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具現化魔法で異世界乱舞  作者: 桃山
第1章(修正済み)
6/2000

1章6〜13話


1章6話〜13話の修正版です。


それではどうぞ!!




2015年7月20日、再修正しました。






[クジラ視点]






「や、やったーーー!!」


僕は、今持つ全ての力を使うかのような大きな声で叫ぶ。


ついに、ついに見つけたんだ!

人の住む村を!!


「よしっ!!走ろう!」


きっと今、僕は満面の笑みを浮かべているだろう。何故ならば、ついに魔物ではなく人と遭遇できて、なおかつこの世界の情報が手に入るからだ。とても嬉しい!

僕は、走って村に入る。

すると、村の入り口で遊んでいる10歳くらいの男の子が話しかけてきた。


「おにーさんおにーさん!へんなふくだけどどこからきたの!?」


うぅ、転生する前から着てた服とまったく同じものを具現化して着がえてるんだから、しょうがないじゃないか...。


「ア、アハハハ...、ところで君、ここってなんていう村なのかな?」


出来るだけ優しく話しかける。服の件は、後でこの村の人が着てる服と似たような感じな服を具現化しよう...。


「ここはねー!タナベのむらって言うんだよー!!」


タナベ?なんか日本人の名字で有りそうな感じだなぁ...。できれば知ってそうな大人の人に聞きたいところだけど、村の名前の事を聞いてみるか!


「へぇ、タナベの村って言うんだね。いい名前の村だねぇ。ちょっと気になったんだけどさ?この村の名前の由来とかはあったりするのかい?」


うん、我ながら完璧な返答!


「んっとねー!そんちょーがこのむらのはじまりのことをかいたほんをもってるよ!みんなによみきかせてくれるんだ!でも、みんなむずかしくてよくわかってないんだって!」


お、村長さんが知ってるのかな?村長さんがいる所を聞いてみるか。


「それでその村長さんはどこに住んでるんだい?よければ教えてくれないかな?」


「うん!あんないしてあげるよー!!」


うん、元気いっぱいで良い子だなぁ。


まさに子供の中の子供 THE 子供。


「ありがとね。ところで君の名前は?」


「ぼく?ぼくのなまえはゼル!」


「うんわかった。案内よろしくね、ゼル」


「うん!」


クジラが何気無く魔物や、村のことを聞き出しながら、ゼルが先行して2人は歩き出した。





[クジラ視点終わり]





ゼルと話しながら歩いていると、ゼルは立ち止まってある家を指さした。


「ここがそんちょーのいえだよーっ!」


ゼルの案内のおかげで、クジラと同じ日本人についての情報が聞き出せるかもしれないという希望がある、村長さんの家へと辿り着いたようだ。


「じゃあ、ぼくはさっきのところもどるね!!楽しかったよクジラさん!!」


「うん、僕も楽しかったよゼルくん!あっ、ちょっと待って!これ、お礼にあげるね」


ポンッ!


クジラは、具現化魔法でペットボトルに入ったオレンジジュースを具現化し、ゼルに手渡す。


「クジラさんこれなぁに?それに、どこからだしたの?」


「これは、オレンジっていう果物で作ったジュースだよ。甘くて美味しいからお友達とかと分けて飲んでね。それと、今のはちょっとした手品なんだ。びっくりしたでしょ?」


「てじななんだぁ...、すごいね!それにしても、ふしぎないれものだねー」


そう言うとゼルは、ペットボトルに指を突っ込み、ジュースを軽く舐めた。


「あまくておいしい!!こんなあまいのみものはじめてのんだよ!ありがとうクジラさん!!」


「いえいえ。ここまで本当にありがとねゼル君」


クジラは笑みを浮かべながら、ゼルの目線と同じ目線になるように屈んでお礼を言った。


「うん!こっちこそこんなおいしいものもらっちゃってぎゃくにおれいしたいくらいだよ!ほんとうにありがとう!クジラさん!」


ゼルはそう言うと、満面の笑みで走って去って行った。


「はぁ...」


ゼルとクジラは、村長の家に着くまで5分弱、2人はこの近くにいる魔物について話した。そして、クジラはその魔物についての会話をした時から、テンションが低くなっていた。

