて、リーシャに弄りがいがある事に気づけたし、はやく用事を済ませるかな。



「あの、村長さん。

これがタナベの村の村長さんから預かった品です」



僕はリュックに入れていた酒瓶を全て取り出して渡した。



「おぉ!

その酒は隣の村の名産品じゃないか!

礼をいうぞクジラ!

そうじゃな、あいつにはこう伝えてくれ。

お互いもう歳だが早死にだけはするんじゃないぞ!ってな!」



「はい、わかりました。

しっかりとお伝えしますね」



「ありがとな。

ところで、お前らは夕飯とかどうするんじゃ?

もしよければわしの家に招待するぞぃ」



うわぁ、申し訳ない。



もしもお爺ちゃんが何も言わなければ、喜んでご馳走になったんだけどなぁ...。



「...申し訳ないんですが、タナベの村の村長さんがご馳走を振舞ってくれると言ってくれてますので、これから急いでタナベの村に戻ろうと思います。

本当にすいません」



「そうか。

それなら若いもんに馬車を出してもらおう。

そうすればすぐに着くじゃろう?」



僕が村長さんの誘いを丁寧に断ると、そのような提案をしてくれた。



凄く良い人だなぁ...。



「いいんですか!?

ありがとうございます!」



僕は断る理由も無いので、ありがたくお願いする事にした。



「あっ、あのっ。

えとえと...、ありがとうございましゅっ!!」



リーシャも続いてお礼をしようとしたようなのだが、豪快に噛んだ。



「っ!/////」



僕に弄られた時から、顔に赤みを帯びていたのだが、それが更に赤くなった。



くっ、笑いが堪えきれない!!



「ふぁっふぁっふぁっ!

なら、急いだ方がよかろう。

早速手配をするから、ここでしばらく待っておれ!」



「はい!」



「うぅ、はいぃ...///」



僕とリーシャの返事を聞くと、隣村の村長さんはとんでもない速さでどこかへ消えていった。



隣村の村長さんと会話をしている間、ずっと顔が真っ赤なリーシャさんなのであった。








[クジラ視点終わり]







それから、10分ほど待っていただろうか?



クジラとリーシャの元へと馬車がやってきた。



「ちょいと手間が掛かって遅れちまったわい!

馬小屋からかなり元気の良い馬を連れてきたからすぐにタナベの村に着くぞぃ!

ふぁーっふぁっふぁっ!」



村長さんが馬車の中から出てきて、軽く詫びながら豪快に笑った。



「突然押しかけてきたのに、こんなに色々としてもらって申し訳ないです。

本当にありがとうございます」



クジラは、豪快に笑い飛ばしている村長へ感謝を込めて深々と頭を下げた。



「ええんじゃええんじゃ!

若いんだからそんな頭を下げんで胸を張れぃ!!

ほれ、さっさと乗った乗った!」



「はわわわわっ!?」



村長さんは礼など別にいいと言った様子で笑い、リーシャを軽々と持ち上げて、そこそこ段差のあった馬車へと乗せた。



それに続き、クジラも馬車をよじ登り、中へと入る。



2人が入ったのを確認すると、馬車の操縦者がゆっくりと馬を歩かせ始める。



村長に、出来るだけ急ぐようになどと命じられているのだろう。



「お前達、旅を頑張るんじゃぞぃぃぃぃぃ!!」



馬が10mほど歩いた所で、村長さんは手を振りながら見送りをしてくれていた。



「はい!!

何から何までありがとうございました!!

お元気で!!」



「あ、ありがとうございましたぁ!!」



クジラが大きな声で村長さんへ感謝の言葉を告げると、続いてリーシャも叫んだ。



その後、2人は村長さんが見えなくなるまで多大な感謝を込めて手を振り続けたのであった。








パカラッパカラッ。


パカラッパカラッ。




日はもう落ちかけ、空もオレンジから暗闇に変わりかけの現在。



クジラとリーシャは、疲労で乳酸の溜まった足をほぐしながら馬車の中でくつろいでいた。



「クジラ、あの村の村長さん、すごいいい人でしたね!」



「そうだね。

でも、タナベの村の村長さん、お爺ちゃんも負けないほどの良い人だよ。

村長って人種は心広い人しかいないのかな?って思えるほどに」



「へぇ〜そうなのですか。

私も会うのが楽しみです!」



そんなことをのんびり話していると、草原の彼方にタナベの村が少し見えてきた。



クジラはタナベの村を指差し、リーシャに告げる。



「ほらっ、リーシャ。

あそこ、あそこがタナベの村だよ」



「あれがタナベの村ですか!

