未来
「えへへっ、星がとっても綺麗だねぇ~」
「うん、凄い綺麗だ。やっぱり空中都市リーンの景色は凄いね」
2人は空中都市リーンにて、ピッタリと寄り添いながら散歩を楽しんでいた。素敵な夜景の中、互いの目線が会う度に2人は幸せそうに笑う。
「夜景も良いけど、君の方が綺麗だよとか、そういう言葉を掛けてくれても良いんだよ?プロポーズを前の雰囲気作りも大事なんだから!ちょっぴり減点ね!」
「あはは……、厳しいなあ。というか、今からプロポーズする相手に指導を受けるって、なんか凄い変な感じだね」
散歩が始まり5分ほど経過すると、リーシャはニコニコと笑いながら、プロポーズ前の雰囲気作りを怠ったクジラに減点だと指摘をする。彼は唐突な指摘に思わず笑ってしまいながら、プロポーズ前にプロポーズする相手から指導を受けるなんて変だなと口にしていた。
「えへへ、2回目だし、私が今からプロポーズ再現しようねって言ったんだから良いの!ほら、もっと私をドキドキさせて?このままじゃプロポーズでお断りされちゃうよ?」
「再現なのにお断りされる可能性もあるの!?そりゃあ本気で取り組まなくちゃいけないね……」
「そんな事を言ってる間に、もうあの場所が見えてきちゃったよ?もう口出しはしないから、素敵なプロポーズで私を攻略してよね?」
リーシャの発言に驚き、まさかのプロポーズ失敗という事態にならないように本気で取り組もうと決意するクジラ。だが、その決意は少し遅かったようである。リーシャが指を差す先に、クジラがリーシャにプロポーズをした思い出の場所が見えたからだ。リーシャはもう指導紛いな事はしないから、自分の力で私を攻略してねと彼に伝えると、笑顔のまま黙りこむ。
「……う~ん、多少お粗末なプロポーズでもなんやかんやでオーケー貰えると思ってたんだけど、そうでもないみたいだなぁ」
「もうそういう言葉を言っちゃダメだよ。プロポーズに専念しなくちゃ本気で断るよ?」
「ご、ごめんね?……それじゃあ、あそこに行こうか」
クジラが苦笑混じりに独り言を呟くと、リーシャはムスッとした顔で警告を入れる。彼はすぐさま謝り、2、3度深呼吸をした後、プロポーズをしたあの場所に向かおうと口にしてゆっくりと歩き出した。リーシャもクジラが真剣な様子になったのを見て、笑顔に戻る。
「ここの景色を見るのも久し振りだね。1年と半年前かな?確か本気で喧嘩をした後、仲直りと同時にプロポーズをしたんだったかな?あの時は僕、とにかく必死だったって事をよく覚えているよ」
「えへへへ、私はクジラからプロポーズをされるまで、喧嘩とか色々しちゃった事にずっと後悔してたっけなぁ。でも、クジラがプロポーズをしてくれたおかげで、全部救われたんだよ」
2人は1度目のプロポーズの時に座ったベンチに腰掛け、素敵な夜景を眺めながら1度目の時の事を懐かしいなと思いながら語り合う。
「あの時、僕はリーシャにプロポーズをして本当に良かった。心からそう言えるよ」
「私もだよ。私もクジラのプロポーズを受けて本当に良かったよ。クジラ以外のお嫁さんになったとしたら、こんなに毎日が楽しくて充実するなんて事、まずなかったと思うなぁ」
自分達が婚約者となったプロポーズの事を口にし合うと、幸せそうに笑う2人。
「僕も、こんなに充実した毎日を過ごせているのは、リーシャが僕の嫁になってくれたからだと思ってるよ。……たまに喧嘩をする事もあるけど、絶対に悲しい思いはさせない。だからさ、これからもずっと一緒にいて貰えないかな?」
クジラは少し間を空けて心を落ち着かせると、ポケットから先程返却された指輪を取り出して彼女に差し出す。
「えへへ、断れる訳が無いじゃん!私は我が儘で甘ったれでクジラに迷惑を沢山掛けるよ?本当に私で良いんだよね?」
「もちろんだとも。さ、左手を出して?」
クジラの言葉に従い、左手をクジラに差し出すリーシャ。その顔は幸せそうな笑顔だ。
「絶対に手放さないからね?」
「私こそ、絶対に離れないもん」
リーシャの左手薬指に指輪が戻ると、互いに互いを離さないと誓い合い、どちらからともなくゆっくりと口付けをする2人。
「……ねえリーシャ、プロポーズ再現は終わったけどさ、もう少しだけこうして夜景を楽しまないかな?」
「うん、私もそうしたいな。こうしてクジラにくっ付いて、夜景を見ていたいな。……あ!流れ星!」
「ほんとだ!僕、初めて流れ星を目撃したよ。プロポーズ直後に流れ星を目撃するなんて、幸先が良いね」
5秒ほどの口付けが終わると、ベンチに腰掛けた状態でピタリとくっ付き、夜景を楽しむ2人。流れ星を目撃し、2人して子供のようにはしゃいでいる。
「……そういえばリーシャ」
「ん?なあにクジラ」
「結婚式が終わって2人きりになったら、隠していた秘密を教えてあげるって言ってたじゃん?今、教えてくれないかな?」
「……あ、そういえば忘れてたね!素敵な夜景の下だし、教えるにはちょうど良いかも!伝える前に1つだけ忠告しておくけど、私は何も細工をしてないからね?」
「細工?なんのことだろ。どんな隠し事なの?」
「それはね?ーーーーーーー!」
絶景の中、女性の発言により、男性は街に大声を響かせる事となる。2人の物語はここでおしまい。きっと2人には眩い光に包まれた輝かしい未来が待ち受けている事だろう。
次話はあとがきです。