それは、ゼルのある一言が原因であった。


「え?ぶたみたいないきもの?あれはオークだよ!群れないし、こども3人ぶんくらいの力しかないから、ここら辺ではふつうの食料だよ!あのぶた、かなりおいしいよ!」


ゼルの言ったこの言葉は、どうやら本当のようだ。何故なら、この世界の人はクジラのいた世界よりも基本的な身体能力が違いすぎる。村の大工のような男達が、クジラの世界なら軽トラックなどで運ぶような木材を、とても軽そうに肩に乗せて、持っていたのだ。

そして、ゼルが去って行った直後、歩いている時にそのような出来事を目撃したクジラは、この世界でどう生き残るのかを考える。

だが、その数分後、クジラは考えるのを一旦辞めた。


「今考えてネガティブになる事でもない。いざとなれば、モグラさん達、精霊に頼りきればいいんだ!大丈夫、大丈夫...。気持ちを切り替えて村長さんに合う事を優先しよう!」


彼はそう言い放ち、村長宅のドアを叩いた。


「すいませーん!村長さんいらっしゃいますかー?」


はーい。


若い女性の声が聞こえた。


「いらっしゃいませ。村長はいますがどのようなご用件でしょうか?」


赤髪赤目のメイド服を着た、20歳程度の女性が出てきた。


「どうも、クジラと申しまして、旅をしているものです。僕は村長さんが持ってるという、この村の由来などが書かれた本を見させて頂きたくて訪れました。(さすが異世界。いろんな色の髪の毛の人がいるなぁ...)」