それにしても、この辺りは自然が豊かで良い景色の所が多いですね」



リーシャはそう呟くと、穏やかな笑みを浮かべた。



「そうだね。

僕もこんなに自然が豊かな所は、あまり行った事が無かったから、とても新鮮なんだよね。

(元の世界と比べたら、比べものにならないレベルで空気とかが綺麗だよなぁ...)」



2人はタナベの村が見えてきた事をきっかけに、景色が綺麗だという話を始めた。



だがしかし、



おーい、お二人さん。

いい雰囲気のところ悪いが、着いたぞー!



話を始めるのが既に遅く、すぐにタナベの村の入り口へと着いてしまい、馬車を操縦していた隣村の村人がそのように伝えてきた。



「あっ、はい!

ここまでありがとうございます!」



本日何回目だろうか?



クジラはここまで連れてきてくれた名も知らない村人へ深々と頭を下げる。



「いいって事よ!

この村の村長達にも色々と借りがあるからなっ!

じゃあ、お前らも気をつけて旅続けろよ!」



「はい!

そちらも気をつけて帰ってください!

それと、村長さんには本当に感謝してますと、お伝えお願いします!」



「おぅ、わかったぜ!

それじゃあな!」



村人は爽やかにクジラと別れの挨拶を交わすと、慣れた手つきで馬を操り来た道を戻っていった。



「馬だと到着するのがかなり早いね」



「そうですね。

歩きの5倍くらいは早いかと思いますよ」



「へぇ、馬車って意外と速いんだなぁ...。

さて、それじゃあ急いでお爺ちゃんの家へ行こうか!」



「はい!

でも、なんか緊張してきました...」



「あはは、大丈夫だよ。

きっと暖かく迎えてくれるから」



「そ、そうだといいです」



そして歩くこと5分、もう外は暗闇に覆われていた。



「すいませーん。

無事戻りましたー!」



2人は村長宅へ辿り着き、クジラがドアを叩いた。



はーい!



中からミルさんの声が聞こえてくる。



ガチャ



「お疲れ様、クジラくん。

ってあら?その子は?」



「実は草原で、オークに捕まってるのを見て...」



「そうなの...。

大変だったでしょう?

あなたも一緒に来なさい!」



「は、はい!

ありがとうございます!」



ミルは、リーシャの事を快く中に迎えた。



そして2人が通されたのは、少し広めな食事処であった。



そこにはリーシャ1人が急遽追加されても、明らかに食べきれないような量の食べ物が置いてある。



クジラ達が帰った事に気づき、村長さんは心配したような顔でこちらを向いた。



「おぉ、お疲れ様クジラくん。

少しばかり遅かったが何かあったのかね?

...っておや?

そちらの可愛らしいお嬢さんは?」



村長さんはリーシャの事を見て気になったようだ。



そして、クジラはこう伝えた。



「草原を歩いていたら彼女がオークに捕まっていたんです。

なので、助けてここまで連れてきました」



「なんじゃと!?

お嬢さんも辛い思いをしたのじゃな...。」



リーシャの事を本気で同情しながら眺めた。



「まぁ、今は話すよりも二人ともお腹空いてるじゃろう?

食べて、お腹を満たしてから話すとしよう

ほれ、3人共座りなされ」



村長さんはそう言って、クジラとリーシャとミルを椅子に座るよう促す。



「ほれ、沢山食べるんじゃぞ!!」



「「はい!いただきます!」」



村長さんの一言により、クジラとリーシャは一字一句揃えて返事をし、ご飯を食べ始めた。



「ふぉっふぉっふぉっ、2人ともいい食べっぷりじゃな」



村長さんは、まるで孫を見るような優しい目で、2人が食べているのをみて微笑んでいた。






[リーシャ視点]






今、私とクジラは村長さんのお家で、凄い豪勢な夕飯をご馳走になっている。



「美味しい!」



うん!とっても美味しい!!



私は一口食べると、自然とその言葉が口から漏れた。



そして口から笑みが止まらない。



あぁ、おいしい。


美味しいなぁ...。



私はスプーンを止めずに動かし、食べ物を口の中に放り込んでいく。



...少し、下品かな?



「ふぉっふぉっ、お嬢さん。

リーシャちゃんと言ったかね?

美味しいかい?

