閑話【もしもリーシャに出会わなかったら】後編
閑話IF編ラストです。
本日2回目の投稿になります!!
それではどうぞ!!
「悪霊を倒して欲しいのよ」
「(え、ヤヨイさんも悪霊的な奴では...)」
「ふん、目線的にわたしも悪霊的な物だと考えてるわね?」
「えぇっ!?なんでわかったの!?」
ヤヨイの言葉に内心でツッコミを入れたクジラは、それを見透かされて驚く。
「幽霊舐めない方がいいわ。人と関わりを持てず、見ることしかできないのだから、観察眼だけはかなり鋭くなってるわよ?」
それに対し、ヤヨイは腰に手を当ててしたり顔だ。
「幽霊すげぇ...、それでヤヨイさん、悪霊っていうのは...?」
クジラは、ヤヨイの幽霊自慢に感嘆の声をあげながら悪霊について尋ねる。
「それなのだけれど、この家の地下に悪霊がたくさん住み着いているのよ。1階2階はわたしの力で登ってこれないように頑張ってるわ。でも、そろそろ力負けしそうなのよね...。だから、それをぶっ殺して住みやすい普通の家にしましょう?」
「なるほど、だから1階は何も不思議な事が起きなかったのか...。って、僕は本当にこの家に住まなきゃいけないの?」
「当たり前でしょ?もしも住まないっていうなら、あんたを1人にさせない為に、取り憑くわよ?心が磨耗してる人に取り憑くのは簡単って事を覚えときなさい?」
「うわ、それは勘弁して欲しいな...。まぁ、取り憑かれるくらいなら、自室で多少のプライベート空間がある方がマシなのかな...?」
「ふふん、わたしとの同棲に少しは前向きになってきたようね?安心しなさい、お姉さんが優しく面倒見てあげるからね?」
ヤヨイはクジラを見ながらウィンクをして、上品に笑う。
「あぁ、うん...」
そんなヤヨイに、クジラはかなり見惚れながら頷いた。
「じゃあ、早速倒しに行きましょうか!」
「ヤヨイさん、悪霊って普通に攻撃できるの!?」
「あんた見えてるでしょう?認識できるって事は干渉もできるわよ。ほら、わたしもあんたに触れてるわよね?」
ヤヨイはクジラの肩を軽く触れた後、付いて来なさいといって部屋を出る。
「(...ヤバい、幽霊に惚れそう)」
ヤヨイの後ろ姿を見て、クジラは顔が赤くなるのを我慢しながら、そのような事を心で思っていた。
その様子を、ヤヨイが振り向いて確認しなかったのが幸いだろう。
「地下はこの下よ?」
「トイレの隣...」
ヤヨイに案内された地下入り口は、トイレの隣にあったちょっとした物置のような扉の中だった。彼女が何の躊躇も無く扉を開くと、薄暗い2畳くらいの空間に、下へ降りる階段が確認でき、本当にここが地下入り口という確証を得られた。
「私は後ろで懐中電灯を照らしながら手頃な物を霊力で飛ばして援護するから、あんたはこれで応戦しなさいよ」
ヤヨイはどこから持ってきたのか、明らかに安物で手入れも十分ではない剣を手渡す。
「あ、僕は大丈夫。僕には物を具現化する魔法があるからね」
ありがたいが、ヤヨイの剣は使わないと告げ、霊体に効果抜群の付加をつけた、ぎらりと光る銀の剣を具現化した。
「へぇ、そんな魔法初めて見たわ」
「これって、そんなに珍しい魔法なのかな?とりあえず僕は準備出来たから、早速倒しに行く?」
「えぇ、行きましょうか!わたし達のマイホーム制圧作戦に!」
「あははは、そうだね(あれ、自然に笑ったのっていつぶりだったかな...?)」
ヤヨイの言葉に、笑みを浮かべながら答えたクジラは、何日ぶりに笑ったのだろうと思いながら、地下への階段を降りる。
『あぁぁぁぁぁぁ!!!!』
地下へ降り立った瞬間、奥の方から奇声が聞こえた。
「っ!くるわよあんた!」
「わ、わかった!」
ヤヨイが霊力で浮かす懐中電灯が、悪霊を照らす。その悪霊は、人間を物理的な意味で軽く溶かしたような見た目で、下半身がなく、浮いていた。
「食らえ!」
全身全霊を込め、銀の剣を縦に振るう。すると、悪霊はスパッと真っ二つになり、音もなく消える。
「やった!いけるわよあんた!その調子で倒してっ!」
ヤヨイは懐中電灯で別の悪霊を探しながらヤレヤレと檄を飛ばす。
「よし!お前も成仏しろ!!」
クジラはそれに応じず、満身創痍で剣を振るっていった。
それが約10分間続いた。
「はぁ、はぁ、ヤヨイさん。これで終わり?」
「えぇ、多分終わりよ...。はぁ、疲れたわね。お疲れ様!」
「はぁ、終わったのか...、お疲れ様」
クジラは剣を床に置き、自分もドサッと横になった。
その時...、
「危ないっ!!!!」
ヤヨイがクジラの前に背を向けてたちはだかる。
ザクゥ!