「そのようなご用件ならば村長もさぞお喜びになられるでしょう!今すぐご案内しますね!」


赤髪の女性はにっこりと笑顔を見せて、家へとクジラを通した。突然現れた旅人に対し、警戒心など一切無かった。


「さて、この村の由来は僕の世界の人と関係あるのかなぁ...」


クジラは、かるくドキドキしながら村長の家へと入っていくのだった。


「どうぞこちらです。」


村長さん宅の家政婦さんに案内してもらい、ついに村長さんのいる部屋の前に着く。


「(ど、どんな人だろうな...)」


ソワソワ、そしてドキドキしながらドアが開くのを待つ、クジラは、もしかしたらこの村長さんが元日本人だったりするのかなとか淡い想像をしていた。


ガチャ


ドアが開かれる。


「ふぉっふぉっ、ようこそワシの家へ」


そこには、白髪で長い顎髭の何処かの仙人のような姿のお爺さんがいた。


「はじめまして、僕はクジラと申します。

今日は村長さんがお持ちになられていると聞いた、この村の名前の由来などが記された書物を読ませて頂きたいと思い、こちらに訪れました。」


「そうかい、そうかい。

こんなに若いのに、そんなのが読みたいなんて珍しいのぉ。それと、そんなにかしこまらなくていいわい。

ワシの事は祖父のように考えてくれてええ、だから『お爺ちゃん』とでも呼びなされ。ふぉっふぉっふぉっ」


村長、いや、お爺ちゃんはカラカラと笑い、手元にあった、咄嗟に準備してくれたであろう一冊の書物をクジラに渡した。


「そん、いやお爺ちゃん。この書物にこの村のが?」


「そうじゃよ、別にお主の興味を引くような物はないかもしれないが、存分に見ていっておくれ」


そういってしわくちゃの顔を歪ませてニコニコとクジラを見つめた。


「(この人のシワは、この笑顔でできたシワなんだろうなぁ...。僕も老後はこんな人になりたいや)」


クジラは、とても優しいお爺ちゃんの対応をみて、そのように心から思っていた。


「(さて、せっかくお爺ちゃんが貸してくれたんだ。しっかりと僕に必要な情報がないか探さないとね...)」


彼はそのように意気込み、本の1ページ目を開く。


そうして、あることに気づいた。


「(ん?これ、何語の文字?え?なんで喋りは日本語で通じるのに文字は日本語の文字じゃないの?え?え?ちょっ、やばいよ!?)」


クジラは本気で焦る。だが、ここで奇跡的なのか必然的なのか、救いの手が現れた。

常時起動をONにしたら、常に右下に見えるようになっていた情報能力のメニューに一つ、見慣れない項目が増えていた。



《情報能力メニュー》

・ステータス

・魔法、能力

・道具鑑定、書物解読

・--------------

・--------------

・設定



「(あっ、鑑定のところに新しい物が付いてる!ふぅー...、危なかったなぁ。情報能力が無ければお爺ちゃんの優しさを無駄にするところだった。まぁ、これでしっかりと読む事ができる!では、解読していこうかな!)」


そしてクジラは、情報能力に全力で感謝し、書物を1ページ1ページじっくりと眺め、読み進めて行った。




「なるほどなるほど....」



「....ふむふむ、へぇぇ」



「よし!終わった!」



情報能力を使用しながら、解読作業を数時間行い、ようやく本を読みおえたようだ。


「(うーん...内容を簡単にすると、どうやらタナベと名乗った若者が、村を魔物から救ってから、村人達がタナベの村と呼ぶ事にしたっていうことか...。

でも、この話、お爺ちゃんが生まれているかどうかわからないくらい昔の話っぽいからなぁ...。せめて、タナベさんについての情報がもっと書いてあれば良かったなぁ。とりあえず、一か八かお爺ちゃんに聞いてみるか)」


頭の中で情報を整理したクジラは、タナベについて村長に聞くことにした。


「お爺ちゃん、このタナベさんって人の特徴とかはこの本に載ってなかったけど、どんな感じの人だったとかわからないかな?」


「むぅん、すまないねぇ。それはワシにもわかっておらぬのじゃ。なにしろワシが赤子の頃の出来事じゃからのぉ...」


どうやら村長にも、この事はわからないようだった。


「あぁ、やっぱりそんなに昔事なんですね...。」


「ところでクジラくん。君はこの草原を渡ってこの村に来たのかね?」


「えぇ、そうですが...」


「それなら大丈夫であろう。ちょっと頼みたいことがあるんじゃが、聞いてくれないかね?」


「はい、本のお礼に是非手伝わせてください!

僕に出来ることなら何だってしますよ!」


クジラがそう言うと、村長は満足そうにカラカラと笑った。


「ふぉっふぉっふぉっ、そうかね。ありがとなぁクジラくん」


「いえいえ、お爺ちゃんのお願いならお安いご用ですよ」


「本当君はいい青年じゃわい。うちの若い者たちにも見習って欲しいものじゃ」


クジラは、それを聞いて口元が歪ませていた。どうやら、言われた言葉が相当嬉しかったようだ。


「それで、頼み事なんじゃが...、これを隣の村の村長に渡してきてくれんかのぉ?」


と、言って村長は酒瓶を4つ机に置いた。


「先日、隣の村にちょっとした借りを作ってしまったからのぉ...。隣の村へのお礼のようなもんじゃ。」


「わかりました。でも...隣の村って場所すらわからないんですが...、どのくらい距離がありますか?」


「ちょっとこの窓の外を見なされ」


村長が座っていた所の後ろにあった窓から、外を見る。


「丁度ここから見える村の出口から、真っ直ぐ進めば2〜3時間くらいの距離じゃ」


「意外に近いんですね。それなら、日が落ちる前までには報告に戻れそうです。」


「そうじゃな、あとおぬしは今日はワシの家に泊まって行くといいじゃろう。旅の者と聞いたが、それほど急ぎの旅とかをしているわけではないじゃろう?」


「いいんですか!?ありがとうございます。まぁ、急ぎの旅ではないですよ(そもそも旅って言えるのかなこれは)」


「そうかそうか。ならば今日の夕飯はミル君に腕を奮ってもらおうかのぉ」


村長がそう言うと赤髪のメイドの女性が、


わかりました。

楽しみにしていてください!