沢山あるからいっぱい食べるんじゃぞい」



だけども、村長さんは私の食べ方を見て、どんどん食べろと言ってくれた。



「むぐむぐ、ごくんっ。

はい!ありがとうございます!」



その後も、村長さんが私に優しく話しかけてくれた。



クジラの言うとおり、優しくて、とってもいい人だなぁ。



そういえば、こんな風に他人の大人の人から優しくされるのって、いつぶりだろう?



もしかしたら、初めてかもしれない。



こういうのが幸せっていうのかな?



あっ、なんか涙が出そう。



ダメだ、堪えなきゃ。



「リーシャ、このお肉凄い美味しいよ!

ほら、食べてみなよ!」



「ふぁい!?

わっ、わかりました!」



突然クジラが話しかけてきたのに驚き、少し変な声が出てしまった。



うぅ...恥ずかしい。



私はそう思いつつ、クジラに勧められたお肉を齧る。



「おっ、美味しい!!

これなんのお肉ですか!?」



その肉を一口齧ると、私はまた笑みを浮かべていた。



1日のうちに、こんなに笑うのも初めての体験かもしれないね。



「あははは!

やっぱリーシャは本当に美味しそうに食べるなぁ!

見てるだけでこっちも気分良くなってくるよ」



クジラが満面の笑みでそう言ってきた。



私って、そんな美味しそうに食べてるのかなぁ...?



自分の事だからこそ、すっごい気になる...。



「ふぉっふぉっ、その肉はオーク肉じゃよ。

この村の特産品みたいな物じゃわい」



オークかぁ、私を捕まえてたあの豚みたいなのって、食べるとこんなに美味しいんだなぁ...。



あれ、なんかクジラの様子が...?



「オークか...ふふ、ふふふふふ...」



...聞かないでおこう。



そういえば、さっきまで涙が出そうだったのに気がついたら収まってる。



なんでだろ?...まぁ、いっか!








[リーシャ視点終わり]








「そういやお二人さんや。」



「なんですかお爺ちゃん?」



お食事会が一段落した今、村長がある話を切り出した。



「2人は、これから何処かに行く場所や目的はあるのかい?」



「そうですねぇ...。

特に目的も無いですし、ここら辺に来るのは初めてですから、リーシャと2人で適当に街を巡ろうかなとか思ってます」



「リーシャちゃんは、自分の故郷に戻らなくていいんかの?」



リーシャの事情を知らない村長は、何気無く彼女へ質問をした。



「は、はい...。

少し訳ありでして、故郷には戻れないんです...」



「そうなのかい...。

でも本当に辛いと思ったら、しっかりと帰るんじゃぞ?」



「わ、わかりました...」



リーシャは、表情を崩さぬように

笑みを浮かべて答えた。



しかし、彼女は嘘が下手なようだ。



明らかに顔が暗くなってしまっている。



すると、村長はリーシャの内心を察したのか、1つの提案をした。



「ふむ...、リーシャちゃん。

リーシャちゃんも、クジラ君のようにワシの事はお爺ちゃんと呼びなされ」



「ふぇっ?」



リーシャはあまりに唐突な要求に、間の抜けた声を発した。



「ほれほれ、恥ずがらなくていいんじゃぞう?

お嬢ちゃんのような可愛らしい孫がいたら、ワシはどれだけ嬉しい事か」



「う、うぅ///

お、おじい、ちゃん?」



リーシャはどうやら恥ずかしかったようで、顔を真っ赤にしながら要求通りに呼んだ。



「ふぉっふぉっ、ありがとなぁ。

クジラ君も、こんな子と一緒に旅ができるなんて本当に幸せ者じゃのう。

男ならば、絶対に泣かしたりせず、紳士的にエスコートするんじゃぞ!」



「えぇ、絶対に彼女には辛い思いはさせませんよ!