まだ1匹狩り残しがいたらしく、ヤヨイの顔を全力で引っ掻いた。
「なにっ!?このやろうっ!!!!
ヤヨイさん大丈夫!?」
クジラは即座に立ち上がり、剣を振るって消滅させる。そして、顔を抑えるヤヨイに慌てて声をかける。
「痛っ...、敵がいないと勘違いして油断しきったわたしのミスよ...。あんたは何も怪我してないわよね?」
「そんな事よりヤヨイさんの顔がっ!」
クジラが騒ぎ立てるように、ヤヨイの顔には凄い傷が付いていた。
「ふふっ...、大丈夫よ多分。でも、この傷じゃあ、かなり目立つ跡が残りそうね。はぁ、いつかまた外の世界を見たいって夢ももう叶わないかしら?男の人と交際したり、普通の女の子みたいな事もしたかったのになぁ...」
ヤヨイは強がって笑ってはいるが、とても悔しそうな声で自分の夢をつぶやく。
「...っ!!ヤヨイさんの夢は全部僕が叶える!僕で良ければ交際もするし、ヤヨイさんの体を実体化させて顔の傷も直す為に最善を尽くす!!...それじゃあ、ダメかな?」
そんな悲しそうなヤヨイを見て、クジラは心が疼いたのか、そのように叫んだ。
「えっ?あんたは...、こんなわたしと一緒にいるっていうの?さっきまでかなり渋っていたのに...」
ヤヨイはそんなクジラを見て、驚いたような顔をしながら聞き直す。
「あぁそうだ!気が変わった!僕はヤヨイさんと一緒にいたい!!」
クジラは、ヤヨイの両肩にそれぞれ手を置きながら告げた。彼からは、先ほどまで精神的に病んでいた様子など、微塵も感じられなかった。
「1人きりがいいとかもう2度と言わないわよね?」
「もう言わないから!ヤヨイさんとずっと一緒にいるから!」
「ふふふっ、ありがとう。あんた...、そういえば名前なんていうのかしら?」
「えっ?僕の名前はクジラだよ?(あれ?1番初めに言ったつもりだったけどなぁ...)」
「今、1度名乗ったのにとか考えなかった?わたしは興味が無い異性の名前は覚えないのよ。つまり、あんたに興味が湧いたってことよクジラ」
「あはは、それは嬉しいな。って事は、これから一緒にいてもいいんだね?」
「ええ、これからよろしく頼むわねクジラ!」
ヤヨイは、傷ひとつない綺麗な顔を赤く染め上げてクジラに抱きついた。
「ヤヨイさん!?顔が治ってるよ!?」
「ふふっ、わたしは幽霊だからこのくらい修復可能に決まってるじゃないの!でも、さっき言った事は守ってもらうわよ?」
「くっ、僕は騙されていたのか...」
こうして、クジラはヤヨイと2人で仲良く暮らしていくことになったのであった。
IF編のヤヨイとのラブラブイチャイチャルートはこれでおしまいです。
次にIF編をやるとしたら、もしも異世界行く前にクジラとヨシノが恋人だったら的な感じですかね...?
まぁ、本当にこうなるかはわからないですけど。
とりあえず次話は、本編の閑話に戻り、クジラと精霊の話かな?
それではまた次回お会いしましょう!