と言って部屋を出て行った。どうやら赤髪のメイドの女性はミルという名前らしい。


「それではお爺ちゃん、行ってきますね!」


クジラは酒瓶を全てリュックに入れて、村長宅を出た。


「気をつけて行ってくるんじゃぞぉ」


村長も外に出て見送ってくれているようだ。


「はい!それでは行ってきます!」


そうしてクジラは隣の村へと、歩みを進めた。




「フーンフフフフーン♪」


クジラは、鼻歌交じりにそよそよと緩い風の吹く草原を歩いている。


今のところ、魔物はゼリーのような生き物(ゼル君によるとプチというらしい)が、5匹くらい出てきたくらいで、オークのような凶暴な魔物は出てきていないようだ。オークのような魔物が見渡す限り見えないので遠足感覚で、ご機嫌で歩いているように見えた。

しかし、安息の時間の終わりは突然やってくる。


ぶるぁぁぁぁぁぁ...。


「へっ!?遠くからオークの声がしなかったか!?やばい!レーザーガンの準備をしなきゃ!!」


ポンッ!


クジラは急いでレーザーガンを具現化させた。具現化したリュックに、始めてオークと対峙した時に使ったレーザーガンがあったが、焦りでそれも忘れて具現化したのだ。


「ん?あれは...馬に乗っているのか...?」


遠くから見えてきたオークは、どうやら馬に乗ってこちらに来ているようだ。


「それと馬が引きずっている大きめな籠はなんだろう...ってあれは!?」


クジラは多少目が良く、馬の後ろに引きずられて付いていた物が何か見えたらしい。


「人がオークに捕まってるのか!?」


なんと、後ろの籠には人が入っているようだ。しかし、流石に遠すぎて性別などの細かいところは確認ができていない。


「た、助けなきゃ...」


クジラはやはりまだ戦闘には慣れていないようで、足を震わせながらレーザーガンを構えた。


『ブルガァァァァァァァァァァ!!』


オークは、腰に備え付けていたであろう錆びた剣を片手に持ち、振りかぶりながらこちらに向かってきている。


「うわっ、うわっ、うわぁぁぁ!!」


ピシュッピシュッピシュッピシュッ


クジラは慌ててレーザーガンの引き金を乱暴に連打した。


『ヒヒィィィィィィン!!』


どうやら慌てて撃った一発が、馬に当たったようだ。


『ブゴオオオオォォォ!!』


撃たれ、パニックに陥った馬が暴れて、オークは簡単に落馬する。クジラは落馬したオークを見ると、とても運のいいことに、オークにも一発当たっていた。


「今しかない!!せいっ!!」


ピシュッ


落馬と着弾の痛みで倒れていたオークの腕を狙い狙撃した。


『ブガッ!!?」


「うらぁぁぁああ!!」


ポンッ!


ズプッ


オークは持っていた錆びた剣を地面に落とし、腕を抑える。クジラはその瞬間にギラッと輝く鉄の剣を具現化し、全力で走り勢いに任せて心臓があろう部分に剣を刺した。


『フゴッ...?』


オークは訳がわからないというような声を発声し、そのまま動かなくなった。


「ハァ、ハァ、やったのかな...?」


ピローン


「ん?何の音だ?」


勝ちを確信した途端、情報能力であろう音がなり、視界の右下が点滅していたので、見てみる。



《おめでとう!》

《クジラはレベルが2になった!》

《スキルメニューが解放されました》



情報能力には、このように表示されていた。


「えぇい、そんなの後だ!まずは籠の中の人を助けなきゃ!!」


クジラはそんな事は後回しにして、急いで人が入っている籠に走り寄った。




[クジラ視点]




「君!大丈夫!?」


僕は、急いで籠に閉じ込められている人を助けに向う。籠の中の人は白髪の女の子のようだ。

うん、異世界の人の髪色には慣れたぞ。やっぱいろんな髪色があるなぁ...。それにこの子、可愛い!