(隣の村長さんと似たような事言ってるなぁ...)」



クジラは内心苦笑いであったが、その言葉は絶対に守ると心の内で決意する。



「...///」



リーシャは、クジラの発言に照れながらそっぽを向いていた。



まぁ、誰だってそばにいる時にそんな言葉をかけられれば照れてしまうだろう。



「それじゃあ話を戻すぞぃ。

次にどこ目指そうとか考えていないのなら、とりあえずフーの街を目指すとよかろう」



「フーのまち、ですか?」



「そうじゃ、オークを1人で、なおかつ無傷で退治できるクジラ君ならば、迷宮に潜って稼ぐ事も簡単じゃろう。

迷宮の浅瀬ならば、オーク以下の敵しかおらぬしな」



「そうですか...(まぁ、この世界の常識に適応していくしかないよね...)」



「フーの街はこの村からずっと北に進めば5日くらいで着くじゃろう」



「5日くらいですか...。

(まぁこの世界ではそのくらいかけての移動が普通なんだろうね)」



「そんなに急いで決める事も無い。

今日はウチに泊まって、ぐっすり休んでから決めるといいぞぃ」



「えぇっ?食事だけでも相当ありがたいのに、泊まらせていただけるんですか!?」


「うむ、お主達のような子達ならばいつでも大歓迎じゃよ。

それに、部屋は無駄に余っておるからの。

ミル君、二人を寝床に案内頼むのじゃ」



「はい、わかりました。とりあえずお部屋に案内しますね。

それと、後で濡れタオルを持っていきますので、お身体拭きにお使いくださいね」



「はい。いろいろとありがとうございますミルさん」



そして、クジラとリーシャは村長宅で一晩お世話になった。



もちろん、2人は別々の部屋だ。





[クジラ視点]





チュンチュン、チュンチュン



「...ふあぁ、もう朝か...」



僕は、外から聞こえてくる鳥っぽい鳴き声で目を覚ます。



昨日のご飯美味しかったなぁ...。



今度具現化魔法で再現してみよう。



良い訓練にもなるからね。



うん、決めた。



そんな事を考えつつ、僕は昨日ご飯を食べた部屋へ行く。



なんかいい匂いがするんだなぁ...。



「あっ、おはようクジラ!」



部屋に入ると、一足先に席についていたリーシャが元気良く挨拶してきた。



朝から元気だなぁこの子...。



それと、少しだけ口調が崩れてきてるね。


これは仲良くなってきたと捉えてもいいのかな?



「おはよう、クジラ君。

丁度朝食の準備を始めたところじゃ。

座って待ってようじゃないか」



続いて、お爺ちゃんも挨拶してくる。



なんかいい匂いがすると思ったら朝ご飯の匂いだったのか。



「おはようございますお爺ちゃん。

晩御飯に続いて朝食まで作っていただいて本当にありがとうございます。

リーシャもおはよう」



そんな感じに挨拶をして、軽くお話を繰り広げていると、ミルさんが料理をお盆に乗せて運んできた。



「あら、おはようクジラ君。

昨日はよく眠れたかしら?」



「はい、お陰様で熟睡でしたよ」



「ふふっ、それはよかったわ。

それじゃあすぐ朝ご飯にしましょうか」



「あっ、私食器並べますね!」



リーシャがミルさんを手伝い始め、あっという間に朝ご飯が僕達が囲むテーブルの上に置かれた。



夜に続きかなりの量であり、とっても美味しそうだ。



お爺ちゃんはいつもこんな美味しそうな物を食べてるのか。



羨ましいなぁ。



「さて、朝ご飯じゃ!二人共もりもり食べるんじゃぞ!」



「はい、いただきます」



「いただきます!!」



僕の言葉に続き、リーシャも復唱した。



さっそく食べはじめ...



「おいしーい!!

ミルさんの料理って、本当に美味しいですね!

私もこんな料理を作れるようになりたいです!」



リーシャが一口食べ、ミルさんの料理を褒める。



くっ、先を越されたか!



何度も言うけど、本当にこの子は美味しそうに食べるなぁ。



見てるとついつい自分が食べるの忘れちゃいそうになるよ。



あ、でも今は胃がぎゅるぎゅる言ってて我慢できないや。



よし、食べますかね!



僕は、嗅覚が全力で刺激されて胃も限界だったので、改めて食べ始める。



「...あぁ〜、凄くあっさりしてて朝食にぴったりなメニューですね。

これは元気が出ますよ」



うん、やっぱり美味しい。



口に出した通り、全体的にあっさりしていてこれが朝食にはぴったりな味なんだな。



もうフォークが止まらないよ。



これは適当な食堂で、モーニングセットとして売り出したら、絶対に行列ができるだろう。



うん、僕だったら毎日通ってこれを頼むね。



こんな料理を味わうことが出来るなんて、この世界に飛ばされたことには、本当に感謝しなければ!



ありがとう名も知らぬ神様仏様。



とにかく、そんな感じで僕達がミルさんの料理を絶賛しているうちに朝食も食べ終わり、僕達は、これからの事をお爺ちゃんに話す事にした。



「お爺ちゃん、僕達はフーの街に行く事にするよ」



「おぉ、そうかね。

お主ならそういうと思ったわい。

リーシャちゃんもそれで良いと了承したのかね?」



村長はリーシャを見て、今後の目標地はそれでいいか尋ねた。



あ、リーシャには何も言ってないんだよね。



それでも、この子の事だからあっさりOKしてくれるはず...。



もし嫌だと言われたらどうしよう?