「君?大丈夫かい?」


僕は唾をゴクリと飲んだ後、話しかける。意識がないようで返答もない。


「意識がないか...、ひとまず籠から出そう」


籠は竹のようなしなやかな木でできてて中々良い物かもしれない。

でも、そんなのどうでもいいや。早く助けなきゃ。


「とりあえず剣で切れるかな?さっきの剣で...。

いや、あれは使いたくないなぁ...」


血が溢れて剣が真っ赤になっているじゃないか。さすがにあんなのを見たら使う気にはなれないよ...。あれは捨てて新しいの出すか。


ポンッ!


血の滴る真っ赤な剣が出てきた。


「えぇ!?落ち着け...、落ち着くんだ僕...。

今のはさっき見た剣の事を少し考えちゃったからだ...。深呼吸しよう」


すぅー、はぁー。すぅー、はぁー。


うん、少し落ち着いたかな。もう一度剣を出してみよう。


ポンッ!


今度は、先ほどオークを殺したような鉄の剣が出てきた。


「よし!普通のが出てきた!ふぅ、よかった...。」


だってあんな血まみれ使いたくないじゃないか。


「さぁ、籠を切り壊そう」


僕は間違って女の子に剣が当たらないよう細心の注意を払って、籠を女の子が出られるくらいまで壊した。


「まだ起きそうもないなぁ...」


とりあえず僕は女の子を籠から引きずり出し、具現化魔法でマットを出して、その上に寝かせて、起きるまで待つ事にした。


「あっ、そうだ。レベル上がってスキルメニューっていうのが出てたよね。確認してみよう。」



《情報能力メニュー》

・ステータス

・魔法、能力

・道具鑑定、書物解読

・スキル

・--------------

・設定



「お、メニュー欄にスキルが増えてる。

あと一つはなんだろうな」


迷わずにスキルを選択する。



《情報能力メニュー》

《スキル》

・肉体(身体能力)1

・知恵(魔力)1

・敏捷(反射神経、速度限界)1

・運10


残り割り振りポイント2



「うわぁ見る限り低いな...。多分運以外は、この世界での最低値なんだろうなぁ」


それに2ポイント割りふれるのかぁ...。とりあえず魔法は知らないし、使ってる余裕も今はないから、肉体と敏捷に1ずつかな?うん、それでいこう!


ピコン!


安定の情報能力で何かを変更する時の音が鳴った。



《情報能力メニュー》

《スキル》

・肉体(身体能力)2

・知恵(魔力)1

・敏捷(反射神経、速度限界)2

・運10


残り割り振りポイント0



「よし、振れたね。

でも変わった実感があまりないかな...。」


まぁ、後で走ったりしてみるかな。


「というよりスキルって言ってるけど、強化できるのはステータスなんだね。まぁ能力が上がるんだし、いいか」


さて、女の子が起きるまで具現化でご飯でも出して食べますか!そう思いつくと、僕は行動が早かった。




「あぁ〜美味しいなぁ...」


僕は、すぐにある物を具現化し、食べ始めていた。思い立って、食べ始めるまでに要した時間は、3分ほどだ。何を食べてるかって?

炊きたてのお米と、ちょっとお高めな味付け海苔とごま塩のふりかけだ。いやぁー、よく安っぽいとか言われるんだけど、やっぱりこれは最高に美味しいんだなぁ...。

それに、具現化能力で温かい食べ物が出るのは本当嬉しいなぁ...。


「....はっ?...んっ、んむぅ...?」


僕が、シミジミとそんなことを考えていると、具現化したマットの上で眠っていた女の子が目を覚ましたみたいだ。


「あ、起きたみたいだね。大丈夫かい?