「はい!私はクジラが行くとこには何処でも着いて行きます!」



一瞬不安がよぎったが、それも杞憂で終わった。



「そうかいそうかい。

ムフフ、クジラ君は本当に良い嫁を捕まえたようじゃな!」



「はいぃ!?」



僕はまるで心臓を掴まれたかのように身体が硬直した。



「よっ、嫁っ///」



リーシャも全く同じような反応だ。



いいや、彼女の方は頬を染めて僕の事をチラチラと見始めた。



意識...されてる?



それにしてもびっくりしたなぁ。



嫁って、いくらなんでも話が飛躍し過ぎじゃないかなぁ...。



「ふぉっふぉっふぉっ、初々しいのう。

お主達なら何処へ行っても上手くいくじゃろう。

旅立つのなら、それ相応の準備も必要じゃろう?

もう一日泊まっていくかい?」



んー、それはそれでお爺ちゃんにも申し訳ないかな?



準備なんて具現化魔法でどうとでもなるし...。



「いえ、行くと決めたら直ぐにでも行きたくなる性分なので、昼前には出たいと思います!」



なんかちょっと変な返答かもしれないけど大丈夫かな...?



「そうかい。

それならば、使えそうな道具が倉庫に幾つか残っているから、それを持って行くといいぞい」



「本当ですか!?

ありがとうございますお爺ちゃん!」



なんか、異世界に来てから人に助けられまくって頭下げまくってる気がするなぁ。



まぁ、人の優しさ踏みにじるよりかは何億倍もマシだよね?



「いいんじゃ、気にするな。

お主らはもうワシの孫みたいなものじゃ」



本当にこの人はいい人だね。



前の世界では、こんなに優しい人とは巡り会えなかったし、恐らくこんなに素晴らしくよく出来た人はいないんじゃないかな?



いやぁ、いきなり異世界飛ばされた時はどうしようとか思ったけど、優しい人達に出会えて本当に良かったなぁ。



いつか、この世界で安定した暮らしが出来て余裕が出たら、恩返しのためにまたこの村へやってこなければいけないね。



1日でも早く恩返し出来るようにこれから頑張ろう!



僕は、また1つこの世界での決意を増やし、絶対にこの決意は破らないと胸に刻むのだった。







それから僕とリーシャは、お爺ちゃんから幾つかの道具を譲り受け、旅立つ時が来た。



本当はひっそりと格好つけて村を出るつもりだったが、お爺ちゃんとミルさんは本当に優しさ満ち溢れた方達で、村の出入り口まで見送りに来てくれた。



「お爺ちゃん、短い時間でしたがありがとうございました!」



「え、えと、おじいちゃん、私も1日お世話になりました。

本当にありがとうございます!」



「ふぉっふぉっ、いいんじゃよ二人共。

気を付けて行ってくるんじゃ!

それと、いつでも帰ってきなされ。

ワシらは、お主たちならいつでも歓迎するぞい!」



「ふふっ、気を付けて行ってきてくださいね。」



村長、ミルはそれぞれ自分の言葉で、2人の出発を応援してくれた。



「それでは行ってきます!」



「ほ、本当にありがとうございましたぁ!」



僕とリーシャは、それぞれ感謝を告げ、ゆっくりと村の外へと歩いてゆく。



恐らく、僕らの目元には薄っすらと涙が浮かんでいたと思う。



自分自身はいまいちわからなかったが、リーシャの方は確実に泣きかけていた。



「頑張るんじゃよ!」



「野宿が続くと思いますから、お体に気をつけてくださいね!」



後ろから、お爺ちゃんとミルさんが応援し続けてくれている。



なんかやる気が出てきたぞ!



僕は、泣きそうだった顔を無理やり笑顔に変えて、横にいるリーシャの方を向く。



そして、



「これから、頑張ろうねリーシャ!」


「はい!頑張りましょう!」



2人で励ましの言葉を掛け合い、改めて旅立ちを実感するのだった。
























明日は、21〜25話くらいの修正版を出す予定です。


修正前段階は1話1000文字以下とかが普通な状態ですので、あまり見るのはお勧めしません。


なので、ガッツリ読みたいぜちくしょう!


などという方はここで足止めする事を推奨いたします。









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