とりあえずこれでも飲みなよ」


ポンッ!


僕は、食事と共に具現化させていた麦茶を、今具現化したコップに注いで、渡してあげる。


「あ、ありがとうございます...」


女の子は少し戸惑いながらもコップを受け取り、麦茶を飲み始めた。それにしても白髪赤目かぁ。

アルビノっていうのかな?寝てる時から思ってたけど、凄い可愛いなぁこの子...。


「な、なにか?」


女の子は、僕の目線に困惑した様子で声を出す。おぉっと、ジーっと見つめすぎたようだ。気をつけなきゃな。


「い、いや、その飲み物お口に合うかなって思ってね」


僕は何を言ってるんだ!?この世界に麦茶が普通に合ったら即ちょっとおかしい人認定じゃないか!?

僕は内心ドキドキしながら返答を待った。


「うん、初めて飲む味だけどなんか、落ち着く感じがする味ですね」


ホッ、よかった。麦茶はこの世界では無いようだ。

あるいはほとんど流通してないのかな...?


「あっ、うん。口にあってよかったよ。あ、そっ、そうだ!お腹空いてないかな?」


「お腹?あぁ、だいじょう...」


くぅぅぅ〜


可愛らしい音が鳴った。


「////」


恥ずかしいようで赤くした顔を逸らした。くっ、笑っちゃダメだ僕!


「あ、そ、それじゃあご飯用意するからちょっと待ってね」


僕は食事の時に具現化していたおかわり用の炊飯ジャーから、一応具現化しておいたもう一つの茶碗にご飯をよそって渡した。


「はい、どうぞ。

あ、おかずはこののりとごま塩で勘弁してね?」


「え?のり...ごま...しお?あと、この白いものはなんですか?」


「えっ?」


「えっ?」


僕と女の子は顔を見合わせる。なるほど、この世界は日本食とかは殆んど無いのか...。これは僕が彼女を日本食大好きっ子に導くしか無い!僕は謎の決意をして説明を始める。


「あ、ごめんね。これは僕が暮らしてた所で主食の食べ物なんだ。この白いのがお米って言って、とりあえず一口食べてごらん?」


ポンッ!


僕はこの世界にはお箸の文化があるかわからなかったから、スプーンを彼女に手渡した。


「えっ、い、今のは魔法ですか?」


「うん。具現化魔法だよ?」


「えぇ〜!?」


女の子はとても驚いている。

え、この魔法ってそんな凄いの!?


「ぐ、具現化魔法って相当古い伝記にしか載っていないような、本当に実在していたのか不明な魔法じゃないですか!?」


えっ!?マジで!?ちょっ!?いきなりそんなこと言わないで!!


「...、」


僕は自分の魔法の凄さを知って、喋る事が出来なかった。


「あ、あなたはいったい...?」


「あ、あぁ、いやぁ、あのね?」


やばい!どうする!考えろクジラァ!!


「と、とりあえずご飯食べよ?ね?」


僕は一旦話題をそらすことにした。




[クジラ視点終わり]




くぅぅぅぅ


女の子のお腹から再度、可愛らしい音が鳴り響く。


「うぅ///わかりました、ご飯しましょう!」


女の子の顔は耳まで真っ赤になっていた。


「それで、これはお米っていって、さっき言った通り、僕の暮らしてた所での主食となる食べ物なんだ」


「そうなんですか。薄いですがほんのりといい匂いがしますね」


「うん!そうでしょ!さぁ、早く食べてみなよ!(炊きたての新米を想像して具現化したから、誰が食べたとしても、最高に決まってるはず!)」


クジラは自信満々で食べるように勧める。


「はぐっ、もきゅもきゅ」


女の子はスプーンに控えめにすくい、ゆっくりと口に運び咀嚼を始めた。


「っ!?」


女の子は一瞬驚いたような顔をして、可愛らしい顔を思いっきり歪ませ、がっつくように食べ始めた。

どうやらお米が口にあったようだ。


「(それにしても、この子は美味しそうに食べるなぁ...。僕ももう一杯食べるかな)」


女の子の美味しそうに、そしていい食べっぷりをみてクジラももう一杯食べる事にしていた。


「どう、美味しいかい?(あっ、そだ。そういえばこの子の名前聞いてなかったな)」


「はい!とっても美味しいです!

...えぇっと。すいません、お名前はなんて言うんですか?」


「(うおっ、先に聞かれた。)

あ、あぁ、うん。名乗ってなかったね。僕の名前はクジラ。そういう君のお名前はなんて言うんだい?」


「クジラさんですね。私の名前はリーシャ。リーシャ・トトリと言います。どうぞよろしくお願いします」


「うん。よろしく、リーシャさん」


「さん付けなんてとんでもない!

私の事はリーシャって呼び捨てで呼んでください!」


「そぉ?うん、なら僕の事もさん付けじゃなくて呼び捨てで呼んでくれないかい?」


「いやいや!古の魔法を使う大魔導師を呼び捨てになんてできませんよ!」


「(そうか、僕の事を上位な魔法使いか何かだと思っているのか...。)いやいやいや!僕はそんな偉大な人でもないし、ただの旅人だよ!!あと僕は敬称で呼ばれるのそこまで好きじゃないんだ!だから、えぇっと、そうだ!呼び捨てが僕に対しての最敬称だと思って呼んでよ!それならいいでしょう!?」


「そ、そこまで言われると...、わかりましたよ。クジラ」


「(よしっ!さん付け回避成功!実際にさん付けとかされるの、あんま好きじゃないんだよなぁ...)」


そんな事を思いつつ、クジラは右手を差し出した。


「まぁ、改めてよろしくねリーシャ!」


「はい!よろしくお願いします!」


クジラとリーシャは笑顔で握手した。


「あっ、ご飯が冷めちゃうから食べながら話そうか」


「そ、そうですね」


クジラは、今はリーシャよりもご飯を優先した。リーシャは、そんな彼を見て、不思議な方だなぁと感じていたらしい。


「それとお米だけでも美味しいけど、これに巻いて食べたり、これをふりかけたりすれば、もっと美味しいから試して見て?」


クジラはそういって、のりとごましおをリーシャの近くへ置いた。


「これは?

えぇっと、さっきチラリと言ってたのりとごま...しお?ですか?」


「うん、これがこっちの黒くて薄っぺらいのがのりで、この入れ物に入った白黒の結晶がごましお。お米と一緒に食べてごらん?」


「はい。えぇっと、まずはのりから...」


クジラはのりを少しちぎってご飯の上に乗せて食べる派だ。リーシャはそれを見様見真似で行い、スプーンですくい食べた。


パリッパリッ


のりの軽い感じの音がほぼ無音の草原に響く。


「美味しい!!こののりという食べ物とても美味しいです!!それじゃあこっちのごましおの方もいただきますね!!」


「振りかけすぎるとしょっぱいから気をつけてね?」


シャカシャカ


軽快なごましおをふりかける音がする。そして勢いよくごましおをかけたご飯を頬張るリーシャ。


「これも美味しい!このしょっぱさが食欲を注ぎますね!」


「うんうん、口にあってなによりだよ」


クジラはお米達の褒め言葉を聞き、満面の笑みのようだ。それほど日本食への愛があるのだろう。


「ん?リーシャ、もうお米少ないけど、おかわりいるかい?いくらでもあるよ?」


そうクジラが言うと、リーシャの目が一瞬光ったように見える。


「い、いいんですか!!??是非お願いしますクジラさん!!」


リーシャは喜んでその甘い提案に飛びついた。


お食事会はまだ続く。








14話以降の修正版は、コツコツと作っていきます。







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